不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第一章 終わりと始まり

08 陛下という人

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小鳥の声が、柔らかい光の中に響いている。
瞼の裏から見える光は、たぶんまぶしいのだろう。

「ラスティ、…起きて。」

優しく撫でられて、目が覚めた。
陛下が朝日の中、苦笑している。

おそらく陛下がカーテンを一度開けてから僕の頭をなでにベットに戻ってきたのだろう。

6歳児に朝からそんな色気駄々洩れの笑顔で迫らないように。
無駄にイケメンすぎるよなこの陛下。
声もすごくいい声だし。

妹が何故、陛下攻略ルートが無いのかと泣きながら、結構な頻度で宰相の息子ルートに突入してたからな。
あのルートは、中盤までラスティは生きている。
出てくるのは、陛下かジークハルトに抱かれている時だが。
聖者が清らかでいないといけない分、あのゲーム脇役のそういうシーンが多かったけども、陛下のそういうのは、宰相ルートのラスティとしかない。
幼馴染は、攻略対象が嫌悪度Maxの時の聖者の売られ先の一つ。
酷い系のHシーンがある。

朝から、変なこと思い出したじゃないか。
結局、僕はあれから、二度寝?しました。
あの後、陛下の腕の中で、撫でられてたら眠くなって意識がなくなっていた。
陛下の手て撫でられると眠くて眠くて。
気持ちいいのだもの。

「おはようございます」

少し赤くなりつつ挨拶する。
ふんわりと陛下に抱きしめられた。

朝の光の中。
輝く金髪。
さわやかな笑顔の美形。
やっぱりイケメンな陛下だ。
少し、はだけた寝巻から鍛え上げられた筋肉を見せつつ、陛下はさわやかに微笑んだ。
幼児に色気全開で微笑まないように。
いつもだったら使用人さんが起こしに来ているはずだけども。
部屋の中には、陛下だけ。

「おはよう。まずは着替えて、朝ごはんかな?」

はいと頷く。
そのまま抱き上げられて、クローゼットの前に移動する。
陛下に手伝ってもらって服を着ることになるらしい。
陛下が僕の服をどれにしようかなと僕の服を選んでいる。
普通は使用人さんとかがやってくれるのだけどやはり来ない。
そう思っていると、陛下は少し照れたように笑う。

「うん。ちょっとだけ父親気分を味わいたくてね。」

陛下が僕の世話をするからといって使用人さん達を断ったらしい。

「エスターの件でもう少し家族にはきちんと、向き合った方がいいのだと思い知ったよ。」

どうやら少し陛下は反省中らしい。
理由は、エスターの暴走を目の当たりにして危機感を覚えたというもの。
使用人に任せてしまっていたからあそこまでわがままになったのかなと陛下は苦笑した。

「あそこまで人の心をわからない、わがままな子になっているとは思わなかった。」

僕を拒絶するのにかなり暴れたらしい。
王子らしからぬ暴言に陛下も驚いたらしく、これは教会で再教育してもらった方がいいとなったという。

あまりにひどい暴れっぷり。
もともとあまり評判は良くなかった。

わがまま王子。

けれども、まだ、子供だ。
教育はこれから。
そういうことで皆長い目で見ていた。
だが、今回は常軌を逸していた。

廃嫡案も会議で、でたらしい。

廃嫡案の理由は僕という陛下に妃が出来たこと。
今までエスターの母である前妃が亡くなってから陛下は独り身だった。
子供も一人だけだし、現在の王の近しいモノに年頃の変わりになる年代の子どもがいない。
一人いるけど、その子はダメな理由がある。
そんな状態から、まだまだ、子供で保護目的とは言え僕という妃が出来た。
つまり新しい王位継承権をもつことのできる者が生まれる可能性が出来たのだ。

僕が子供を産んだらその子に王位継承権を与えてしまえばいいと。

気が長いな!!
その前に、エスター何をした。
どんだけ暴れたんだ。

一応、それだと王位継承権を持つ者のいない時期が長いということで保留。
陛下と僕の間に子供が出来たら即移すということで決定したらしい。

いや、まて、決定すんな!!
僕まだ6歳です。
しかも途中で死ぬ運命!!

なんだか、普通に僕は陛下の子供を産まないとならないようだ。
紋章を付けられた時点では…ある意味確定ではあるけども。
この紋章は子供を産むまでついてるわけだし。
もしくは、陛下が死ぬまで。

一応この国の法律では成人は18歳。

紋章によって子供を生まれるように体が変化するのが大体その年齢くらいから。
16くらいから変化がことあるらしいけども。
今までの繰り返しの生を思い出すと16歳時点では変化がなかった。
陛下と幼馴染ともにゅもにゅ関係になった時にも陛下に紋章はつけられていたと思う。
その時点で僕に体の変化があれば、その変化によって、薬の影響下から抜け出せないかという考えもあったらしい。
けど、変化なしのまま死んでる。
16での変化はなさそうだから、18まではこの紋章はあると思っておいた方がいいかな?
あと12年もあるし。

結婚すること自体には年齢制限はない。
普通、やっぱり18からだけども。
貴族は政略上の婚姻も多いから、僕のような子供のころからの婚姻も珍しくない。

紋章をつけた者の責任としてパートナーの保護は法律で決まっている。
僕の場合は、陛下はある意味この国で最強だものな。

実は子供の時に紋章をつけられた場合は、僕が産まなくてもよい方法はある。
僕が陛下より強くなって陛下に子供を産んでもらえばいいのだ。

たぶん、陛下は公平な人だからその可能性も考えているのだろう。
紋章が胸の位置にあるから。
その可能性が一切ない場合は下腹に紋章が浮き上がっているらしい。

胸の位置の紋章は、相手と対等という意味の位置。
下腹の位置だと、相手に支配されているという位置。

公平なのは陛下らしい。
たぶん、僕が魔力を扱えるとわかったら陛下は自分も紋章を入れていいと言いそうだ。
けどもですよ。
いや…無理ですよ。
ラスボスなんだもん。
陛下。

僕が、うんうん悩んでいるのを陛下はどうやらエスターのことで悩んでいると思ったようだ。
陛下は、頭をなでつつ大丈夫だよと笑った。
教会には僕と同い年の聖者も居るから、エスターの友人になってくれたらいいなと陛下はつぶやく。
聖者と仲良くなったら少しは、人の心がわかるようになるかもと陛下は言う。

うーん。
どうかな。

あんまり変わらないと思う。
とは言わないけども。

まぁ…展開は違うけどここでエスターは聖者と会うのか。

「聖者さま?」

僕がそう言うと陛下はうんと頷いた。

「聖者リオンだったかな?」

陛下は、あまり聖者には興味がないらしい。
名前だけそう言うと陛下はあくびをした。




あれ?結構あくびが可愛いな陛下。




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