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しおりを挟むいきなり生徒会長でこの国の第2王子でもあるシリウス殿下が現れたことで、教室中の視線は私達(ほとんどがシリウス殿下へなのだけど)に集中したままだ。
シリウス殿下に婚約者がいることは周知されていても私がその相手だとは思い至らないようで、ましてや今朝の校門前でシリウス殿下とマーガレット様の親しげな様子を目撃していたならなおさらだろう。
第2王子の婚約者にしては普通すぎる見た目だし(なぜか制服は誰よりも着こなしているよ)、ずっと領地で祖父母と暮らしていたため知り合いもいない。
シリウス殿下でさえ「ソフィア嬢で合ってるよね。」と確認をとるくらいだし。
そんな得体の知れない私とシリウス殿下の組み合わせは疑問でしかないだろう。
「じゃあ、私はここで。」
「あっ、ありがとうございました。」
私は多忙な殿下をこんなことで煩わせてしまったことが申し訳なくついつい俯きがちで殿下を見送っていると行きかけた殿下が
「あぁそうだ、ソフィア嬢」
「はい」
「入学おめでとう。」
「えっ、......ありがとうございます。」
突然の言葉にじわじわとうれしさがこみあげてきてついつい顔も心もゆるんでしまう。なんてチョロい私。
「シリウス殿下」
「うんっ?」
「とてもかわいらしいお花のお見舞いありがとうご
ざいます。」
「あぁ、気に入ってもらえたようでよかった。」
「それと......」
「......申し訳ない。もう行かないと......」
「あっ、おひき止めして申し訳ありませんでし
た。」
やっぱり手紙の件は謝罪できなかった。このままなかったことにしていいかな?
シリウス殿下を見送り、ざわつく教室に入ると刺すような女子学生の眼差しがちらほら......これからの学園生活が思いやられるようだ。
自分の席につき、もの思いにふける。帰る前にもう一度ピアノ弾きたいな。やっぱりお父様に話してピアノを買ってもらおう。でも、どこから話す?......などと考えているうちに先生の話しも終わりみんなが帰り支度をしていると教室の外から
「入学式に出席しないで何をしていらしたのかしら」
「早速、上級生の方と空き教室で二人きりでいらしたみたいよ。」
「そのあと、なに食わぬ顔で第二殿下に教室に案内させるなんて。」
「えっ、もしかしてあの方がシリウス殿下の婚約者なの?マーガレット様がお似合いなのに......」
明らかに私のことだよね。
クラスの子達も私のことだと気がついているので遠巻きに見る感じになる。
正確には音楽室は三人だけど......言っていることは間違っていない。
「貴方達、そうゆう詮索はおやめなさい。」
凛とした声に振り向くと、そこにはとりまきの令嬢達を引き連れたマーガレット様が立っていた。
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