不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

文字の大きさ
上 下
59 / 233
第三章 学園生活の始まり

55 小鳥

しおりを挟む
結局、夕食になっても陛下は帰ってこなかった。
僕は、お風呂に入ってから寝室で陛下を待っていた。

待っている間、薬学の本を読む。
陛下は、王宮にも寝室があるし忙しいときは後宮に来ないこともある。
そう言う時は、夕食の時に知らせてくれるけれど、たまに知らせが来ないことも。
今日は来ないかなぁ思い始めた時だった、陛下が寝室にそっと顔をのぞかせた。

「あれ?ラスティ起きてたの?」

ダメだろうと言われてあれ?と思う。
いつもはとっくに寝ている時間だった。
はやく寝なさいと苦笑され、僕は返事をしつつ本を本棚に返す。

「今日は、遅かったのですね。」

陛下は、そうだねぇと頷きつつベットに転がっている。
疲れた~と枕に顔をうずめている陛下を眺めつつベットに戻る。

「そういえば、陛下に言っておかないとと思っていたのですが…」

陛下は、枕に顔をうずめたまま頷いている。

「僕のクラスに聖者リオン様がいました。」

陛下が、はぁ??と顔をあげた。

「あの子、教会から出ているの??聖者は14まで教会の中で過ごすって決まりがあるのに?」

陛下が、少し考えてから、なるほど…とつぶやいた。

「学園の位置を考えると教会の持っている土地に挟まれているから、聖者の行動範囲内としたということか?屁理屈に近いけど…まぁ…あの子がすでに屁理屈的な聖者だから仕方ないか…。」

陛下の言葉に僕は首を傾げた。

「屁理屈的な聖者?」

そうと陛下は頷いた。

「聖者リオンは、聖者に必要な神力がない。…いや…6歳の時に神力が消えた。通常はその時点で新しい聖者が現れるのだけど…聖者が現れたという報告が無くてね。代わりに彼は夢という形で世界の滅亡の夢を見始めたという。教会は神力の代わりに予言の力を手に入れたのだというけれども…私は違うと思っている。教会も新たな聖者を見つけるまでの繋ぎとしか思っていないのだろう。聖者リオンを、自由にさせているようだね。」

陛下は、困ったねぇとため息をついた。

「私としては…ラスティにあの子に近寄っては欲しくないんだけど…自由は奪いたくないし…」

うーんと陛下は悩んでからそうだとつぶやいた。
空中に指をくるくると回しながら呪文を囁く。
いつもより長い呪文だけど、陛下が伝令用の小鳥を生み出すときの呪文だ。
僕もはやく使えるようになったら陛下は少しは安心するかな…。
と思っていたら白い小鳥が陛下の手の平に生み出された。
小鳥の紫色のつぶらな瞳が僕を見る。
お腹の所に金色の王家の紋が浮かんでいる小鳥が僕の頭の上に乗った。
ちちち…と鳴くと姿を消した。

「ラスティから私に連絡が取れるように使い魔を作ったよ。」

使い魔…と僕はぽかんとする。
高等魔術をっぽんと使わないように陛下。

「ラスティの命令を聞くと思うから、話しかけてごらん。」

僕は、少し考えて、人差し指を前に出すと、おいでと言ってみた。
ちょんと姿が現れて僕の人差し指に小鳥がとまった。

「名前を付けておけば、呼びやすいかもね?」

陛下の言葉に僕は少し考えて、ちらりと陛下を見る。
陛下と同じ紫の瞳の小鳥。

「なら…君はディーね?」

小鳥、ディーは、チチと鳴くとパタパタと羽を動かした。
陛下は、苦笑している。

「陛下と同じ紫の瞳だったので…。」

僕がそういうと陛下は嬉しそうに目を細めた。

「そうだね…私の魔力を受けて生み出された使い魔は紫になるかな…瞳が。」

そう陛下は微笑むと小鳥を自分の方に呼びもどしていくつかまた呪文を重ねている。

「そんな可愛いことをされてしまうと…消すのが忍びないから強化しておいたよ。ラスティが魔術を使えるようになるまでは、この子が助けてくれるだろう。」

ありがとうございます、と言いながら先ほど陛下が使っていた呪文を思い出す。
いくつかわからないものもあったけれど、わかるものの中に少々怖いものがあったが…まぁいいかと流した。
僕のためにと考えてくれた結果…だと思うので…。
……だよね…僕のこと考えてだよね???
小鳥をなでつつ陛下の様子を見ていて、ふっと思い出したことを

「陛下…リオン君が聖者では無くなったらどうなるのですか?」

彼は陛下の認識では、聖者でないのに聖者を名乗っていることになっていないか?と思う。
彼のことはそこまで好きなわけではないけれど…やはり心配にはなる。

「どうだろうね。そこは教会が決めることだ。彼に人とは違う特徴があることは確かなのだから、問題はないと思っているよ…まぁ…教会が一番、罰したいのは…私だろうけれどね。」

僕が首をかしげると陛下は、微笑んだ。

「まぁ…もしリオンが聖者か聖者でないか気になるなら…胸の所に六つの小さな花の紋章があるか見てみたらいい。聖者にはそこに紋章が浮かぶそうだよ。かなり小さなものらしいけど、六角形になっていると聞いたことがあるな。これは教会の大神官や王族の一部しか知らないことだから、内緒だよ?」

僕は、はいと頷きながら、陛下が何故教会に罰を受けなければならないんだ?と首をかしげた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

処理中です...