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第三章 学園生活の始まり
59 救出
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二人が目を丸くする。
焦げ臭いにおいと共に怒鳴り声が聞こえた。
聞きなれた声だった。
「ばか!!落ち着けって!!!」
二度三度地面が揺れる。
ものすごい魔力の持ち主がいるらしい。
濃厚な魔力があたりに満ちた。
ロイスが目を丸くする。
「騎士団長!!!」
ロイスの悲鳴のような声に僕は頷いた。
そう、怒鳴った声はバルハルト公の声だ。
「うるさいぞ…バル…」
低い怒気をはらんだ声が静かに響いた。
マールとロイスが、ひゅっと同時に息をのんだ。
「へ…陛下???」
マールの言葉に僕は頷く。
騎士団くらい送ってくれるかなとは思っていた。
流石の陛下も自分で突っ込んでくることはないだろうと。
が…陛下が来ているらしい。
ばたばたと音がして男が、二人走りこんできた。
牢の前に立ったガチャガチャと音を立てて扉の鍵を開けようとしている。
もう一人はリオンのほうに行ったのだろう。
僕らを開放して、命乞いをするつもりか人質にするつもりか。
おそらくは、後者かなと思う。
ロイスが、僕らの前に立ち男が入ってきたら取り押さえるとマールに囁いた。
マールは頷くと自分たちを縛っていた縄を手に持った。
ロイスが取り押さえた男を縛るつもりなのだろう。
だが、その前に男が吹き飛んだ。
鈍い何かが壁にでも叩きつけられる音がする。
リオンの牢の方から野太い悲鳴と甲高い悲鳴があたりに響く。
キンと金属音が小さく聞こえた。
目深にフードを羽織った男が、牢の前に立つと中を覗く。
紫色の瞳が、フードの中から僕らを見た。
怒りに燃えている瞳にマールが、悲鳴をあげて僕に抱き着いてくる。
ロイスが、ガタガタ震えながらも僕らの盾になるために前に出ていた。
濃厚な魔力がフードの男から放たれている。
ロイスほどの騎士でも体が震えるのが止められないらしい。
でも、僕は、ほっと息を吐いた。
「陛下…」
ふっと紫色の瞳はやわらかく緩む。
「もう少し我慢してね?」
陛下の声に僕は頷く。
マールが、震えながら頷いた。
先ほどのショックで声も出ないらしい。
ロイスは、固まったままだ。
陛下は、顔をリオンの牢の方に向けた。
男のひぃという悲鳴が響く。
「来るなぁ!!こいつがどうなってもいいのか!!!」
リオンが、人質になっているようだ。
陛下は、動かない。
地上ではバルハルト公と数人の男の声。
ジークハルトの声もしている…気がする。
ロイスが、おそらく立ち直ったのだろう、牢の入り口から陛下の方を見ている。
「ん~正直、どうなってもいいけど…助けないとラスティに嫌われそうだからなぁ…。」
のんびりとした陛下の声が終わるか終わらないかのタイミングだっただろう。
ものすごい音がして、ガラガラと何かが崩れる音がした。
リオンの悲鳴と男の悲鳴がして、何かが倒れる音がした。
「…ジーク…無茶をしない。地下が崩れたらどうするのさ?」
どうやら、床をぶち抜いてジークハルトが男を上から奇襲したらしい。
僕には見えないので音だけでの判断だけども。
「陛下が強化と、聖者を魔法で守るだろうと思いましたから…まぁ…聖者も一緒につぶれても…俺はかまいませんが…。ラスティはどこですか?無事ですよね。」
陛下が過激だなぁと言いながら、牢の扉の前に立つ。
「ロイスくんだね。少し離れてくれるかい?」
はいと頷きロイスが扉から離れて、僕らの前にかばうように立った。
陛下は、良い子だと微笑んでから剣をたぶん抜いたのだと思う。
はっきり言って何をしたのかわからないくらいの早業だったから。
僕が見えたのはふわっとマントが揺れたくらいだ。
がらんと音を立てて牢の入り口が、細切れになって床に落ちている。
「ラスティ、ふふ…その色も可愛いな。おいで。」
僕は、陛下の広げた腕の中に飛び込んだ。
陛下の魔力が僕を包む。
視界の隅に入った僕の髪が金髪に戻っていた。
「怖くなかったかい?」
陛下は、自分の体でリオン達の状況を僕に見せないようにしているようだ。
ギャン泣きしているリオンの声は聞こえる。
気にはなるが見えない。
「大丈夫かい?ラスティ。」
ジークハルトが僕を覗き込んで無事を確認してから、微笑んだ。
「はい。マールとロイスが守ってくれました。」
そうかと陛下が微笑む。
ジークハルトは、ロイスが守ってくれたということが気に入らなかったのかロイスの名が出た時に口を尖らせた。
だが、ロイスを見てから、己を落ち着かせようとするかのようにふぅと息をついた。
「攫われる前になんとかできなかったのか?」
でも、出た言葉は嫌味だった。
ロイスは、すまんとジークハルトに謝る。
陛下が、僕をなでながらジークハルトに苦笑した。
「まぁ、それが理想だが、聖者が人質になったのだ。騎士ロイスは最善の方法をとった。ジーク?君としては不満はあるだろうがラスティやマールが無事だった。賊も壊滅できた。それでいいだろう?」
