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第一章 終わりと始まり
03 僕の最後
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ぼんやりと青空を眺める。
小鳥の声が、あたりに響いている。
静かな部屋。
僕一人で、ぼんやりとできる時間。
たぶん、自分の生で一番静かな時間。
残り少ないその時間をゆっくりと楽しむ。
ここで死んでしまうけれど。
辛いことも多かったけど。
別に悪い人生だとは思っていない。
陛下と幼馴染がいっぱい良い思い出をくれたなと思う。
彼らはいつも僕を愛してくれる。
もちろん家族と友人としてだけども。
愛情深い彼らがこれから不幸にならないでほしい。
僕がこの死を選ぶのは、どうしても悲しませてしまう彼らの人生が少しでも安寧になるように。
いっぱい迷惑をかけたのに、いつも愛情を注いでくれる二人。
陛下は、僕を本当に子供のように愛してくれた。
実の子のエスターに、注げない愛情の分も、たぶん注いでくれた。
幼馴染も忙しいだろうに時間をつくっては、一緒にいてくれた。
幼馴染は僕がエスターにいじめられていることを知っていたから。
仕返しできるけど、仕返ししない僕をいつも怒っていたけど。
エスターの意地悪からずっと守ってくれた。
今は、騎士団長として陛下と一緒にこの国に居ない。
二人がいたらって思う。
けど、変わらない運命なら彼らが帰った時は全て終わっている方がいいような気もする。
本当に、家族として、友人として愛してくれていたのがわかるから。
手紙でも残した方が、いいだろうかとふと思う。
でも、余計な重しになりたくないし。
手の中の毒を見る。
この毒を飲まなくとも僕は何かしらの理由で数か月も生きれない。
たぶん。
ううん…きっと。
この死が一番悲しみも少ないはずだ。
階下が騒がしくなった。
来たなと思う。
ほんの少し躊躇する。
2度程、ここでこの毒薬を飲まなかったことはある。
でも、その2回とも後悔した。
それでも…。
もう少しだけでも、陛下と幼馴染と一緒に居たいと思ってしまう。
でも…と僕はふたを少し震える手で開けた。
幾度経験してもやっぱり怖いし、つらい。
毒を飲むことがではなくて二人を悲しませることが。
でも、ここで死ななくても、もっとひどい死が待っているだけだったから。
僕は一体何なのだろうな。
そう思い……また、毒を飲む。
いつもながら苦くてまずい。
でも、この毒は眠るように僕を死にいざなう。
「今度は…ラスティでなければいいのだけれど。」
そう……僕は、ラスティの人生を何度も繰り返した。
何度も何度も…。
僕がここで死ぬことがこの物語の始まり。
第一王子と聖者の過ちで死ぬ第二王子。
エスターと聖者はその罪を背負う。
これは聖者が愛する者と愛を育み、試練に打ち勝ち…。
僕を死なせたという罪を許され幸せになるまでの物語の始まり。
ばたばたと音がする。
おそらく、エスターが走ってきているのだ。
彼はいつも一歩遅い。
そう決まっている。
だんだんと意識が落ちていく。
闇へと…。
陛下と幼馴染の嘆いている顔が浮かんだ。
一度だけ見た。
彼らの嘆く様子を。
おぼろげに覚えてる。
彼らに一度だけ看取られた死。
…なんで僕は…こんな目にあっているんだろう。
僕は、どうして聖者のために死ななければならないのだろう。
叫び声が聞こえる。
もう意味はすら分からない。
何度も何度も。
僕はこうやって闇の中に沈んでいく。
闇の中…。
声が聞こえた。
まっくらな闇の中。
遠くに赤い何かが見えた。
それは、小さな穴から覗いている光景のよう。
僕がいない世界。
昔の記憶の中の映像なのか。
本当に世界の光景なのか。
ふわふわした僕の頭ではわからない。
城が見える。
全てが炎に包まれている。
白亜の城が真っ赤に染まって崩れ落ちている。
ああ、バットエンドの風景だなと思う。
聖者が失敗したとき、この世界は閉じる。
神様の罰が降り注ぐ。
暗闇の中、誰が泣いている声が聞こえる…。
今度こそと思ったのに…。
助けようと思ったのに…。
ごめんねと…。
僕のために泣いてくれている。
たぶん…どちらかだろうと思う。
このバットエンドを作り出す人。
この物語のラスボスのどちらかだ。
小鳥の声が、あたりに響いている。
静かな部屋。
僕一人で、ぼんやりとできる時間。
たぶん、自分の生で一番静かな時間。
残り少ないその時間をゆっくりと楽しむ。
ここで死んでしまうけれど。
辛いことも多かったけど。
別に悪い人生だとは思っていない。
陛下と幼馴染がいっぱい良い思い出をくれたなと思う。
彼らはいつも僕を愛してくれる。
もちろん家族と友人としてだけども。
愛情深い彼らがこれから不幸にならないでほしい。
僕がこの死を選ぶのは、どうしても悲しませてしまう彼らの人生が少しでも安寧になるように。
いっぱい迷惑をかけたのに、いつも愛情を注いでくれる二人。
陛下は、僕を本当に子供のように愛してくれた。
実の子のエスターに、注げない愛情の分も、たぶん注いでくれた。
幼馴染も忙しいだろうに時間をつくっては、一緒にいてくれた。
幼馴染は僕がエスターにいじめられていることを知っていたから。
仕返しできるけど、仕返ししない僕をいつも怒っていたけど。
エスターの意地悪からずっと守ってくれた。
今は、騎士団長として陛下と一緒にこの国に居ない。
二人がいたらって思う。
けど、変わらない運命なら彼らが帰った時は全て終わっている方がいいような気もする。
本当に、家族として、友人として愛してくれていたのがわかるから。
手紙でも残した方が、いいだろうかとふと思う。
でも、余計な重しになりたくないし。
手の中の毒を見る。
この毒を飲まなくとも僕は何かしらの理由で数か月も生きれない。
たぶん。
ううん…きっと。
この死が一番悲しみも少ないはずだ。
階下が騒がしくなった。
来たなと思う。
ほんの少し躊躇する。
2度程、ここでこの毒薬を飲まなかったことはある。
でも、その2回とも後悔した。
それでも…。
もう少しだけでも、陛下と幼馴染と一緒に居たいと思ってしまう。
でも…と僕はふたを少し震える手で開けた。
幾度経験してもやっぱり怖いし、つらい。
毒を飲むことがではなくて二人を悲しませることが。
でも、ここで死ななくても、もっとひどい死が待っているだけだったから。
僕は一体何なのだろうな。
そう思い……また、毒を飲む。
いつもながら苦くてまずい。
でも、この毒は眠るように僕を死にいざなう。
「今度は…ラスティでなければいいのだけれど。」
そう……僕は、ラスティの人生を何度も繰り返した。
何度も何度も…。
僕がここで死ぬことがこの物語の始まり。
第一王子と聖者の過ちで死ぬ第二王子。
エスターと聖者はその罪を背負う。
これは聖者が愛する者と愛を育み、試練に打ち勝ち…。
僕を死なせたという罪を許され幸せになるまでの物語の始まり。
ばたばたと音がする。
おそらく、エスターが走ってきているのだ。
彼はいつも一歩遅い。
そう決まっている。
だんだんと意識が落ちていく。
闇へと…。
陛下と幼馴染の嘆いている顔が浮かんだ。
一度だけ見た。
彼らの嘆く様子を。
おぼろげに覚えてる。
彼らに一度だけ看取られた死。
…なんで僕は…こんな目にあっているんだろう。
僕は、どうして聖者のために死ななければならないのだろう。
叫び声が聞こえる。
もう意味はすら分からない。
何度も何度も。
僕はこうやって闇の中に沈んでいく。
闇の中…。
声が聞こえた。
まっくらな闇の中。
遠くに赤い何かが見えた。
それは、小さな穴から覗いている光景のよう。
僕がいない世界。
昔の記憶の中の映像なのか。
本当に世界の光景なのか。
ふわふわした僕の頭ではわからない。
城が見える。
全てが炎に包まれている。
白亜の城が真っ赤に染まって崩れ落ちている。
ああ、バットエンドの風景だなと思う。
聖者が失敗したとき、この世界は閉じる。
神様の罰が降り注ぐ。
暗闇の中、誰が泣いている声が聞こえる…。
今度こそと思ったのに…。
助けようと思ったのに…。
ごめんねと…。
僕のために泣いてくれている。
たぶん…どちらかだろうと思う。
このバットエンドを作り出す人。
この物語のラスボスのどちらかだ。
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