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第二章 運命を壊す方法

32 後宮の警護の事情

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ノルンとマールと僕の三人で午前中をのんびりと温室で過ごす。
陛下が最近は毎日いたから、少し寂しくも感じるけど、この生活も慣れたものだ。

とても静かな空間。
陛下一人いないだけでここはとても静かに感じる。
別に陛下が騒がしいわけではないけれど。
陛下は書類仕事をしているだけなわけだし。
ここは静かだから仕事が捗るとのこと。

だから、静かさは変わらないのだけれど、空気が全然違う。
陛下がいるだけで空間が華やかなのだ。
午前中の光を浴びながら、書類仕事に向かう陛下は絵画のよう。
やっぱりイケメンは違うよね。
いるだけで絵になるとか。

温室から小さく見える陛下の部屋は今日は無人。
それだけで寂しいとか…僕は陛下に依存しすぎなのでは?

そもそも、ここが広すぎるのが原因だと、的外れな八つ当たりをしてみる。

後宮は広いけれど、僕のいる奥の間以外は、本来の目的では使われていない。
陛下が、側室を持っていなかったから。
側室どころか、正妃もいなかったし。

前のお妃さまは、住んでいたのは別宅だったらしくて通いでのお妃さまをしていたとのこと。
徹底してるな、エスターのお母さん。

そういうことでしばらく、使われていなかった。
建物自体はしっかりしているし掃除もきちんとされてるから壊れてるとか汚いとかは無いけども。
使われていない部屋は、物置となっているところもあるとか。

僕のいる奥の間は後宮で文字通り一番奥。
正妃の住む場所で、後宮内でも独立しているし、奥の間は単体で壁に囲まれてる。

側室がいない時はここだけ機能できるようなつくり。
陛下のお父上、前王も側室はいなかった。
側室がいたのは何代が前の王だあったらしいから後宮の空間がもったいないような気もする。

壊すのも費用が掛かるし、何かの折は避難所にも使えるだろうとのことではあるけれど。

後宮自体、頑強な壁に囲われている。
不審者の侵入は難しいということで、奥の間の中には警護はいない。
奥の間の外と後宮の方には、警護の人がわんさかいるらしいけども。

いや…なんでわんさかいるかというと…この国が平和だからだ。

「この国は平和ですから…騎士団は復興事業の方には人員が必要なのですけれど…」

王宮の方に用事があって後宮を横切った時にあまりに多い騎士の人に驚いた僕にノルンが説明してくれた。

復興事業用に組織された職人たちの一団は忙しくその彼らの警護を行っている時は騎士たちも忙しい。
けれども、騎士の数が多く、仕事が騎士の数と合っていない。
人数を減らす案もあったけど、他の国は戦をやっているから、攻めらせる可能性がないわけでもない。

小競り合い的な戦いは、まれにあったとのこと。
優秀な騎士を多く抱えているということは、抑止力にもなるから。
そう言う意味で、人数を減らせないとマールはいっていたけども。

訓練はしっかりしているけれど、騎士が必要な場面が減っていることは事実だという。
他国は荒廃して魔物も出ているというが、この国は、平和なまま。
とはいっても、辺境にたまに魔物は出たりはしていた。

教会は、聖者が居るからその程度の被害で済んでいるのだと言っている。

以前の生では確かに、聖者の存在があるから魔物が少ないということだった。

僕がいなくなった後どう変化したか分からないのでその辺の正確な真偽はわからないけども。
前世のゲームでは、聖者が力を失ったから魔物が多く現れるようになったという設定だった。

ただ、今回の生では、国全体に今までは無かった防御の結界が張られている。
陛下と魔術師長が国全体を覆うことのできる防護結界のシステムを開発したらしい。

詳しいことはよくわからないけども。
最近作られた防御結界の核に使われる宝玉の起動の時は僕も協力はした。
起動時にかなりの魔力を必要で、魔力量を魔術師長が調べて多い人たちが核になる宝玉に魔力を注いだのだ。
僕っては魔力量だけだったら魔術師長より上だとのこと。

…魔法を使うことは今のところ無いので、今は宝の持ち腐れだけども。
14になったら魔法の実戦も訓練に入れるねと言われた。

今は座学で魔法の勉強しか許可はされていない。
魔法の使用は暴走とか危険だからだ。
エスターに絡まれたら魔法で仕返ししようと思ってたけど、そう言われてしまうと使えないかな?
全然、会ってないけども。

魔術師団や魔力の強い騎士、陛下や僕など魔力が強いものが総出で魔力を込めた宝玉。
半永久的に、外敵の侵入を防ぐ結界をかなりの広範囲で展開できるというもの。

当初の計画では王都だけだったらしかったのだけど、魔術師長が調子に乗ったらしい。
あとで、陛下に愚痴られた。
元々平和ではあったけども、辺境に入り込んだりしていた魔物たちも宝玉が出来てから入らなくなった。

僕としては宝玉の力でというよりは、聖者の力と併用でなのではとも思ってしまう。
こういうのってあんまり過信してたら危ないというし。
ともかく、その所為で、騎士の活躍の場が、減ったのは確かだ。

「平和はいいのですが、騎士が失業してしまいそうだったのですよ。」

ノルンは苦笑しつつそう言った。
平和はいいけど、平和すぎても困る。
平和だからと騎士団は縮小できない。
警護の仕事を増やすことと見習い騎士の訓練のためにバルハルト公の提案もあって、後宮の警護の人員を増員したのだという。
バルハルト公は情報を集めている立場でもある。
だから、何か悪い情報があったのかもとノルンが不安もありますと教えてくれた。
騎士は後宮だけ増員されたということではない。

「他にも、公共施設の警備などに騎士が行っているとのことです。」

討伐の仕事が無くなった騎士が警護の騎士に言われたとノルンは苦笑していた。
騎士の人たちに、ぼやかれるのだと。
ノルンは、王宮と奥の間を行き来することが多いから騎士の人と結構親しくなっているようだ。

「警護が厳しくなったおかげで、無法者の冒険者などはこの国には寄り付かなくなったそうですよ。」

ノルンは、外壁の街に行くとき、多少怖かったから助かると笑った。
彼が実感するくらい治安が安定しているのだと言っていた。
だから、騎士に愚痴を言われた時はノルンは、治安が良くなってうれしいと返すのだという。

…ノルンはとてもきれいだから騎士の人に人気だとマールは言っていた。
庶民の子ではあるけれど、王宮に通っている貴族の子息でもある。
王妃の専属使用人でまだ年若いのに教育係でもある。
騎士の中では、本気でノルンを娶りたいと狙っている人も多いとか。
15歳だと、そろそろパートナー候補を作ってもよい年だ。
ノルンの好みから考えたら騎士の人は、ばっちりでいいのだよなぁ。




うう…寂しいけど…ノルンに良い人が出来たら応援しよう。



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