50 / 233
第三章 学園生活の始まり
46 聖者リオン
しおりを挟む
笑顔全開のリオンが、僕の座っている席に駆け寄ってきた。
どうやら、彼は僕が席を決めるのを待っていたらしい。
そういうタイミングだ。
正直言えば、逃げたくなった。
けれど、逃げるわけにもいかず僕は笑顔で踏みとどまる。
「おはようございます。」
僕はとりあえず、笑ったまま挨拶をする。
リオンは、にこにこと笑いながら、おはようと返してくる。
「ずっと前にあったことがあるんだってね。……ぼく、覚えてなくて……神官に、君と同じクラスだって聞いてから絶対ご挨拶しないと思ってたの。」
屈託なく笑ってそう言うリオンに、そうですかと僕は返す。
顔が引きつらなかったことを褒めてほしい。
というか聖者が嘘ついてないか?
大丈夫か?
エスターにジークハルトのことを伝えに言った時のこと。
あれを忘れるとか、わざとでなかったら…どれだけの記憶力が悪いのか。
すごい顔してにらみつけていたのに。
まぁ、本当だろうな…彼は嘘をついてはいけない聖者だ。
もし…彼がこんなことで嘘を吐いて力を失ったとしたら…世界はどうなるのだろう。
ジークハルトが、眉を寄せてリオンを止めようとした。
だが、トリスティがため息をついてジークハルトに目配せする。
ジークハルトは、一歩ひいた。
「聖者リオン様、私は以前、言いましたよね?ラスティ様にそのような口調では失礼になります。」
リオンは、ええ~と頬を膨らました。
「でも、同じクラスだもの。学園では身分問わずがルールでしょう?別にいいでしょ?」
ねぇ?ラスティ様~とリオンが可愛らしい笑顔で言う。
少し離れたところでクラスメイトというか、リオンの取り巻きなのだろう生徒たちがこちらを見ている。
すごい顔をして僕を見ながら、ひそひそと話している。
これは、変な態度をとったらダメな奴だなぁと僕は思いながら微笑んだ。
「そうですね…リオン様の言う通りです。」
とりあえずは、肯定。
だよね、だよねと彼は屈託なく笑っている。
僕は、笑顔で彼を促すことにした。
「ご挨拶ありがとうございます。リオン様…あちらのお友達が待っていらっしゃいますよ。」
暗にさっさと向こうにいけと促す。
うん、いい子なのだろう。
あれだけの人数の子に慕われているわけだし。
それは、わかるんだけど、苦手。
リオンは、首をかしげて後ろを向いた。
「え?誰の事?友達って…いないよ?」
不思議そうにリオンは言う。
僕は首を傾げた。
いや…友達いないって…。
ジークハルトが、額に手を置いて首を横に振る。
マールとノルンは、苦笑していた。
僕がどうやら、的外れなことをいったらしい。
トリスティが、僕の肩を軽くたたいてから耳元でささやいた。
「リオンにとっての彼らは、信者というか…支持者というか…友人とは思っていないんだ。」
僕は思わず目を丸くする。
何それ?
怖い。
せめて友人カテゴリーに入れとこうよ。
クラスメイトでしょ?
「はい?」
え?ちょっと、リオンって。…こんな感じだっけ??
確かに、世間知らずだったよ。
でも、朗らかな子だったよ。
でも、もっと人を大切にしていた子だった。
こんな風に、人を言う子ではなかった…。
というか、そもそもあんな風に取り巻きとかいなかった…。
リオンは、にこにこと僕に笑いかける。
「僕ね、ラスティ様と友達になりたいな。」
ね?いいでしょ?とリオンは首を傾げた。
ここで否と言ったらダメな選択だろう。
だが、応と言っても駄目な気もする。
どっちにしろダメだろうなと思い曖昧に答えようとした時だった。
ジークハルトが、ああ!と声を上げた。
「すまない、ラスティ。もう授業が始まるから私は自分の教室に行くよ。トリスティもノルンも遅刻してしまう。聖者様も、席につきなさい。」
ジークハルトは、優しくリオンにそう言って微笑みかけた。
完璧な営業スマイル。
リオンは目を丸くしてからつまらなさそうに、はーいと言って前の席に向かっていく。
ジークハルトは、僕の頭を軽く撫でてから急ぎ足で教室を出て行った。
ほっとしたが、それもつかの間だった。
三人が出て行ったのを待っていたかのようにまた来たのだ。
荷物を手に取ったリオンが。
僕の隣の席に移動してきたのだ。
「一緒に授業受けよ~。」
空いていた席に置いていた荷物を僕に渡してぐいぐいとリオンは、密着してくる。
マールが、目を吊り上げたが相手は聖者。
僕は、そっとマールの手を握って止める。
諦めて荷物を足元に置く。
顔を上げると、リオンがじっと僕の顔を覗き込んできた。
「えへへ…ラスティ様の金色の眼って綺麗だなぁ~ずっと見てられるぅ~」
そういってリオンは、ぐいぐいと僕に密着する。
「はは…そう…ありがとう…。」
どうしたの??この子。
僕はただ、困惑するしかなかった。
どうやら、彼は僕が席を決めるのを待っていたらしい。
そういうタイミングだ。
正直言えば、逃げたくなった。
けれど、逃げるわけにもいかず僕は笑顔で踏みとどまる。
「おはようございます。」
僕はとりあえず、笑ったまま挨拶をする。
リオンは、にこにこと笑いながら、おはようと返してくる。
「ずっと前にあったことがあるんだってね。……ぼく、覚えてなくて……神官に、君と同じクラスだって聞いてから絶対ご挨拶しないと思ってたの。」
屈託なく笑ってそう言うリオンに、そうですかと僕は返す。
顔が引きつらなかったことを褒めてほしい。
というか聖者が嘘ついてないか?