陛下はそう言いながらも、リオン方に鋭い視線を送っていた。
焦げ臭いにおいと共に怒鳴り声が聞こえた。
聞きなれた声だった。
「ばか!!落ち着けって!!!」
二度三度地面が揺れる。
ものすごい魔力の持ち主がいるらしい。
濃厚な魔力があたりに満ちた。
ロイスが目を丸くする。
「騎士団長!!!」
ロイスの悲鳴のような声に僕は頷いた。
そう、怒鳴った声はバルハルト公の声だ。
「うるさいぞ…バル…」
低い怒気をはらんだ声が静かに響いた。
マールとロイスが、ひゅっと同時に息をのんだ。
「へ…陛下???」
マールの言葉に僕は頷く。
騎士団くらい送ってくれるかなとは思っていた。
流石の陛下も自分で突っ込んでくることはないだろうと。
が…陛下が来ているらしい。
ばたばたと音がして男が、二人走りこんできた。
牢の前に立ったガチャガチャと音を立てて扉の鍵を開けようとしている。
もう一人はリオンのほうに行ったのだろう。
僕らを開放して、命乞いをするつもりか人質にするつもりか。
おそらくは、後者かなと思う。
ロイスが、僕らの前に立ち男が入ってきたら取り押さえるとマールに囁いた。
マールは頷くと自分たちを縛っていた縄を手に持った。
ロイスが取り押さえた男を縛るつもりなのだろう。
だが、その前に男が吹き飛んだ。
鈍い何かが壁にでも叩きつけられる音がする。
リオンの牢の方から野太い悲鳴と甲高い悲鳴があたりに響く。
キンと金属音が小さく聞こえた。
目深にフードを羽織った男が、牢の前に立つと中を覗く。
紫色の瞳が、フードの中から僕らを見た。
怒りに燃えている瞳にマールが、悲鳴をあげて僕に抱き着いてくる。
ロイスが、ガタガタ震えながらも僕らの盾になるために前に出ていた。
濃厚な魔力がフードの男から放たれている。
ロイスほどの騎士でも体が震えるのが止められないらしい。
でも、僕は、ほっと息を吐いた。
「陛下…」
ふっと紫色の瞳はやわらかく緩む。
「もう少し我慢してね?」
陛下の声に僕は頷く。
マールが、震えながら頷いた。
先ほどのショックで声も出ないらしい。
ロイスは、固まったままだ。
陛下は、顔をリオンの牢の方に向けた。
男のひぃという悲鳴が響く。
「来るなぁ!!こいつがどうなってもいいのか!!!」
リオンが、人質になっているようだ。
陛下は、動かない。
地上ではバルハルト公と数人の男の声。
ジークハルトの声もしている…気がする。
ロイスが、おそらく立ち直ったのだろう、牢の入り口から陛下の方を見ている。
「ん~正直、どうなってもいいけど…助けないとラスティに嫌われそうだからなぁ…。」
のんびりとした陛下の声が終わるか終わらないかのタイミングだっただろう。
ものすごい音がして、ガラガラと何かが崩れる音がした。
リオンの悲鳴と男の悲鳴がして、何かが倒れる音がした。
「…ジーク…無茶をしない。地下が崩れたらどうするのさ?」
どうやら、床をぶち抜いてジークハルトが男を上から奇襲したらしい。
僕には見えないので音だけでの判断だけども。
「陛下が強化と、聖者を魔法で守るだろうと思いましたから…まぁ…聖者も一緒につぶれても…俺はかまいませんが…。ラスティはどこですか?無事ですよね。」
陛下が過激だなぁと言いながら、牢の扉の前に立つ。
「ロイスくんだね。少し離れてくれるかい?」
はいと頷きロイスが扉から離れて、僕らの前にかばうように立った。
陛下は、良い子だと微笑んでから剣をたぶん抜いたのだと思う。
はっきり言って何をしたのかわからないくらいの早業だったから。
僕が見えたのはふわっとマントが揺れたくらいだ。
がらんと音を立てて牢の入り口が、細切れになって床に落ちている。
「ラスティ、ふふ…その色も可愛いな。おいで。」
僕は、陛下の広げた腕の中に飛び込んだ。
陛下の魔力が僕を包む。
視界の隅に入った僕の髪が金髪に戻っていた。
「怖くなかったかい?」
陛下は、自分の体でリオン達の状況を僕に見せないようにしているようだ。
ギャン泣きしているリオンの声は聞こえる。
気にはなるが見えない。
「大丈夫かい?ラスティ。」
ジークハルトが僕を覗き込んで無事を確認してから、微笑んだ。
「はい。マールとロイスが守ってくれました。」
そうかと陛下が微笑む。
ジークハルトは、ロイスが守ってくれたということが気に入らなかったのかロイスの名が出た時に口を尖らせた。
だが、ロイスを見てから、己を落ち着かせようとするかのようにふぅと息をついた。
「攫われる前になんとかできなかったのか?」
でも、出た言葉は嫌味だった。
ロイスは、すまんとジークハルトに謝る。
陛下が、僕をなでながらジークハルトに苦笑した。
「まぁ、それが理想だが、聖者が人質になったのだ。騎士ロイスは最善の方法をとった。ジーク?君としては不満はあるだろうがラスティやマールが無事だった。賊も壊滅できた。それでいいだろう?」
陛下はそう言いながらも、リオン方に鋭い視線を送っていた。
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