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閑章 聖者リオンside 繰り返す
閑話 01 バットエンドの世界
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質素なベットに、青年は細く白い肢体を投げ出していた。
情事のあとがそこかしこに残ったままの小さな部屋をうつろな瞳で青年は見まわした。
「ジークハルト…?」
先ほどまで手ひどく自分を弄んでいた男の名を青年は呼ぶ。
青年は、長く息を吐きながらゆっくりと立ち上がると己の服を探し始めた。
「帰らなきゃ……。」
そうつぶやくが青年は、自分がどこへ帰ろうとしているのかわからなかった。
服を探しながら、昨夜使われた薬の容器を見つめる。
「俺に効かないって知ってるくせに…」
青年…リオンが、きっかけとなって死なせてしまった少年の顔を思い浮かべる。
金罰金瞳のこの世界で一人残った神の瞳をもつ少年。
「ラスティ…今度こそって…思ったのに…。」
リオンは、薬の容器を握り締めた。
その瞳には涙が浮かぶ。
「思う通りに…どうして行かないんだ…。」
先ほどまで自分を手ひどく弄んでいた男の憎しみに満ちた表情をリオンは思い出した。
男が、リオンを憎む理由をリオン自身が一番知っていた。
「俺では…強制力から逃れれないのか…。もう…嫌だ…君を死なせたくないのに…」
リオンはこの世界の異常を知っている。
この世界は繰り返しているのだ。
バットエンドの世界。
リオンは、この世界をそう、呼んでいた。
この世界は、繰り返している。
何故リオンにはそれがわかるかというと、彼には前世の記憶というものがあるからだ。
ある理由で、この世界によく似たゲームをやっていた。
リオンの前世は普通の会社員の男だった。
前世の世界で彼には好きな人が居た。
同僚の男性だった。
前の世界では、男と女という性別がわかれていた。
この世界のように、単一の性別で力で役割が変化するというものではなかった。
前の世界では、リオンの生きていた時代は同性でパートナーになることはまだ珍しいという状態だった。
だから、思うだけだった。
優しい人だった。
彼は妹が、家でゲームをしているから面倒をみると言っては皆の誘いを断り家にまっすぐ帰る人だった。
リオンは、家に女がいるのではと彼の話を酒の肴に他の同僚たちと笑いあったことを思い出した。
後日、実際、妹だったと判明した。
それは彼が事故にあって亡くなった葬儀の日だった。
「はは…なんで…今、あの人のことなんておもいだすんだよ…。」
リオンは、独り言を言いながら、拾った服を握り締めた。
「今とか…そういう問題…でもないか…俺は未だに後悔しているからか…。だから…この世界にいるんだろうな。」
前世のリオンの思い人の葬儀の日。
彼は、葬儀場の隅で泣いている思い人の妹に話しかけた。
色々迷惑をかけていたのだと思い人の妹は泣いていた。
苦労していた思い人の話を聞いた。
思い人の妹は、いつも兄の部屋で彼の話通りにゲームをやりに通っていたらしい。
実は、料理教室に通った帰りでもあった。
疲れて帰ってくる兄に、手料理を食べさせたいと思って彼女は苦手な料理を習っていた。
意地っ張りな彼女は、料理のことを言い出せなかった。
だから、彼の家に通う口実に彼の家でBLゲームをやっていたと笑った。
恥ずかしがりつつ計算などのことを手伝ってくれる兄といる時間がとても楽しかったからと笑った。
泣きながら。
彼が事故で亡くなった日。
彼女は勇気を振り絞って、下手な料理を作って待っていた。
彼に…食べてはもらえなかったと彼女は、泣いた。
その後も何度か彼女とは会った。
会社での彼を知りたいと彼女から頼まれたからだ。
幾度か会って話して…彼女は少し吹っ切れたと…がんばって前に進みますと礼を言われた。
お礼にと渡されたのは、彼女が彼とやっていたというゲームだった。
「………」
彼はラスティが好きだったと彼女から聞いていた。
だろうなと思っていたことをリオンは思い出した。
彼女にもらったゲームを、前世の男はやっていた。
一通りのルートは見たと思う。
隠しルートもハーレムルートも。
あのゲームは能力次第では、役割が逆にもできた。
それもやった。
前世の男の感想は、どうせならラスティを落としたいな、だった。
リオンは、くしゃくしゃになったシャツに腕を通しながらつぶやく。
「似てるからな…。」
リオンは、前世の自分は彼とラスティがお人好しで貧乏くじばかりの彼は似ていると思っていたことを思い出す。
同僚の彼は気が付いていなかったが、綺麗な顔をしていた。
ラスティは、前世の彼の思い人に似ていた。
我ながら…粘着質だなとリオンは、苦笑する。
シャツだけは着た状態でリオンは、窓へと向かう。
リオンは窓を開けて、ゆっくりと空を見た。
紅い星がリオンの眼に映った。
「後…数時間と言ったところかな…。」
あの星が落ちて…この世界は終わる、とリオンはつぶやく。
実際そうだった。
彼は、バットエンドばかりを繰り返していた。
無理なんだよと、巻き込んで悪いねと救えない世界にリオンは形だけの謝罪する。
「…貴方以外…愛せないんだ…」
リオンは目を閉じた。
「ラスティ……。」
前世の思い人が、好きだったという彼に似ているラスティをリオンは思う。
いつのまにか、リオンの中の思い人はラスティの姿をしていた。
「君に幸せになってほしい…僕の願いはそれだけ…他は…どうでもいいんだ。」
リオンの願いは、それだけだった。
別に、自分がラスティを幸せにしたいとは願わない。
ラスティを愛して狂ってしまったジークハルト。
変わってしまった国王陛下。
あの二人とラスティが幸せになる未来が見たい。
リオンが願うのはそれだった。
それだけだった。
「俺自身も…どうでいいんだ…。」
人の気配が、扉の向こうからした。
リオンは扉を見る。
ノックの音に、リオンは苦笑した。
「お育ちのいいことで…どうぞ?」
情事のあとがそこかしこに残ったままの小さな部屋をうつろな瞳で青年は見まわした。
「ジークハルト…?」
先ほどまで手ひどく自分を弄んでいた男の名を青年は呼ぶ。
青年は、長く息を吐きながらゆっくりと立ち上がると己の服を探し始めた。
「帰らなきゃ……。」
そうつぶやくが青年は、自分がどこへ帰ろうとしているのかわからなかった。
服を探しながら、昨夜使われた薬の容器を見つめる。
「俺に効かないって知ってるくせに…」
青年…リオンが、きっかけとなって死なせてしまった少年の顔を思い浮かべる。
金罰金瞳のこの世界で一人残った神の瞳をもつ少年。
「ラスティ…今度こそって…思ったのに…。」
リオンは、薬の容器を握り締めた。
その瞳には涙が浮かぶ。
「思う通りに…どうして行かないんだ…。」
先ほどまで自分を手ひどく弄んでいた男の憎しみに満ちた表情をリオンは思い出した。
男が、リオンを憎む理由をリオン自身が一番知っていた。
「俺では…強制力から逃れれないのか…。もう…嫌だ…君を死なせたくないのに…」
リオンはこの世界の異常を知っている。
この世界は繰り返しているのだ。
バットエンドの世界。
リオンは、この世界をそう、呼んでいた。
この世界は、繰り返している。
何故リオンにはそれがわかるかというと、彼には前世の記憶というものがあるからだ。
ある理由で、この世界によく似たゲームをやっていた。
リオンの前世は普通の会社員の男だった。
前世の世界で彼には好きな人が居た。
同僚の男性だった。
前の世界では、男と女という性別がわかれていた。
この世界のように、単一の性別で力で役割が変化するというものではなかった。
前の世界では、リオンの生きていた時代は同性でパートナーになることはまだ珍しいという状態だった。
だから、思うだけだった。
優しい人だった。
彼は妹が、家でゲームをしているから面倒をみると言っては皆の誘いを断り家にまっすぐ帰る人だった。
リオンは、家に女がいるのではと彼の話を酒の肴に他の同僚たちと笑いあったことを思い出した。
後日、実際、妹だったと判明した。
それは彼が事故にあって亡くなった葬儀の日だった。
「はは…なんで…今、あの人のことなんておもいだすんだよ…。」
リオンは、独り言を言いながら、拾った服を握り締めた。
「今とか…そういう問題…でもないか…俺は未だに後悔しているからか…。だから…この世界にいるんだろうな。」
前世のリオンの思い人の葬儀の日。
彼は、葬儀場の隅で泣いている思い人の妹に話しかけた。
色々迷惑をかけていたのだと思い人の妹は泣いていた。
苦労していた思い人の話を聞いた。
思い人の妹は、いつも兄の部屋で彼の話通りにゲームをやりに通っていたらしい。
実は、料理教室に通った帰りでもあった。
疲れて帰ってくる兄に、手料理を食べさせたいと思って彼女は苦手な料理を習っていた。
意地っ張りな彼女は、料理のことを言い出せなかった。
だから、彼の家に通う口実に彼の家でBLゲームをやっていたと笑った。
恥ずかしがりつつ計算などのことを手伝ってくれる兄といる時間がとても楽しかったからと笑った。
泣きながら。
彼が事故で亡くなった日。
彼女は勇気を振り絞って、下手な料理を作って待っていた。
彼に…食べてはもらえなかったと彼女は、泣いた。
その後も何度か彼女とは会った。
会社での彼を知りたいと彼女から頼まれたからだ。
幾度か会って話して…彼女は少し吹っ切れたと…がんばって前に進みますと礼を言われた。
お礼にと渡されたのは、彼女が彼とやっていたというゲームだった。
「………」
彼はラスティが好きだったと彼女から聞いていた。
だろうなと思っていたことをリオンは思い出した。
彼女にもらったゲームを、前世の男はやっていた。
一通りのルートは見たと思う。
隠しルートもハーレムルートも。
あのゲームは能力次第では、役割が逆にもできた。
それもやった。
前世の男の感想は、どうせならラスティを落としたいな、だった。
リオンは、くしゃくしゃになったシャツに腕を通しながらつぶやく。
「似てるからな…。」
リオンは、前世の自分は彼とラスティがお人好しで貧乏くじばかりの彼は似ていると思っていたことを思い出す。
同僚の彼は気が付いていなかったが、綺麗な顔をしていた。
ラスティは、前世の彼の思い人に似ていた。
我ながら…粘着質だなとリオンは、苦笑する。
シャツだけは着た状態でリオンは、窓へと向かう。
リオンは窓を開けて、ゆっくりと空を見た。
紅い星がリオンの眼に映った。
「後…数時間と言ったところかな…。」
あの星が落ちて…この世界は終わる、とリオンはつぶやく。
実際そうだった。
彼は、バットエンドばかりを繰り返していた。
無理なんだよと、巻き込んで悪いねと救えない世界にリオンは形だけの謝罪する。
「…貴方以外…愛せないんだ…」
リオンは目を閉じた。
「ラスティ……。」
前世の思い人が、好きだったという彼に似ているラスティをリオンは思う。
いつのまにか、リオンの中の思い人はラスティの姿をしていた。
「君に幸せになってほしい…僕の願いはそれだけ…他は…どうでもいいんだ。」
リオンの願いは、それだけだった。
別に、自分がラスティを幸せにしたいとは願わない。
ラスティを愛して狂ってしまったジークハルト。
変わってしまった国王陛下。
あの二人とラスティが幸せになる未来が見たい。
リオンが願うのはそれだった。
それだけだった。
「俺自身も…どうでいいんだ…。」
人の気配が、扉の向こうからした。
リオンは扉を見る。
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「お育ちのいいことで…どうぞ?」
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