不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第四章 波乱の学園生活

61 王妃 3年生

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学園生活もあっという間にたってしまった。
僕は、3年生になった。
少しは身長も伸びたし、筋肉もついたと思う。
思うのだけど、まわりがそれ以上に育ってるんだから華奢にみられるのはしかたないよね。

泣きそうだよ。

現在は13歳で、今年14になる。
あと2年。
今日もみんなで登校…いや登園だ。
気を引き締めねばと思う。
それと同時に、不安もある。
少し目標を見失いつつある。

そう目標。
だって、そうだ。

薬を回避しようと研究していたけど、僕に薬を飲ませたトリスティとは和解。
ついでに、トリスティは、今はマールに夢中だ。
未だに良いお兄さんから脱せてないけども。
薬の研究を続ける意味を考えてしまう。
…万が一のエスターの毒薬の方の解毒剤の研究してるけど、少し意欲が下がったのは確かだ。

身体を鍛えていたのだってロイスに人違いで襲われた時のことを考えて。
逃げるために、足を鍛えようと、抵抗しようとそう考えていたから。
もちろん、それ以外だって理由はあるけど、自分の中での最大の理由だったこと。
それもロイスが僕の護衛騎士をしてくれているし、リオンの予言によって避けられる可能性大だ。

自分ができることを。
そう思って突っ走ってきたこと。
でも、走っている最中にゴールがなくなった。
そんな感覚がしている。
次のことを、やることはいっぱいあるんだ。
そう思って張り切ろうとするけれど。

肩透かしのように頑張ろうしたことのゴールがなくなっていく。
次は何を頑張ろうかと思って、立ち止まっている状態なのだ。

あと2年しかないのに。

ふるふると頭を振る。
勢いをつけすぎてくらりをした僕をたくましい腕が支えた。

「何をやっているんだ?ラスティ…。」

ジークハルトが当たり前のように支えてくれている。

「ちょっと、いろいろ考えてたら頭を振りたくなったんだ。」

なんだそれはと苦笑しつつジークハルトは大丈夫だなと念を押してから僕を放してくれた。

「ありがと。ジークハルト。」

穏やかに笑い返してくれるジークハルトに照れ笑いを返す。

そうだ…立ち止まっても仕方ない。

僕は、周りを見た。
感じている不安は消えないが。

味方になってくれるだろう皆が今日も一緒に登校している。
もちろん、お城にいるだろう陛下も、バルハルト公だって、ジェン公も頼りになる人たちだ。
今までの生ではなかった。

事情は話してないから、一歩的な僕の思い込みだけども。
一人でないという心強さがある。

助けて、と言ったらきっと助けてくれる。
それだけで、僕は頑張れる。
その分、僕も返せるくらい強くならないととも思うけど。

「まったく…どうした…何を考えていた?俺では力になれないか?」

ジークハルトの言葉に、首を横に振る。

「うーん、頭がぐちゃぐちゃでまとまらないだけだよ。でも…助けてほしいときは呼ぶから飛んできてね。」

ジークハルトは、当たり前だと僕の頭をくしゃくしゃと撫でまわした。
せっかく朝、マールが整えてくれたのにと口をとがらせる。

「もぅ~マールぅ~」

マールが笑いながら、ささっと整え直してくれる。
もちろん自分でもできるけど、ノルンとマールのお仕事を奪わないために、マールに頼む。
二人に言われていることだ。
傍に要るときは、二人に頼ってほしいと。
僕は存分にその言葉に甘えている。

何が不安なのか…自分でもわからない。

順調に、僕の死の原因は消していけているとは思う。
けれどだ…漠然とした不安がどうしても、ついてまわっている。
何か、間違っている。
根本的に何かが違うのだ。
何か、間違えている。
そんな不安。

気のせいかもしれない。
気のせいだと良い。

間違っているという意識が僕を苛むのだ。
そうだろうとは思う。
繰り返しているルートをぶち壊しているのだから。
そういう意味では、僕はこの世界のルールを壊れている。
間違ったルートを作ろうとしているのだから。

聖者がこの世界を救わねばならない。
そのルールを、そもそもの聖者が世界を救わないとならない理由を壊している。

「ラスティ…体調が悪いなら無理しなくていいんだぞ?」

考え込んでしまっていた僕はその声で、顔を上げる。
ジークハルトにまた心配をかけてしまったようだ。

「ううん、大丈夫だよ。ありがとう。ちょっと、不安なのかな…。」

不安。
僕が生きていたらこの世界はどうなるのか。
バットエンドは神の炎という名の隕石落下でこの世界は燃やし尽くされる。

「不安?」

うんと頷きながらジークハルトを見つめる。
彼も変わった。
色々と。
大事な大事に僕の兄貴分。
今のジークハルトは、僕にとって大切な友人で兄のような人だ。

「僕が、ここにいていいのかなって。」

いていいに決まっているだろう?とジークハルトは怪訝そうな表情を浮かべている。

突然そんなこと言われて困るよねぇ。

僕がいる所為で周りのみんなが不幸になってしまったらとも思ってしまう。
リオンの試練が条件だというならば、その条件の発動条件の僕が生き続けるのは結局バットエンドなのだろうか。
そのリオンもこの生では神力がない。
リオン誘拐事件からは、特に何事も無い学園生活。
リオンは相変わらずだ。
僕に激突してくる。
今ではそれにも慣れてしまった。

警戒していた僕が馬鹿みたいに。
彼は僕を慕ってくれる、
苦手には変わらないけれど。
関わってしまったから仕方がない。

彼も…幸せに生きてほしいと思う。

何事も無く…みんなが幸せになってほしい。
そんな都合のいいこと出来ないだろうけど。
何とか道を探したい。


「うん…だいじょーぶだよ。」


僕は、どうしてもぬぐえない不安を抱えたまま、ジークハルトに笑いかけた。


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