大丈夫か?
エスターにジークハルトのことを伝えに言った時のこと。
あれを忘れるとか、わざとでなかったら…どれだけの記憶力が悪いのか。
すごい顔してにらみつけていたのに。
まぁ、本当だろうな…彼は嘘をついてはいけない聖者だ。
もし…彼がこんなことで嘘を吐いて力を失ったとしたら…世界はどうなるのだろう。
ジークハルトが、眉を寄せてリオンを止めようとした。
だが、トリスティがため息をついてジークハルトに目配せする。
ジークハルトは、一歩ひいた。
「聖者リオン様、私は以前、言いましたよね?ラスティ様にそのような口調では失礼になります。」
リオンは、ええ~と頬を膨らました。
「でも、同じクラスだもの。学園では身分問わずがルールでしょう?別にいいでしょ?」
ねぇ?ラスティ様~とリオンが可愛らしい笑顔で言う。
少し離れたところでクラスメイトというか、リオンの取り巻きなのだろう生徒たちがこちらを見ている。
すごい顔をして僕を見ながら、ひそひそと話している。
これは、変な態度をとったらダメな奴だなぁと僕は思いながら微笑んだ。
「そうですね…リオン様の言う通りです。」
とりあえずは、肯定。
だよね、だよねと彼は屈託なく笑っている。
僕は、笑顔で彼を促すことにした。
「ご挨拶ありがとうございます。リオン様…あちらのお友達が待っていらっしゃいますよ。」
暗にさっさと向こうにいけと促す。
うん、いい子なのだろう。
あれだけの人数の子に慕われているわけだし。
それは、わかるんだけど、苦手。
リオンは、首をかしげて後ろを向いた。
「え?誰の事?友達って…いないよ?」
不思議そうにリオンは言う。
僕は首を傾げた。
いや…友達いないって…。
ジークハルトが、額に手を置いて首を横に振る。
マールとノルンは、苦笑していた。
僕がどうやら、的外れなことをいったらしい。
トリスティが、僕の肩を軽くたたいてから耳元でささやいた。
「リオンにとっての彼らは、信者というか…支持者というか…友人とは思っていないんだ。」
僕は思わず目を丸くする。
何それ?
怖い。
せめて友人カテゴリーに入れとこうよ。
クラスメイトでしょ?
「はい?」
え?ちょっと、リオンって。…こんな感じだっけ??
確かに、世間知らずだったよ。
でも、朗らかな子だったよ。
でも、もっと人を大切にしていた子だった。
こんな風に、人を言う子ではなかった…。
というか、そもそもあんな風に取り巻きとかいなかった…。
リオンは、にこにこと僕に笑いかける。
「僕ね、ラスティ様と友達になりたいな。」
ね?いいでしょ?とリオンは首を傾げた。
ここで否と言ったらダメな選択だろう。
だが、応と言っても駄目な気もする。
どっちにしろダメだろうなと思い曖昧に答えようとした時だった。
ジークハルトが、ああ!と声を上げた。
「すまない、ラスティ。もう授業が始まるから私は自分の教室に行くよ。トリスティもノルンも遅刻してしまう。聖者様も、席につきなさい。」
ジークハルトは、優しくリオンにそう言って微笑みかけた。
完璧な営業スマイル。
リオンは目を丸くしてからつまらなさそうに、はーいと言って前の席に向かっていく。
ジークハルトは、僕の頭を軽く撫でてから急ぎ足で教室を出て行った。
ほっとしたが、それもつかの間だった。
三人が出て行ったのを待っていたかのようにまた来たのだ。
荷物を手に取ったリオンが。
僕の隣の席に移動してきたのだ。
「一緒に授業受けよ~。」
空いていた席に置いていた荷物を僕に渡してぐいぐいとリオンは、密着してくる。
マールが、目を吊り上げたが相手は聖者。
僕は、そっとマールの手を握って止める。
諦めて荷物を足元に置く。
顔を上げると、リオンがじっと僕の顔を覗き込んできた。
「えへへ…ラスティ様の金色の眼って綺麗だなぁ~ずっと見てられるぅ~」
そういってリオンは、ぐいぐいと僕に密着する。
「はは…そう…ありがとう…。」
どうしたの??この子。
僕はただ、困惑するしかなかった。
0
お気に入りに追加
506
あなたにおすすめの小説

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた
やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。
俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。
独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。
好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け
ムーンライトノベルズにも掲載しています。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる