不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第一章 終わりと始まり

20 教会の思惑

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「本当はエスターを教会にあずけるのは反対なんだよね」

陛下はため息をつきつつ言った。
それはそうだろう。
王家と教会の関係を聞いた後だと余計にそう思った。

そもそも教会が、エスターの再教育に名乗りを上げたのは、政治に影響力が欲しいからだ。

今までの国では教会は政治にかかわってきた。
けれど、この国は議会制。
王の言葉も議会では否定ができる。
陛下や教会の一存で何かするよいうことは難しくなっている。

教会は、この国を異端として昔は糾弾してきた。
前の戦いも、実際は教会がこの国を攻めるように当時の王をそそのかしたとまで噂されている。
多くの領主はあまり教会をよく思っていない。
もちろん信仰の深い領主も多いけれど。
丁度半々くらいで、不正はしにくい。
陛下が教会に不信感を持っているから、教会の意見に賛同をあまりしない。
現在の制度では、教会の意見が通りにくい。

教会の影響の強いエスターが王になれば教会はこの国に影響力を持てる。
現聖者とエスターを教会はパートナー契約させたいのではというのが陛下たちの考えだ。

聖者は、本来特に何事も無ければ18までは清らかなまま教会で祈りをささげる。

その後は、そのまま聖者で一生を終える人も居るし、別の者に聖者を譲り、有力貴族とパートナーになることもある。
たまに任期途中で、新たな聖者が生まれて、聖者の任を18前で終える人も居ないこともない。

エスターと聖者とをパートナーにさせて、現聖者リオンを王か王妃にしようと教会は思っているのでは、と陛下とバルハルト公は推測していた。
どうやら、口にするだけの確信はあるようだ。

エスターだけでは、この王国を治めるには力が足りない。
教会が、彼につけば周辺の国もそうそう攻めてこない。
国が大きくなれば守るものも多くなる。
聖者リオンとの婚約をと、教会側から以前そういう提案もされたという。

エスターの力不足は皆知っている。
教会と言う後ろ盾でもなければ、この国は治められないだろう。
それだけ、教会は強大だ。
エスターを傀儡の王にして教会の治める国にしたいのではという皆の考えもわからないでもない。

陛下は、通常はのんびりした温厚な人だから舐められているんだとバルハルト公は怒っていた。
陛下は、だろうねと苦笑した。

朝議でそんな喧嘩をしていいのかと思ったけれども。
議会ででた意見を、皆否定しなかった。
それは教会への親交の深い領主たちも。
逆に歓迎と言う感じだったけど。
それがあるから、エスターを王位継承権候補から外すというのがなかなかできない理由でもあるらしい。
朝議でのやりとりを思い出していたから表情が暗くなっていたようだ。

「どうしたの?」

陛下に耳元でささやかれてびくりと肩が揺れた。
いや…幼児に色気たっぷりで耳元でささやかないでください。

「教会って怖いなと…。」

陛下は、ああと頷く。

「まぁ、教会の存在を否定する気はないけども、私は考え方が少し違うから…悪いけども、私が生きているうちは、彼らは思う通りに活動できないようにするだろうね。だからエスターを取り込もうとする行動は、仕方ないのかもしれない。前の妃は熱心に教会に通っていたからね。だから別邸も教会の近くにある。前の妃の…元の国が教会の影響力の強い国だったから。」

エスターの後ろ盾になるというのは彼らにとっては自然な考えだろうとへ陛下は苦笑する。

「私が治める国では…教会は窮屈だろう。」

だから、教会が陛下がいなくなった後に…と考えてもしかたないかなと陛下は言う。
そもそもそんなに力があるなら、教会の国を作ればいいのにと思ってしまう。
わざわざ、強い国に寄生するようなことしなくても十分国が作れそうなのに。

僕がそう言うと陛下は、そうだねと、笑った。
ジークハルトが、苦笑しつつ教えてくれたのは、教会を嫌いな武装軍団とかが、結構いるらしい。
国には所属していない集団が多いとも。
居て教会が国を作ったら襲ってくるだろうと思われているらしい。

教会が、王家に嫌がられているのがわかっていても、ここに大教会をおいたのもそれが理由の一つ。
陛下が教会を嫌いなのは有名だが、神官たちが国民として大教会を置いたら攻められないだろうという理由らしい。

まぁ…教義で正反対の役割を持つ金の瞳の一族を貶めてるからそう警戒してもしかたないのかな。




陛下は、エスターが王になって教会が影響力を増したとしても、結局は自分の治世が終わった後のこと。
そうなったら、自分の守りたいものだけは守るけど、後はどうでもいいよと陛下はどこか投げやりに言う。



何故だろう…。
そんなことを言う陛下にとても違和感を感じたのだった。



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