14 / 233
第一章 終わりと始まり
14 陛下の苦悩
しおりを挟む
ジークハルトは、生まれた時から感情がないのかというくらい無表情だったらしい。
どこかおかしいのではとバルハルト公は、かなり医者に見せたり色々して見たがジークハルトは感情を出さなかったらしい。
ところが、登城途中の僕を見て微笑んだという。
その後からは、一気に感情をよみがえらせたと。
なんだ?僕そんなにオカシイことしてたかな。
それで、バルハルト公は、僕をジークハルトの傍に置いておきたいと思ったらしい。
まぁ…前の生でもそんな感じだったらしい。
ジークハルトは、僕の面倒を見るようになってから笑うようになったんだと言われた気がする。
ゲームでも無表情か怒ってるかだなぁ。
ラスティには優しい感じだったけども。
いや…だから結婚させようってちょっとおかしくない?
陛下は難しい顔をしていた。
僕にはすでに紋章が浮かんでるから、子供作るまでは手元に置いておかないとだし、でもバルハルト公のお願いも聞いてあげたいっていう感じみたいだ。
傍にということで護衛騎士にしてみようという話になったらしいけど、バルハルト公はやっぱり、ジークハルトに騎士団長になってほしいのだろう。
僕をバルハルト公が保護して、ジークハルトの傍に置いておけば、ジークハルトは騎士団に戻れるものな。
陛下はしばらく考えていたが、何か思いついたらしい。
「なら…バル…お前、ジークを手放せるか?」
バルハルト公は、眉を寄せた。
「どういう意味でだ。」
陛下は、怖い顔をするなと苦笑する。
「ラスティは、王家の宝だ。なら私が死んだあと…継ぐ者が必要だろう?」
バルハルト公は、首を傾げた。
「エスターは…お前の知っている通りだ。私はそのことでお前に一度言ったことがあるが…お前は、ジークを自分の後継者にしたいからと言って私の要求を退けた。酒の席のことでもあった。半分冗談だったことでもある。お前も本気にしていなかっただろうが…私は半分は本気だった。だが…ジークは優秀だ。次期騎士団長としてお前の後を継ぐにふさわしい能力を持っている。お前の気持ちもわかるから前回の議会でジークは避けたんだ。」
陛下の言葉を聞いてバルハルト公は、思い出したのか、ため息をついた。
「あれは…そうか…半分とはいえ本気だったのか。」
ああと、陛下は頷く。
「ラスティは、すでにわたしの妃だ。その立場を外すつもりは、私には無い。すでに紋章も浮かんでいる。ラスティはどうしても一度は私の子を作らねばならない立場だ。お前が、ジークハルトの願いを叶えたいという気持ちもわかる。だが、ラスティは私の妃。子が出来た後だとしても…功績か代償無くして妃を渡すことはできない。」
バルハルト公は、ふむと少し考えて頷く。
「もとよりこいつは騎士団長より護衛騎士を選んだ。俺もそこまで欲はかかない。こいつがよしとするなら、ジークをお前の後継者として譲る。だが、議会ではお前とラスティ妃の子に王位継承権を持たす気だろう。」
陛下は、肩をすくめる。
「今は存在しない子よりも、ジークの方が現実的だ。それに王位継承権を固定する気はない。私とラスティの間に子が生まれるまでジークが代理で王位継承権を持てばいい。子が生まれるとなったらジークがどうしたいか、その時に選べばいい。ジークだってその頃になったらラスティではなく他の子を選ぶ可能性はあるだろう?感情が戻ったんだから。こういうことでジークの将来をガチガチに決めてやるつもりはないし。私としてはジークが王を継いでも良いし、子でもよい。議会もエスターより、確実に王家の血を引いているジークならば納得する。年齢的にもエスターと同じ年だ。問題はない。」
ジークハルトを産んだ人は王宮魔術師の魔術師長で彼も王族だ。
陛下の母方の従兄弟らしい。
バルハルト公は父方の従兄弟だという。
三人は元々年も同じで、親友なので若い頃はよく集まっては、飲んでいたという。
若い頃に酔っぱらってバルハルト公と負けた方が子供を産むと勝負して…出来た子供がジークハルトだという。
それでいいのか?ひどくないか?
経緯はともかく、現在も連れ添っているし、ジークハルトには弟が4人いるということで仲は良い。
双子がいるからとのことだけど、ほぼ2年に一回ペースで家族が増えてるのってすごいね。
双子は目の前の騎士団長が産んだというから、すごい世界に来たものだとも思うが。
ともかく、魔導師長は、今回のジークハルトのことは、バルハルト公に一任しているという。
バルハルト公は、頭をかいた。
「両親共々、王家は王家だからな…ジークは血筋に問題はない。だが…いいのか?エスターを切り捨てることになる。…エスターは…お前を父と慕っている…。」
陛下は、苦笑した。
「だと…良かったんだがな…。あの子は…ラスティを見て、言ったよ。『私が実の子でないから、こんな仕打ちをするのかと…。ずっと我慢してきたのに、まだ、我慢を強いるのか!』ってね。私の気持ちはあの子に伝わっていなかったんだなと…そして、私はあの子のことをわかってやれていなかったんだと、つくづく思い知らされたんだ。」
僕を抱きしめる陛下の腕にわずかにこわばる。
心が痛いと陛下が泣いているような気がして僕は陛下に抱きついた。
「ラスティ?」
きょとんとしている陛下に、僕は笑顔を向ける。
陛下が悪いわけでもない。
たぶん、エスターが悪いってことでもないのだろう。
陛下とエスターの親子関係はゲームではどちらでも取れるような感じだった。
疑惑レベルだったし、ここが本当にゲームと同じかも僕は事実はわからない。
だから、僕が陛下に声をかけるとしたら僕のきもちだけだ。
「僕は陛下が大好きです。だから、悲しい顔をしてほしくないです。」
陛下は、一瞬泣きそうな顔をして僕を更に抱きしめ返してくれた。
バルハルト公が、バリバリと頭をかいている。
「まいったなぁ…これはディオスから離すことはできん。」
案外ディオスは弱いんだと、バルハルト公はため息をつく。
支えがないと、無理するからと言うバルハルト公は、愛し気に陛下を見つめた。
陛下は、私の癒しだからなと苦笑を返している。
「なぁバル…ジークもまだ8歳だ。将来の選択肢は残してやりたい。ラスティには…私の妃と決めてしまって悪いことをしているとは思っているんだ。まぁ…これからその分尽くすつもりだが、…ラスティにすでに無理を強いている私はジークの自由までも奪いたくない…ジークには選べる道を残したい。エスターもだ…あの子は王位継承権を持たない方が自由になれると思う。」
ジークに王位継承権を渡す。
それは、陛下なりに考えた結果なのだなと思った。
どこかおかしいのではとバルハルト公は、かなり医者に見せたり色々して見たがジークハルトは感情を出さなかったらしい。
ところが、登城途中の僕を見て微笑んだという。
その後からは、一気に感情をよみがえらせたと。
なんだ?僕そんなにオカシイことしてたかな。
それで、バルハルト公は、僕をジークハルトの傍に置いておきたいと思ったらしい。
まぁ…前の生でもそんな感じだったらしい。
ジークハルトは、僕の面倒を見るようになってから笑うようになったんだと言われた気がする。
ゲームでも無表情か怒ってるかだなぁ。
ラスティには優しい感じだったけども。
いや…だから結婚させようってちょっとおかしくない?
陛下は難しい顔をしていた。
僕にはすでに紋章が浮かんでるから、子供作るまでは手元に置いておかないとだし、でもバルハルト公のお願いも聞いてあげたいっていう感じみたいだ。
傍にということで護衛騎士にしてみようという話になったらしいけど、バルハルト公はやっぱり、ジークハルトに騎士団長になってほしいのだろう。
僕をバルハルト公が保護して、ジークハルトの傍に置いておけば、ジークハルトは騎士団に戻れるものな。
陛下はしばらく考えていたが、何か思いついたらしい。
「なら…バル…お前、ジークを手放せるか?」
バルハルト公は、眉を寄せた。
「どういう意味でだ。」
陛下は、怖い顔をするなと苦笑する。
「ラスティは、王家の宝だ。なら私が死んだあと…継ぐ者が必要だろう?」
バルハルト公は、首を傾げた。
「エスターは…お前の知っている通りだ。私はそのことでお前に一度言ったことがあるが…お前は、ジークを自分の後継者にしたいからと言って私の要求を退けた。酒の席のことでもあった。半分冗談だったことでもある。お前も本気にしていなかっただろうが…私は半分は本気だった。だが…ジークは優秀だ。次期騎士団長としてお前の後を継ぐにふさわしい能力を持っている。お前の気持ちもわかるから前回の議会でジークは避けたんだ。」
陛下の言葉を聞いてバルハルト公は、思い出したのか、ため息をついた。
「あれは…そうか…半分とはいえ本気だったのか。」
ああと、陛下は頷く。
「ラスティは、すでにわたしの妃だ。その立場を外すつもりは、私には無い。すでに紋章も浮かんでいる。ラスティはどうしても一度は私の子を作らねばならない立場だ。お前が、ジークハルトの願いを叶えたいという気持ちもわかる。だが、ラスティは私の妃。子が出来た後だとしても…功績か代償無くして妃を渡すことはできない。」
バルハルト公は、ふむと少し考えて頷く。
「もとよりこいつは騎士団長より護衛騎士を選んだ。俺もそこまで欲はかかない。こいつがよしとするなら、ジークをお前の後継者として譲る。だが、議会ではお前とラスティ妃の子に王位継承権を持たす気だろう。」
陛下は、肩をすくめる。
「今は存在しない子よりも、ジークの方が現実的だ。それに王位継承権を固定する気はない。私とラスティの間に子が生まれるまでジークが代理で王位継承権を持てばいい。子が生まれるとなったらジークがどうしたいか、その時に選べばいい。ジークだってその頃になったらラスティではなく他の子を選ぶ可能性はあるだろう?感情が戻ったんだから。こういうことでジークの将来をガチガチに決めてやるつもりはないし。私としてはジークが王を継いでも良いし、子でもよい。議会もエスターより、確実に王家の血を引いているジークならば納得する。年齢的にもエスターと同じ年だ。問題はない。」
ジークハルトを産んだ人は王宮魔術師の魔術師長で彼も王族だ。
陛下の母方の従兄弟らしい。
バルハルト公は父方の従兄弟だという。
三人は元々年も同じで、親友なので若い頃はよく集まっては、飲んでいたという。
若い頃に酔っぱらってバルハルト公と負けた方が子供を産むと勝負して…出来た子供がジークハルトだという。
それでいいのか?ひどくないか?
経緯はともかく、現在も連れ添っているし、ジークハルトには弟が4人いるということで仲は良い。
双子がいるからとのことだけど、ほぼ2年に一回ペースで家族が増えてるのってすごいね。
双子は目の前の騎士団長が産んだというから、すごい世界に来たものだとも思うが。
ともかく、魔導師長は、今回のジークハルトのことは、バルハルト公に一任しているという。
バルハルト公は、頭をかいた。
「両親共々、王家は王家だからな…ジークは血筋に問題はない。だが…いいのか?エスターを切り捨てることになる。…エスターは…お前を父と慕っている…。」
陛下は、苦笑した。
「だと…良かったんだがな…。あの子は…ラスティを見て、言ったよ。『私が実の子でないから、こんな仕打ちをするのかと…。ずっと我慢してきたのに、まだ、我慢を強いるのか!』ってね。私の気持ちはあの子に伝わっていなかったんだなと…そして、私はあの子のことをわかってやれていなかったんだと、つくづく思い知らされたんだ。」
僕を抱きしめる陛下の腕にわずかにこわばる。
心が痛いと陛下が泣いているような気がして僕は陛下に抱きついた。
「ラスティ?」
きょとんとしている陛下に、僕は笑顔を向ける。
陛下が悪いわけでもない。
たぶん、エスターが悪いってことでもないのだろう。
陛下とエスターの親子関係はゲームではどちらでも取れるような感じだった。
疑惑レベルだったし、ここが本当にゲームと同じかも僕は事実はわからない。
だから、僕が陛下に声をかけるとしたら僕のきもちだけだ。
「僕は陛下が大好きです。だから、悲しい顔をしてほしくないです。」
陛下は、一瞬泣きそうな顔をして僕を更に抱きしめ返してくれた。
バルハルト公が、バリバリと頭をかいている。
「まいったなぁ…これはディオスから離すことはできん。」
案外ディオスは弱いんだと、バルハルト公はため息をつく。
支えがないと、無理するからと言うバルハルト公は、愛し気に陛下を見つめた。
陛下は、私の癒しだからなと苦笑を返している。
「なぁバル…ジークもまだ8歳だ。将来の選択肢は残してやりたい。ラスティには…私の妃と決めてしまって悪いことをしているとは思っているんだ。まぁ…これからその分尽くすつもりだが、…ラスティにすでに無理を強いている私はジークの自由までも奪いたくない…ジークには選べる道を残したい。エスターもだ…あの子は王位継承権を持たない方が自由になれると思う。」
ジークに王位継承権を渡す。
それは、陛下なりに考えた結果なのだなと思った。
0
お気に入りに追加
499
あなたにおすすめの小説
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
まだ、言えない
怜虎
BL
学生×芸能系、ストーリーメインのソフトBL
XXXXXXXXX
あらすじ
高校3年、クラスでもグループが固まりつつある梅雨の時期。まだクラスに馴染みきれない人見知りの吉澤蛍(よしざわけい)と、クラスメイトの雨野秋良(あまのあきら)。
“TRAP” というアーティストがきっかけで仲良くなった彼の狙いは別にあった。
吉澤蛍を中心に、恋が、才能が動き出す。
「まだ、言えない」気持ちが交差する。
“全てを打ち明けられるのは、いつになるだろうか”
注1:本作品はBLに分類される作品です。苦手な方はご遠慮くださいm(_ _)m
注2:ソフトな表現、ストーリーメインです。苦手な方は⋯ (省略)
突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています
ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた
魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。
そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。
だがその騎士にも秘密があった―――。
その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
本編完結しました!
おまけをちょこちょこ更新しています。
第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!
市川先生の大人の補習授業
夢咲まゆ
BL
笹野夏樹は運動全般が大嫌い。ついでに、体育教師の市川慶喜のことも嫌いだった。
ある日、体育の成績がふるわないからと、市川に放課後の補習に出るよう言われてしまう。
「苦手なことから逃げるな」と挑発された夏樹は、嫌いな教師のマンツーマンレッスンを受ける羽目になるのだが……。
◎美麗表紙イラスト:ずーちゃ(@zuchaBC)
※「*」がついている回は性描写が含まれております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる