48 / 233
第三章 学園生活の始まり
44 門番の騎士
しおりを挟む
校門につくと警護の騎士がいた。
門番の騎士という感じだろうか。
聖騎士のようだ。
きちんと騎士の正装をしている。
聖騎士は、王家の紋章を胸に小さく刻んだアーマーを付けている。
戦いの時は全身鎧で固めているが、警護の時は胸当てくらいの軽い鎧をつけて白い制服を身についている。
長いマントにも王家の紋章が刺繍されている。
門番の騎士は、白いマントに白色の紋章を刺繍していた。
遠くからは見えないが、近くに行くとはっきりとわかる。
生徒たちを委縮させない工夫だろう。
聖騎士は、貴族の生徒はともかく、平民は近寄りがたいと思っている者も多い。
学園の、警護とわかっていても聖騎士が立っていれば近寄りがたく感じるだろう。
騎士たちも生徒たちを威圧したいわけではない。
警護任務の時は、紋章を遠くからはわからなくしている聖騎士も多いとマールから聞いたことがある。
この騎士もそう言う騎士なのだろうとも思う。
生徒たちが、学生書を警護の騎士たちに見せている。
僕も準備しないと…、と準備しようとバックの中から出そうとしたらジークハルトに止められた。
ジークが親し気に騎士に手を挙げる。
「よう、ジーク。」
知り合いの騎士だったようだ。
顔パスということなのだろう。
年齢的には、ジークハルトより少し上。
たぶん成人ばかりという風情。
「おはようございます。」
騎士は、僕らを見る。
僕と目が合うと目を細めて軽く会釈をした。
学園では僕は生徒だから、仰々しく臣下の礼はしなくていい。
学園では身分は無いというのが一応のルール。
きちんと心得ている騎士のようだ。
ジークハルトに、にやりと騎士は笑った。
「護衛騎士として、ようやくデビューか?」
ジークハルトは、ええと頷く。
「ようやくです。」
肩をすくめるジークハルトに僕は首を傾げた。
護衛騎士してたけどなぁと思っていると警護している騎士が苦笑した。
「不思議そうですね?ラスティ王妃様。」
僕は、はいと答える。
「ジークハルトは、僕のことを今までも、護衛してくれていましたが…。」
騎士は、ええと微笑む。
「他の騎士が何重にも警護しているお城の中の護衛になりますから、騎士の中ではまだ訓練と見られているのですよ。まぁ、年齢でいえばジークはまだ、訓練でもよい年ですが…。お城から学園までは、確かに城壁や町を警護している騎士がいますが、ジークハルトとっては、初めての本格的な単独の護衛としての仕事になります。だから、今日は、彼の正式な護衛騎士のデビューなのです。」
ジークハルトを見るとそうですよと苦笑している。
楽しそうであり、誇らしそうな彼の表情にそうかと思う。
トリスティが肩をすくめた。
「ジークハルトは、実力があるのに、このままだと護衛騎士どまりで、もったいないって言われてるからな。騎士団長は世襲制ではないから…それなりの実績が必要だろう。今でも十二分に聖騎士でもおかしくない実力を持っているのに…。」
トリスティの言葉に、ジークハルトは肩をすくめた。
「ああ、その噂のことか…。俺の目的は、陛下とラスティ様を幸せにすることだ。正直言えば騎士という地位も別にどうでもいい。陛下とラスティを守れるなら何でもよかった。騎士という立場が都合よかった。それだけだ。」
トリスティが顔をひきつらせた。
「重くないか?」
ジークハルトは肩をすくめる。
「自覚はある。」
僕が首をかしげると、騎士は肩をすくめる。
「トリスティ様の言う通りです。ジークはこの歳ですでに団長に迫る実力を持っているというのに、この調子だ。資質はあるけれど、本人の意思が別の所にあるのは…見ている立場が違えば…もどかしいものです。」
騎士は、小さく呟いた。
「特に、逆の者にとっては…本人の意思に実力がついていかない者にとっては…ジークは憎くてしょうがない存在になってしまっている。私は…それが少し…心配です。ジークにとっても…貴方にとってもだ…ラスティ王妃様。十分に気を付けてください。」
騎士の言葉は真摯なものだった。
複雑な表情になってしまう。
ジークハルトのことは少し僕ももったいないなぁと思ってしまうから。
才能に恵まれている彼が、護衛騎士にとどまるのはもったいない。
さっきの誇らしそうな表情を見てしまえば、余計にそう思う。
ジークハルトはやはり、騎士団長になるべきなのだろう。
護衛騎士で留まるのは彼らしくない。
そんな僕に気が付いたのか、騎士は、にっこりと僕に笑いかけた。
「殆どの者がジークの夢を応援しています。特に…陛下と共に戦った騎士たちは…陛下に幸せになってほしいと願っています…先の戦を私も知りませんが…陛下にとってどれほどつらいモノかは理解できないわけではない。」
そうですかと、頷く僕に騎士は苦笑した。
陛下は、先の戦いで愛する弟君を無くした。
その後の婚姻も、あまりうまく行っていない。
今の平和なこの国で、陛下が戦う必要はない。
陛下も幸せになってほしい。
そう、陛下と共になったかった騎士たちは思っているのですと門番の騎士は言う。
まだ、貴方には難しいかもしれないけれど…と騎士は苦笑した。
「あと…誤解しないでくださいね、ラスティ王妃様。ジークは貴方を陛下から奪いたいのではないのですよ。陛下と貴方の幸せを願っている…それだけなんです。」
門番の騎士という感じだろうか。
聖騎士のようだ。
きちんと騎士の正装をしている。
聖騎士は、王家の紋章を胸に小さく刻んだアーマーを付けている。
戦いの時は全身鎧で固めているが、警護の時は胸当てくらいの軽い鎧をつけて白い制服を身についている。
長いマントにも王家の紋章が刺繍されている。
門番の騎士は、白いマントに白色の紋章を刺繍していた。
遠くからは見えないが、近くに行くとはっきりとわかる。
生徒たちを委縮させない工夫だろう。
聖騎士は、貴族の生徒はともかく、平民は近寄りがたいと思っている者も多い。
学園の、警護とわかっていても聖騎士が立っていれば近寄りがたく感じるだろう。
騎士たちも生徒たちを威圧したいわけではない。
警護任務の時は、紋章を遠くからはわからなくしている聖騎士も多いとマールから聞いたことがある。
この騎士もそう言う騎士なのだろうとも思う。
生徒たちが、学生書を警護の騎士たちに見せている。
僕も準備しないと…、と準備しようとバックの中から出そうとしたらジークハルトに止められた。
ジークが親し気に騎士に手を挙げる。
「よう、ジーク。」
知り合いの騎士だったようだ。
顔パスということなのだろう。
年齢的には、ジークハルトより少し上。
たぶん成人ばかりという風情。
「おはようございます。」
騎士は、僕らを見る。
僕と目が合うと目を細めて軽く会釈をした。
学園では僕は生徒だから、仰々しく臣下の礼はしなくていい。
学園では身分は無いというのが一応のルール。
きちんと心得ている騎士のようだ。
ジークハルトに、にやりと騎士は笑った。
「護衛騎士として、ようやくデビューか?」
ジークハルトは、ええと頷く。
「ようやくです。」
肩をすくめるジークハルトに僕は首を傾げた。
護衛騎士してたけどなぁと思っていると警護している騎士が苦笑した。
「不思議そうですね?ラスティ王妃様。」
僕は、はいと答える。
「ジークハルトは、僕のことを今までも、護衛してくれていましたが…。」
騎士は、ええと微笑む。
「他の騎士が何重にも警護しているお城の中の護衛になりますから、騎士の中ではまだ訓練と見られているのですよ。まぁ、年齢でいえばジークはまだ、訓練でもよい年ですが…。お城から学園までは、確かに城壁や町を警護している騎士がいますが、ジークハルトとっては、初めての本格的な単独の護衛としての仕事になります。だから、今日は、彼の正式な護衛騎士のデビューなのです。」
ジークハルトを見るとそうですよと苦笑している。
楽しそうであり、誇らしそうな彼の表情にそうかと思う。
トリスティが肩をすくめた。
「ジークハルトは、実力があるのに、このままだと護衛騎士どまりで、もったいないって言われてるからな。騎士団長は世襲制ではないから…それなりの実績が必要だろう。今でも十二分に聖騎士でもおかしくない実力を持っているのに…。」
トリスティの言葉に、ジークハルトは肩をすくめた。
「ああ、その噂のことか…。俺の目的は、陛下とラスティ様を幸せにすることだ。正直言えば騎士という地位も別にどうでもいい。陛下とラスティを守れるなら何でもよかった。騎士という立場が都合よかった。それだけだ。」
トリスティが顔をひきつらせた。
「重くないか?」
ジークハルトは肩をすくめる。
「自覚はある。」
僕が首をかしげると、騎士は肩をすくめる。
「トリスティ様の言う通りです。ジークはこの歳ですでに団長に迫る実力を持っているというのに、この調子だ。資質はあるけれど、本人の意思が別の所にあるのは…見ている立場が違えば…もどかしいものです。」
騎士は、小さく呟いた。
「特に、逆の者にとっては…本人の意思に実力がついていかない者にとっては…ジークは憎くてしょうがない存在になってしまっている。私は…それが少し…心配です。ジークにとっても…貴方にとってもだ…ラスティ王妃様。十分に気を付けてください。」
騎士の言葉は真摯なものだった。
複雑な表情になってしまう。
ジークハルトのことは少し僕ももったいないなぁと思ってしまうから。
才能に恵まれている彼が、護衛騎士にとどまるのはもったいない。
さっきの誇らしそうな表情を見てしまえば、余計にそう思う。
ジークハルトはやはり、騎士団長になるべきなのだろう。
護衛騎士で留まるのは彼らしくない。
そんな僕に気が付いたのか、騎士は、にっこりと僕に笑いかけた。
「殆どの者がジークの夢を応援しています。特に…陛下と共に戦った騎士たちは…陛下に幸せになってほしいと願っています…先の戦を私も知りませんが…陛下にとってどれほどつらいモノかは理解できないわけではない。」
そうですかと、頷く僕に騎士は苦笑した。
陛下は、先の戦いで愛する弟君を無くした。
その後の婚姻も、あまりうまく行っていない。
今の平和なこの国で、陛下が戦う必要はない。
陛下も幸せになってほしい。
そう、陛下と共になったかった騎士たちは思っているのですと門番の騎士は言う。
まだ、貴方には難しいかもしれないけれど…と騎士は苦笑した。
「あと…誤解しないでくださいね、ラスティ王妃様。ジークは貴方を陛下から奪いたいのではないのですよ。陛下と貴方の幸せを願っている…それだけなんです。」
0
お気に入りに追加
505
あなたにおすすめの小説

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる