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絆の邂逅編
第二十二話 本当の『思い』
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「トビの奴・・・」
制下の門の操作盤の前で、一人離れたところで座って黙るユーガを見てネロは隣に座るルインにそう呟いた。
「ここまで来て、いきなり抜けた挙句自分には関係ねぇって・・・流石にどうかしてるぜ!ったく・・・!」
しかし、とルインは顎に手を合わせた。
「トビの言わんとしている事はわからなくはありません。トビが受けていたログシオン陛下からの命令は確かにあの話だけでしたし」
「そりゃ、そうかもしれないけどよ・・・あの言い方はないだろうが・・・くそっ、トビの奴・・・あいつとはちゃんと話をつけたいところだぜ」
「・・・そうですね。・・・しかし、本当にトビに会いたいのは、彼のはずですよ」
「・・・それは・・・そうだな・・・」
ネロとルインは同時にユーガを見た。
(・・・トビ・・・)
ユーガは先程のトビの言葉を繰り返し、何度も何度も思い返していた。
『目的は果たされた今、お前達と一緒にいてやる義理はねえんだよ。挙句、お前の考えやらなんやらを押し付けられ、『絆』とかいう物を信じさせられて・・・もううんざりなんだよ。・・・わかったか。俺達の・・・道は、違えていたんだ』
その言葉が、ユーガの心を強く締め付けていた。自分の信じていた絆とは、他人に自分の考えを押し付けるだけの簡単な物だったのか。仲間を信じると言っておきながらも、結局大切なのは『自分自身』だったのかもしれない。今なら、そうだとわかる。ユーガは自分に強い嫌悪感を覚えた。
(何が・・・『トビに認めてもらいたい』だよ・・・。こんなんじゃ、認めてもらうどころじゃねーだろ・・・)
ユーガはさらに自分の心が暗く沈んでいくのを感じながら、小さく息を吐いた。
「ねーねー、ネロ君」
その様子を見ていたネロに、リフィアがいつもと変わらない明るい声で声をかけた。
「・・・何だよ?」
「サキュバスの村、行くの?行くならすぐに準備するけど」
「・・・もうちょい待ってくれ。ユーガが落ち着くまでさ」
「それは構わないけど・・・急がなくていいの?」
「・・・どういう事だ?」
ネロは怪訝そうにリフィアに尋ねた。
「アタシがサキュバスの村で噂を聞いたって話はしたよね?多分サキュバスの村の中で捕まってるならまだ良いけど、村の外に出たらまずいんだよね」
「まずいって・・・何が起こるんだ」
「人間の闇・・・負の感情に呑まれるの。そうすると、自分をコントロールできなくなる。理性を保っていられなくなるの」
「何だって⁉︎」
「だから、行くなら急いだ方がいいの。ユーガ君には悪いけどね」
ネロは考えた。今あの状態のユーガを連れて行って大丈夫なのだろうか・・・?そう思っていた、その時。
「・・・俺なら、大丈夫」
その声に振り向くと、ユーガがーその眼には光が無いがー立っていた。横にはミナも立っている。
「ガイアの人達がやばいかもなんだろ・・・?なら、俺の事なんかいいから行こう」
「ユーガ、だけど・・・」
「ネロ、良いから・・・行こうぜ」
ユーガのその声に、ネロは頷く事しかできなかった。ユーガの暗い瞳に、気付かずにはいられなかったのだった。
「ん、それじゃ行き方を説明するね」
「頼む」
リフィアの説明をユーガが聞いている時、ミナがネロに近付いて俯いた。
「ユーガさん・・・大丈夫でしょうか・・・」
ミナの言葉に、そうですね、とルインも頷く。
「・・・これまでの『生き方』を否定された事は・・・かなり大きな傷となっているのでしょうね・・・」
「・・・ユーガ・・・」
ネロはリフィアの説明を受けて考え事をしているユーガの背中を見つめた。その背中には、隠しても隠しきれない悲しみが溢れていた。
~トビサイド~
「・・・あー、うぜぇ」
トビは、ミヨジネアの小舟ー恐らくマキラ教徒信者の物だろうーを使って、シレーフォまでの海路を進みながら一人呟いた。そして、先程の事を思い返す。なぜ、あそこまで強い言葉となって自分の口から出たのか。なぜ、ユーガに対してあんな事を言ったのか。後悔はしていないが、『何か』が胸の辺りでもやもやとしている感覚があった。何なんだ、とトビは舌を打つ。
「・・・そもそも、何で敵国の人間を容易く信じられんだよ・・・」
『絆を信じる』。それは、ユーガが口癖のように言っていた言葉だった。ユーガは、自分を信じていた。ただ、それはトビにとって価値観を押し付けられていたほか無かった。
「・・・あいつが自分の考えを俺に押し付けてくるからだ。俺は・・・」
トビは呟いて、ユーガの笑顔を思い浮かんだがそれを無理やり掻き消して眼を閉じた。しかし、それでも胸の辺りがもやもやとする感覚は消える事はなかった。
~ユーガサイド~
「と、いうわけ」
「・・・よくわからなかったんだけど・・・?」
ユーガが首を傾げるとリフィアは、えー、と口をあんぐりと開けた。
「結構わかりやすく説明したつもりだったんだけどなぁ・・・」
「・・・ごめん。・・・はは、こんな頭悪いから俺・・・トビに愛想尽かされるのかな・・・」
「あーあー、謝らなくても良いよ。何もそんなに責めてないでしょ?」
「う、うん・・・ごめん・・・」
「・・・うーん、ユーガ君・・・まぁいいや。もう一度説明するよ。もの凄く簡単に説明すると、今ここにいるキミ達の血を吸って、それを糧にアタシが転送魔法陣を展開する。そしたら、キミ達は魔法陣の中に入って祈りを捧げるの」
祈り?とミナが首を傾げる。
「そう、祈り。『魔族の祈り』ってのがあるんだよ。その祈りを今からキミ達にもやってもらうよ」
「それは」とルイン。「構いませんが・・・リフィア、あなたの言葉通りなのだとすれば、私達も人間の闇に呑まれてしまうのではないでしょうか?」
「大丈夫大丈夫、そこは心配しなくて良いよ。アタシがキミ達の血を飲む時に、それに対する結界をキミ達に刻むからさ」
「了解です」
シノはリフィアの言葉に頷いた。ミナはそれを見て、ちらり、とユーガを見た。ユーガは相変わらず俯いて手を握りしめている。
「とにかく、アタシに任せなって。さて・・・キミ達の血を頂くとしようかな。ほらほら、首筋出して」
リフィアのその言葉に、ユーガ達は首筋を出したーユーガはぼーっとしていて、ミナに言われるまで気付けなかったがー。
「・・・ふふ、いただきまーす・・・♪」
リフィアはまずユーガの首元に歯を立てた。ちう、という音と共に少し痛みがあったが、ユーガはそれを耐えた。次にルイン、ミナ、シノとリフィアは次々と血を吸っていく。最後にネロが首筋を出したが、なぜかリフィアは少し顔を赤らめて頬を掻いた。
「・・・何やってんだ?俺、ちょっと痛いの苦手なんだ。早くしてくれよ」
「あ、すまないね・・・すぐにやるよ」
変なヤツ、とネロは笑みを浮かべながらながら呟いた。リフィアは少し、むっ、とした顔を浮かべたようにネロには見えたが、すぐに首元にリフィアは噛みついたため顔が見えなくなった。知り合ってまだ間もないというのに、ここまでからかわれているのだ。今回もただ、からかわれているだけかもしれない。
「・・・よし、終わったよ」
「さんきゅ」
ネロはリフィアに礼を言ってユーガを振り向いた。
「ユーガ・・・元気出せよ。お前が元気が無くなっちまったら俺達も調子崩れるっての」
「・・・うん・・・」
そんな風にユーガと話すネロを見ながら、リフィアは再び顔を赤らめて口元を隠して、
「・・・まったく、何でキミ達ガイア組はそんなに無防備なんだい・・・こっちが意識しちゃうでしょうが・・・」
と呟いた。ルインはそれを見て、何か含みのある笑みを浮かべた。
「・・・なるほど、ね・・・」
ルインが呟いた瞬間。ーヒュン、という音と共に槍が鋭く突き出され、ルインは咄嗟に後ろに飛んでそれを避けた。
「!」
「・・・ここにいたか」
「その声は・・・‼︎」
ネロが一歩前に出て、声の主を見た。
「フルーヴ・・・‼︎」
「兄貴・・・!」
フルーヴは槍を右手に持ち、ユーガ達を一瞥して、ユーガを指で差した。
「・・・どうだ?信じていた『絆』が打ち滅ぼされた感覚は」
「・・・!」
「仲間を信じた結果がこれだ。・・・わかっただろう?これがお前の運命だ。初めから見えていた結末だ」
フルーヴはユーガにゆっくりと槍を向けた。それは、まるでユーガの心を映し出すようにユーガの瞳を反射していた。その眼には、はっきりと苦悩が見てとれた。
「・・・俺・・・は・・・」
「・・・結末?」
ユーガが呟いたその時、ネロがどこか怒りを見せるように言った。
「・・・いいや、結末じゃねぇ。・・・ユーガにとっても俺達にとってもな・・・、これは終わりじゃない。新しい『始まり』だ」
「・・・ネロ・・・」
「お前が勝手にユーガの生き方を決めるなよ。お前はユーガの兄かもしれないが・・・ユーガの人生はユーガの物だ。ユーガがどう生きて、その結果がどうなったとしても俺達はそれを受け入れる」
「・・・それで命を落とす事もあるぞ」
フルーヴは声を低くし、ネロを睨んだ。ああ、とネロもまた、フルーヴを睨む。
「それでもだよ。それに、そんな簡単に死ぬほど俺達は弱くねえしな。・・・そうやって、仲間を信じる事こそが『絆を信じる』って事なんじゃねぇのか?」
「・・・!」
ユーガはネロをじっと見た。ネロは首を左後ろのユーガに向け、にっ、と笑みを浮かべた。
「・・・どうやら、お前達と僕では生涯理解し合う事はできないようだな」
「ああ、わかってもらわなくて結構だね。俺が選んだ道だからな。それに、お前に理解されても気味が悪いんだ」
「・・・ユーガ」とルインがユーガを呼ぶ。「ここは下がっていなさい」
え、とユーガは剣に手をかける。
「俺も戦う・・・!」
「ユーガ。私達に任せてください」
そう言って、ルインはユーガの肩を押した。ユーガはそれ以上何も言えず、口を閉じた。
「リフィア!時間を稼いでいる間に、転送魔法陣の展開を!」
「了解‼︎」
フルーヴはそれを聞いて、リフィアに槍の狙いを定めた。
「・・・お前達をサキュバスの村に行かせるわけにはいかない」
ぐっ、と足に力を込め、フルーヴはリフィアに向けて槍を突き出そうとしてー、金属音が、響いた。姿勢を崩しかけたフルーヴは、舌を打って一度下がる。その視線の先には、剣で槍を弾いたネロが立っていた。
「悪いな、仲間に手出しはさせたくねぇんだ」
「ネロ君・・・」
リフィアが魔法陣を展開しながら、呟いた。それらを見て、ユーガは手を握った。
(何やってんだ、俺・・・)
まったく情けない。トビがいなければ何もできない、と公にしているようなものだ。しかし、それでもー。
(くそっ・・・)
ユーガは動けなかった。仲間を助けたい。その思いはあるのに、また否定される事がー。また思いの一方通行になる気がして、動く事ができなかった。ー怖かったのだった。ルインに、下がってろ、と言われたのも足手まといだからだろう、と納得できる。なぜなら、事実として今の自分は足手まといだからだ、と自覚できるからだ。『絆を信じる』。その言葉はユーガのモットーとして今まで大切にしていた言葉だ。しかし、今はー。
「安息に眠りし『魔族』の息吹よ、今ここに道を示さん・・・」
リフィアの言葉が終わると同時に、彼女の足元に魔法陣が展開されていく。あれが、リフィアの言っていた転送魔法陣なのだろう、とユーガはわかった。
「できた!」
「ナイスだ、リフィア!皆、魔法陣に飛び込め!」
ネロの言葉に頷き、仲間達は踵を返して魔法陣に飛び込んだ。もちろん、ユーガも。向かってくるフルーヴを眼に入れながら、リフィアの説明のもとで祈りを捧げた。そして、フルーヴの槍が突き出される刹那、転送魔法陣が輝きを増し、ユーガ達は光に包まれた。そして次の瞬間には、ユーガ達は見慣れぬ洞窟のような場所に立っていたのだった。
転送魔法陣が消え、フルーヴは舌を打った。一瞬前までそこにいたユーガ達は消え、辺りにはユーガ達と戦った痕跡だけが残っていた。
「・・・まぁ、いいさ」
フルーヴはそう言って、踵を返す。
「・・・『翼の片割れ』は・・・もうこっちの好きにできるんだからな」
ニヤリ、とフルーヴは微かに笑みを浮かべる。踵を返し、出口へと向かう。その紅の瞳が怪しく光り、その場には立ち去るフルーヴの足音だけが残った。
~トビサイド~
「トビ様、お帰りなさいませ」
シレーフォの港に船を着け、ようやく陸に上がる事ができたトビを待っていたのは、シレーフォの兵の一人のそんな言葉だった。その兵士は、おや、と辺りを見渡す。
「トビ様、確かあのガイアの輩と行動していたのでは・・・?」
「・・・黙れ」
トビは苛立ちを隠さずに言った。その声に恐怖を覚えたのか、兵士は小さく返事をしてその場を立ち去った。まったく、ユーガが何だと言うのだ。なぜ、ユーガと共に行動している事が定着しているのか。
「・・・ちっ」
トビが舌を打ち、足を踏み出した瞬間。何か殺気を感じ、咄嗟に体を後ろに逸らす。その僅か数センチ上を、氷の弾丸が掠めた。トビは後ろに体を逸らした反動で後ろへバック宙で飛び、その魔法が打ち出された方向へ眼を向けた。
「・・・てめぇ・・・、キアルか・・・!」
「・・・レードニア以来ですね。あなたとユーガ様が別離してくれているので、私達にとっては好都合になりましたよ」
「お褒めいただきどーも。・・・そういうわりに、お前一人かよ。舐められたもんだな」
「・・・スウォー様がお呼びです。あなたには同行していただきたいと考えているのですが」
「はっ、やだね。俺はもう早く帰りたいんだよ。めんどくせぇ」
トビはそう言ってキアルに背を向けた。それでも、警戒は解かずに。
「・・・そうですか。でしたら、力尽くでも」
「・・・だりぃな」
トビはそう言いながら、太ももから銃を取り出した。ーが、その直後。何かの気配を感じ、ハッと後ろを振り向くとそこにはミヨジネアの兵がトビの背後に立っていた。やばい、と思っても遅く、振りかざされていた剣の柄で頭を殴られた。
「がっ・・・⁉︎」
「・・・油断しましたね。あなた相手に一人で来るわけがないでしょう?」
「・・・て、てめ、ぇ・・・」
トビはそう呟いて、激しい目眩に襲われた。その目眩と意識が遠くなる感覚に耐えきれず、トビは膝から崩れ落ちた。
「・・・ゼロニウスへ連れて行きなさい」
「はっ」
倒れたトビをキアルは見下し、ミヨジネア兵にそう命じた。そして、辺りを見渡す。何事かと人々が集まり始め、騒動が起きかねない。
「・・・急ぎなさい。行きますよ」
幸いにもまだ目撃者はいなかったため、キアルは急いでトビの乗って来た船に乗り込んだ。トビを担いだ兵士も乗り込んだのを確認して、船は出発した。船の操作を兵士に任せ、船の中のベッドに寝かされているトビを見つめてキアルは笑みを浮かべた。
「『片翼をもがれた鳥』は・・・翼が二つ揃わないと飛ぶ事はできないんですよ、トビ様・・・」
その声は恐ろしく低く、聞いた者を凍らせるのではないか、と思う程に感情がこもっていなかった。
~ユーガサイド~
「・・・ここは・・・?」
ユーガ達は辺りを見渡し、呟く。洞窟の中には、ガイアでは見た事がない鉱石や怪しげな石も混じっている。
「着いたよ。ここがサキュバスの村に続く通路、『アルノウズロード』。この先に進むと、サキュバスの村の『アルノウズ』があるよ」
「アルノウズ・・・?聞いた事ないが、ここはグリアリーフじゃないのか?」
ネロの問いにリフィアは、うーん、と唸った。
「・・・グリアリーフでもあり、そうでもない、と言うか・・・」
「・・・どういう事だ・・・?」
「まぁ」とミナが微笑んだ。「そのアルノウズというところに行けば何かわかるかもしれませんよ?」
「・・・私も、アルノウズに行く事を・・・推奨します」
「ユーガ」とネロが呼ぶ。「アルノウズに行こう。ガイアの人達の事を調べなきゃいけねえだろ?」
「う、うん・・・そうだな・・・」
ユーガは頷いたが、気分は変わらず沈んでいた。フルーヴとの戦いの時、ユーガは動けなかった。その事が、ユーガの心を激しく沈ませた。
(そんな事で・・・俺は仲間を助けられないのか・・・俺が信じてた『絆』って・・・こんなに生半可だったのか・・・)
今まで、散々言ってきた言葉。それが、生半可だった事に気付いた。気づいてしまった。それを見て、ネロが嘆息する。
「ユーガ・・・お前なぁ、トビに色々言われて、気持ちはわかるけどよ・・・」
ネロの言葉に、ユーガはかっとなった。気持ちがわかるー?
「何がわかるんだ・・・?今まで信じてきた物を否定された、俺の気持ちが・・・ネロにわかるのか⁉︎なら、教えてくれよ・・・!俺はどうすればいいんだよ、ネロッ‼︎」
ユーガは叫んだ後、ハッとして後悔した。しまった。ネロに当たっても仕方ないのに、怒りに身を任せてネロを傷付けてしまった。
「・・・ユーガ・・・」
ネロのその呟きに、ユーガは泣きたくなった。ー自分の思いを、結局押し付けている事になっているじゃないか。これでは、軽蔑されて見捨てられても当然だー。ユーガは罵倒の言葉を受け止める覚悟を決め、ネロの方に顔を上げた。ーと。ネロが、ユーガの頭に手を置いた。それは、優しい感情の籠った、温かな手で。
「・・・やっと自分の思いを言ったな、この野郎が」
「・・・え」
「それが聞きたかったんだよ。お前が今、何をしたいのか。そして、俺はその事に対して答えてやれる」
ネロはユーガの頭に置いていた手を今度はユーガの肩に置き、ユーガをまっすぐ見つめた。
「どうすればいいのか、なんて簡単な話だ。お前がどうしたいのかー、それだけじゃないのか?」
「ええ」とルインもネロの横で頷く。「ユーガ。あなたの『仲間を信じる』という思いは・・・トビに否定された事で崩れてしまうのですか?辛いのはわかります。しかし・・・私はこのまま、ユーガが落ち込んでいるのを黙って見ている程薄情ではありませんよ」
そうです、とミナも頷く。
「トビさんも、何か事情があるのかもしれません。もう一度、話しましょう。トビさんと、しっかりと。それこそが、『仲間』になる第一歩なのではないでしょうか?」
「私も同意します。・・・あなたは仲間の為なら諦めないのではありませんでしたか?ガイアであなたはこう言ったと聞きましたよ。『弱いからこそ仲間や絆を信じて、助け合いたいと思う』と」
シノもユーガに向かって頷く。それを黙って見ていたリフィアも、また頷いた。
「アタシもさ、ユーガ君達とはまだ知り合って間もないけど・・・キミが仲間を強く信じてるのはわかったよ。けど・・・一度仲間にフラれたからって、全てが終わりみたいな顔しないの。そんなに離れたくないなら、話してみなよ。トビ君と」
「・・・どうだ」とネロはユーガの顔をしっかりと、まっすぐ見つめた。「こんなに、お前には仲間がいる。たった五人かもしれないけど、少なくともお前を理解しようとしてる。お前を助けようとしてんだぜ、ユーガ。・・・いや、五人どころじゃないかもしれない。お前の仲間はたくさんいるんだ。だったら、あの皮肉野郎もこっちの世界に引き入れちまおうぜ。俺もあの野郎に、ちっと文句を言わないと気が済まないしな」
「・・・皆・・・」
「トビもきっと、しっかり話せばあなたを仲間として認めてくれますよ。彼も鬼ではないでしょうし」
ルインも頷いて少し微笑みながら言った。ユーガは涙が溢れそうになったが、ぐっ、と溢れかけた涙を袖で拭った。そうだった。ネロも、ルインも、ミナも、シノも、リフィアも、ートビも。皆、自分の事を少なからず信用してくれていた。ネロはユーガの幼馴染として支えてくれた。ルインは色々な知識と多彩な魔法で助けてくれた。ミナはどんな時でも側にいてくれて、守りたい存在で、支えてくれた。シノは冷淡だが、その性格に何度も助けられてきた。リフィアは・・・まだあまり関わりはないけど。そして、トビは。トビは冷たくあしらっても、最終的には助けてくれた。どんなに辛い事でも、文句は言うが助けてくれた。皆は、自分の為に色々な事をしてくれた。くれたじゃないか。ユーガは自嘲するような笑みを浮かべて、口を開いた。
「・・・そうか・・・」
何をしているんだ、自分は。今自分がやらなきゃいけない事は、トビに冷たくされたから落ち込む事か?そうじゃないだろう。何度も仲間を信じる事、ー『絆を信じて前を向く』事が、自分の数少ない良いところだった筈だ。落ち込んでいる暇は、ないのだ。世界の危機も救わなきゃいけないのだから。それに何より、『絆』とは何か、なんて誰かに答えを求めるものではない。
「・・・ごめん。俺、弱かった」
ユーガは顔を上げ、前に立つ親友をーネロを見つめた。ネロはユーガの瞳に光が戻っているのを見て、小さく頷いた。ユーガも頷き、皆を見渡した。
「・・・皆も、ごめん」
「いえ」とミナ。「ユーガさんが辛い事も理解できますから・・・」
「それでもだよ。・・・ごめん」
ユーガは仲間達全員に頭を下げた。リフィアはそれを見て、ぷっ、と笑った。
「ユーガ君、キミは謝る癖があるのかい?」
「確かにな」とネロも笑う。「お前、どうでも良いとこで卑屈になったり謝ったりするよな」
「そ、そうかな・・・?」
ユーガはそう言って頭を掻いて、少し笑った。ーいや、笑えた、と言う方が正しいかもしれない。やっと、笑顔を取り戻せた、とミナとネロは安堵した。
「・・・なぁ、皆」
ユーガが顔を引き締め、口を開いた。全員が、ユーガに顔を向ける。
「・・・俺、自分の思いを押し付ける事がこれから先もあるかもしれない。けど、ちゃんと気をつけるようにするけど・・・もし、またそういう事があったら指摘してくれないかな・・・?」
ユーガはその言葉に、決意を込めた。今まで信じてきた『一方通行の絆』ではなく、今度こそ。今度こそ、互いが信頼し合えるような絆を。思いが一方通行にならないような、『本当の絆』を信じてみせる。仲間達が頷いたのを確認して、ユーガは改めて緋色の眼を全員に向けて、言った。
「・・・俺は、仲間を・・・絆を、今度こそ信じてみせる!」
今はここにいないトビの事を思いながら、ユーガは握った右手を前に突き出した。
~トビサイド~
「く・・・」
トビは唸って体を起こし、眼の前の状況に驚いた。手は手錠で体の後ろに拘束され、牢獄に囚われているようだった。頭を上げようとすると、シレーフォで殴られた時の影響であろう頭痛がトビを襲い、顔を顰めた。
「・・・ちっ、まだ面倒に巻き込まれるのかよ・・・」
トビは小さく呟いて、手錠を外そうとしたが外れず、魔法を使おうとしても発動できなかった。ーと、その時。足音が近付いてくる音が響いてきて、それはトビの牢屋の前で止まった。その顔は、トビがよく見慣れた顔だった。
「・・・スウォー・・・!」
「よぉ、『蒼眼』サマ。気分はどうだ?」
「最悪に決まってんだろ。ふざけんな」
トビは冷たく言い放ち、顔を背けた。ふっ、とスウォーは笑い、口を開く。
「ここはゼロニウスだ。ちょっとお前と話がしたくてな」
「俺はしたくねぇ。ここから出せ」
「おいおい、気が短えよ。・・・お前を呼んだのは他でもねえ。俺と共に、この世界を模造品(クローン)の世界にする事を手伝え。そうすりゃ、お前はその世界で生かしててやるよ」
「断る」
「・・・なぜ?オリジナルとはもう別離してんだ。お前が俺と敵対する必要はないと思うが」
「俺は面倒事は嫌いなんだよ。それに、お前の計画で作り出された世界とか気味が悪ぃんだ」
トビはそう言って頭痛を堪えてスウォーを見た。スウォーは、やれやれ、と頭を振った。
「・・・そうか。なら、お前は三日後に死刑となる」
「・・・なっ・・・⁉︎」
トビの眼が見開かれ、トビは歯を食いしばった。
「・・・ざけんなよ?無理やり連れて来といて、いきなり死刑だと?」
「ふざけてなんてねぇよ。お前は『マキラサマに反逆した罪』で見せしめとして死刑にする。ゼロニウスがどういう街かは・・・知ってんだろ?それとも、俺達に協力するか?」
「・・・てめぇ・・・」
「・・・確かに、いきなり決めるのは無下な話だな。なら三日猶予をやる。その三日間で決めるんだな。俺達に下るか、死ぬかを」
スウォーはそう言い残し、牢屋の前から去った。一人残されたトビは、何でこんな事に、と舌を打った。死刑だと?冗談じゃねぇ。
「・・・あの野郎・・・」
スウォーの顔を思い出しながら、トビは唇を噛んだ。まったく、面倒な事ばかり巻き込まれる。
(・・・現段階では逃げる手段は無い、か・・・くそが・・・)
逃げる手段は無い。そう、現段階では。しかし、魔法が使えなくても外に出る事ができれば良い。そうすれば、もしかしたら逃げる事はできるかもしれない。先程、奴は『見せしめ』と言っていた。とすれば、公開処刑の筈だ。つまり、外には出られる。狙うとすれば、そこしかない。トビは計画を密かに進めた。ーできれば良いように使える駒が欲しかったが、仕方ない。一人でやるしかない。
(・・・今まで一人でやってきたんだ。・・・やるしかねぇ)
トビは決意を固め、三日後の計画を淡々と立て続けていった。
制下の門の操作盤の前で、一人離れたところで座って黙るユーガを見てネロは隣に座るルインにそう呟いた。
「ここまで来て、いきなり抜けた挙句自分には関係ねぇって・・・流石にどうかしてるぜ!ったく・・・!」
しかし、とルインは顎に手を合わせた。
「トビの言わんとしている事はわからなくはありません。トビが受けていたログシオン陛下からの命令は確かにあの話だけでしたし」
「そりゃ、そうかもしれないけどよ・・・あの言い方はないだろうが・・・くそっ、トビの奴・・・あいつとはちゃんと話をつけたいところだぜ」
「・・・そうですね。・・・しかし、本当にトビに会いたいのは、彼のはずですよ」
「・・・それは・・・そうだな・・・」
ネロとルインは同時にユーガを見た。
(・・・トビ・・・)
ユーガは先程のトビの言葉を繰り返し、何度も何度も思い返していた。
『目的は果たされた今、お前達と一緒にいてやる義理はねえんだよ。挙句、お前の考えやらなんやらを押し付けられ、『絆』とかいう物を信じさせられて・・・もううんざりなんだよ。・・・わかったか。俺達の・・・道は、違えていたんだ』
その言葉が、ユーガの心を強く締め付けていた。自分の信じていた絆とは、他人に自分の考えを押し付けるだけの簡単な物だったのか。仲間を信じると言っておきながらも、結局大切なのは『自分自身』だったのかもしれない。今なら、そうだとわかる。ユーガは自分に強い嫌悪感を覚えた。
(何が・・・『トビに認めてもらいたい』だよ・・・。こんなんじゃ、認めてもらうどころじゃねーだろ・・・)
ユーガはさらに自分の心が暗く沈んでいくのを感じながら、小さく息を吐いた。
「ねーねー、ネロ君」
その様子を見ていたネロに、リフィアがいつもと変わらない明るい声で声をかけた。
「・・・何だよ?」
「サキュバスの村、行くの?行くならすぐに準備するけど」
「・・・もうちょい待ってくれ。ユーガが落ち着くまでさ」
「それは構わないけど・・・急がなくていいの?」
「・・・どういう事だ?」
ネロは怪訝そうにリフィアに尋ねた。
「アタシがサキュバスの村で噂を聞いたって話はしたよね?多分サキュバスの村の中で捕まってるならまだ良いけど、村の外に出たらまずいんだよね」
「まずいって・・・何が起こるんだ」
「人間の闇・・・負の感情に呑まれるの。そうすると、自分をコントロールできなくなる。理性を保っていられなくなるの」
「何だって⁉︎」
「だから、行くなら急いだ方がいいの。ユーガ君には悪いけどね」
ネロは考えた。今あの状態のユーガを連れて行って大丈夫なのだろうか・・・?そう思っていた、その時。
「・・・俺なら、大丈夫」
その声に振り向くと、ユーガがーその眼には光が無いがー立っていた。横にはミナも立っている。
「ガイアの人達がやばいかもなんだろ・・・?なら、俺の事なんかいいから行こう」
「ユーガ、だけど・・・」
「ネロ、良いから・・・行こうぜ」
ユーガのその声に、ネロは頷く事しかできなかった。ユーガの暗い瞳に、気付かずにはいられなかったのだった。
「ん、それじゃ行き方を説明するね」
「頼む」
リフィアの説明をユーガが聞いている時、ミナがネロに近付いて俯いた。
「ユーガさん・・・大丈夫でしょうか・・・」
ミナの言葉に、そうですね、とルインも頷く。
「・・・これまでの『生き方』を否定された事は・・・かなり大きな傷となっているのでしょうね・・・」
「・・・ユーガ・・・」
ネロはリフィアの説明を受けて考え事をしているユーガの背中を見つめた。その背中には、隠しても隠しきれない悲しみが溢れていた。
~トビサイド~
「・・・あー、うぜぇ」
トビは、ミヨジネアの小舟ー恐らくマキラ教徒信者の物だろうーを使って、シレーフォまでの海路を進みながら一人呟いた。そして、先程の事を思い返す。なぜ、あそこまで強い言葉となって自分の口から出たのか。なぜ、ユーガに対してあんな事を言ったのか。後悔はしていないが、『何か』が胸の辺りでもやもやとしている感覚があった。何なんだ、とトビは舌を打つ。
「・・・そもそも、何で敵国の人間を容易く信じられんだよ・・・」
『絆を信じる』。それは、ユーガが口癖のように言っていた言葉だった。ユーガは、自分を信じていた。ただ、それはトビにとって価値観を押し付けられていたほか無かった。
「・・・あいつが自分の考えを俺に押し付けてくるからだ。俺は・・・」
トビは呟いて、ユーガの笑顔を思い浮かんだがそれを無理やり掻き消して眼を閉じた。しかし、それでも胸の辺りがもやもやとする感覚は消える事はなかった。
~ユーガサイド~
「と、いうわけ」
「・・・よくわからなかったんだけど・・・?」
ユーガが首を傾げるとリフィアは、えー、と口をあんぐりと開けた。
「結構わかりやすく説明したつもりだったんだけどなぁ・・・」
「・・・ごめん。・・・はは、こんな頭悪いから俺・・・トビに愛想尽かされるのかな・・・」
「あーあー、謝らなくても良いよ。何もそんなに責めてないでしょ?」
「う、うん・・・ごめん・・・」
「・・・うーん、ユーガ君・・・まぁいいや。もう一度説明するよ。もの凄く簡単に説明すると、今ここにいるキミ達の血を吸って、それを糧にアタシが転送魔法陣を展開する。そしたら、キミ達は魔法陣の中に入って祈りを捧げるの」
祈り?とミナが首を傾げる。
「そう、祈り。『魔族の祈り』ってのがあるんだよ。その祈りを今からキミ達にもやってもらうよ」
「それは」とルイン。「構いませんが・・・リフィア、あなたの言葉通りなのだとすれば、私達も人間の闇に呑まれてしまうのではないでしょうか?」
「大丈夫大丈夫、そこは心配しなくて良いよ。アタシがキミ達の血を飲む時に、それに対する結界をキミ達に刻むからさ」
「了解です」
シノはリフィアの言葉に頷いた。ミナはそれを見て、ちらり、とユーガを見た。ユーガは相変わらず俯いて手を握りしめている。
「とにかく、アタシに任せなって。さて・・・キミ達の血を頂くとしようかな。ほらほら、首筋出して」
リフィアのその言葉に、ユーガ達は首筋を出したーユーガはぼーっとしていて、ミナに言われるまで気付けなかったがー。
「・・・ふふ、いただきまーす・・・♪」
リフィアはまずユーガの首元に歯を立てた。ちう、という音と共に少し痛みがあったが、ユーガはそれを耐えた。次にルイン、ミナ、シノとリフィアは次々と血を吸っていく。最後にネロが首筋を出したが、なぜかリフィアは少し顔を赤らめて頬を掻いた。
「・・・何やってんだ?俺、ちょっと痛いの苦手なんだ。早くしてくれよ」
「あ、すまないね・・・すぐにやるよ」
変なヤツ、とネロは笑みを浮かべながらながら呟いた。リフィアは少し、むっ、とした顔を浮かべたようにネロには見えたが、すぐに首元にリフィアは噛みついたため顔が見えなくなった。知り合ってまだ間もないというのに、ここまでからかわれているのだ。今回もただ、からかわれているだけかもしれない。
「・・・よし、終わったよ」
「さんきゅ」
ネロはリフィアに礼を言ってユーガを振り向いた。
「ユーガ・・・元気出せよ。お前が元気が無くなっちまったら俺達も調子崩れるっての」
「・・・うん・・・」
そんな風にユーガと話すネロを見ながら、リフィアは再び顔を赤らめて口元を隠して、
「・・・まったく、何でキミ達ガイア組はそんなに無防備なんだい・・・こっちが意識しちゃうでしょうが・・・」
と呟いた。ルインはそれを見て、何か含みのある笑みを浮かべた。
「・・・なるほど、ね・・・」
ルインが呟いた瞬間。ーヒュン、という音と共に槍が鋭く突き出され、ルインは咄嗟に後ろに飛んでそれを避けた。
「!」
「・・・ここにいたか」
「その声は・・・‼︎」
ネロが一歩前に出て、声の主を見た。
「フルーヴ・・・‼︎」
「兄貴・・・!」
フルーヴは槍を右手に持ち、ユーガ達を一瞥して、ユーガを指で差した。
「・・・どうだ?信じていた『絆』が打ち滅ぼされた感覚は」
「・・・!」
「仲間を信じた結果がこれだ。・・・わかっただろう?これがお前の運命だ。初めから見えていた結末だ」
フルーヴはユーガにゆっくりと槍を向けた。それは、まるでユーガの心を映し出すようにユーガの瞳を反射していた。その眼には、はっきりと苦悩が見てとれた。
「・・・俺・・・は・・・」
「・・・結末?」
ユーガが呟いたその時、ネロがどこか怒りを見せるように言った。
「・・・いいや、結末じゃねぇ。・・・ユーガにとっても俺達にとってもな・・・、これは終わりじゃない。新しい『始まり』だ」
「・・・ネロ・・・」
「お前が勝手にユーガの生き方を決めるなよ。お前はユーガの兄かもしれないが・・・ユーガの人生はユーガの物だ。ユーガがどう生きて、その結果がどうなったとしても俺達はそれを受け入れる」
「・・・それで命を落とす事もあるぞ」
フルーヴは声を低くし、ネロを睨んだ。ああ、とネロもまた、フルーヴを睨む。
「それでもだよ。それに、そんな簡単に死ぬほど俺達は弱くねえしな。・・・そうやって、仲間を信じる事こそが『絆を信じる』って事なんじゃねぇのか?」
「・・・!」
ユーガはネロをじっと見た。ネロは首を左後ろのユーガに向け、にっ、と笑みを浮かべた。
「・・・どうやら、お前達と僕では生涯理解し合う事はできないようだな」
「ああ、わかってもらわなくて結構だね。俺が選んだ道だからな。それに、お前に理解されても気味が悪いんだ」
「・・・ユーガ」とルインがユーガを呼ぶ。「ここは下がっていなさい」
え、とユーガは剣に手をかける。
「俺も戦う・・・!」
「ユーガ。私達に任せてください」
そう言って、ルインはユーガの肩を押した。ユーガはそれ以上何も言えず、口を閉じた。
「リフィア!時間を稼いでいる間に、転送魔法陣の展開を!」
「了解‼︎」
フルーヴはそれを聞いて、リフィアに槍の狙いを定めた。
「・・・お前達をサキュバスの村に行かせるわけにはいかない」
ぐっ、と足に力を込め、フルーヴはリフィアに向けて槍を突き出そうとしてー、金属音が、響いた。姿勢を崩しかけたフルーヴは、舌を打って一度下がる。その視線の先には、剣で槍を弾いたネロが立っていた。
「悪いな、仲間に手出しはさせたくねぇんだ」
「ネロ君・・・」
リフィアが魔法陣を展開しながら、呟いた。それらを見て、ユーガは手を握った。
(何やってんだ、俺・・・)
まったく情けない。トビがいなければ何もできない、と公にしているようなものだ。しかし、それでもー。
(くそっ・・・)
ユーガは動けなかった。仲間を助けたい。その思いはあるのに、また否定される事がー。また思いの一方通行になる気がして、動く事ができなかった。ー怖かったのだった。ルインに、下がってろ、と言われたのも足手まといだからだろう、と納得できる。なぜなら、事実として今の自分は足手まといだからだ、と自覚できるからだ。『絆を信じる』。その言葉はユーガのモットーとして今まで大切にしていた言葉だ。しかし、今はー。
「安息に眠りし『魔族』の息吹よ、今ここに道を示さん・・・」
リフィアの言葉が終わると同時に、彼女の足元に魔法陣が展開されていく。あれが、リフィアの言っていた転送魔法陣なのだろう、とユーガはわかった。
「できた!」
「ナイスだ、リフィア!皆、魔法陣に飛び込め!」
ネロの言葉に頷き、仲間達は踵を返して魔法陣に飛び込んだ。もちろん、ユーガも。向かってくるフルーヴを眼に入れながら、リフィアの説明のもとで祈りを捧げた。そして、フルーヴの槍が突き出される刹那、転送魔法陣が輝きを増し、ユーガ達は光に包まれた。そして次の瞬間には、ユーガ達は見慣れぬ洞窟のような場所に立っていたのだった。
転送魔法陣が消え、フルーヴは舌を打った。一瞬前までそこにいたユーガ達は消え、辺りにはユーガ達と戦った痕跡だけが残っていた。
「・・・まぁ、いいさ」
フルーヴはそう言って、踵を返す。
「・・・『翼の片割れ』は・・・もうこっちの好きにできるんだからな」
ニヤリ、とフルーヴは微かに笑みを浮かべる。踵を返し、出口へと向かう。その紅の瞳が怪しく光り、その場には立ち去るフルーヴの足音だけが残った。
~トビサイド~
「トビ様、お帰りなさいませ」
シレーフォの港に船を着け、ようやく陸に上がる事ができたトビを待っていたのは、シレーフォの兵の一人のそんな言葉だった。その兵士は、おや、と辺りを見渡す。
「トビ様、確かあのガイアの輩と行動していたのでは・・・?」
「・・・黙れ」
トビは苛立ちを隠さずに言った。その声に恐怖を覚えたのか、兵士は小さく返事をしてその場を立ち去った。まったく、ユーガが何だと言うのだ。なぜ、ユーガと共に行動している事が定着しているのか。
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トビが舌を打ち、足を踏み出した瞬間。何か殺気を感じ、咄嗟に体を後ろに逸らす。その僅か数センチ上を、氷の弾丸が掠めた。トビは後ろに体を逸らした反動で後ろへバック宙で飛び、その魔法が打ち出された方向へ眼を向けた。
「・・・てめぇ・・・、キアルか・・・!」
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「お褒めいただきどーも。・・・そういうわりに、お前一人かよ。舐められたもんだな」
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トビはそう言ってキアルに背を向けた。それでも、警戒は解かずに。
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トビはそう言いながら、太ももから銃を取り出した。ーが、その直後。何かの気配を感じ、ハッと後ろを振り向くとそこにはミヨジネアの兵がトビの背後に立っていた。やばい、と思っても遅く、振りかざされていた剣の柄で頭を殴られた。
「がっ・・・⁉︎」
「・・・油断しましたね。あなた相手に一人で来るわけがないでしょう?」
「・・・て、てめ、ぇ・・・」
トビはそう呟いて、激しい目眩に襲われた。その目眩と意識が遠くなる感覚に耐えきれず、トビは膝から崩れ落ちた。
「・・・ゼロニウスへ連れて行きなさい」
「はっ」
倒れたトビをキアルは見下し、ミヨジネア兵にそう命じた。そして、辺りを見渡す。何事かと人々が集まり始め、騒動が起きかねない。
「・・・急ぎなさい。行きますよ」
幸いにもまだ目撃者はいなかったため、キアルは急いでトビの乗って来た船に乗り込んだ。トビを担いだ兵士も乗り込んだのを確認して、船は出発した。船の操作を兵士に任せ、船の中のベッドに寝かされているトビを見つめてキアルは笑みを浮かべた。
「『片翼をもがれた鳥』は・・・翼が二つ揃わないと飛ぶ事はできないんですよ、トビ様・・・」
その声は恐ろしく低く、聞いた者を凍らせるのではないか、と思う程に感情がこもっていなかった。
~ユーガサイド~
「・・・ここは・・・?」
ユーガ達は辺りを見渡し、呟く。洞窟の中には、ガイアでは見た事がない鉱石や怪しげな石も混じっている。
「着いたよ。ここがサキュバスの村に続く通路、『アルノウズロード』。この先に進むと、サキュバスの村の『アルノウズ』があるよ」
「アルノウズ・・・?聞いた事ないが、ここはグリアリーフじゃないのか?」
ネロの問いにリフィアは、うーん、と唸った。
「・・・グリアリーフでもあり、そうでもない、と言うか・・・」
「・・・どういう事だ・・・?」
「まぁ」とミナが微笑んだ。「そのアルノウズというところに行けば何かわかるかもしれませんよ?」
「・・・私も、アルノウズに行く事を・・・推奨します」
「ユーガ」とネロが呼ぶ。「アルノウズに行こう。ガイアの人達の事を調べなきゃいけねえだろ?」
「う、うん・・・そうだな・・・」
ユーガは頷いたが、気分は変わらず沈んでいた。フルーヴとの戦いの時、ユーガは動けなかった。その事が、ユーガの心を激しく沈ませた。
(そんな事で・・・俺は仲間を助けられないのか・・・俺が信じてた『絆』って・・・こんなに生半可だったのか・・・)
今まで、散々言ってきた言葉。それが、生半可だった事に気付いた。気づいてしまった。それを見て、ネロが嘆息する。
「ユーガ・・・お前なぁ、トビに色々言われて、気持ちはわかるけどよ・・・」
ネロの言葉に、ユーガはかっとなった。気持ちがわかるー?
「何がわかるんだ・・・?今まで信じてきた物を否定された、俺の気持ちが・・・ネロにわかるのか⁉︎なら、教えてくれよ・・・!俺はどうすればいいんだよ、ネロッ‼︎」
ユーガは叫んだ後、ハッとして後悔した。しまった。ネロに当たっても仕方ないのに、怒りに身を任せてネロを傷付けてしまった。
「・・・ユーガ・・・」
ネロのその呟きに、ユーガは泣きたくなった。ー自分の思いを、結局押し付けている事になっているじゃないか。これでは、軽蔑されて見捨てられても当然だー。ユーガは罵倒の言葉を受け止める覚悟を決め、ネロの方に顔を上げた。ーと。ネロが、ユーガの頭に手を置いた。それは、優しい感情の籠った、温かな手で。
「・・・やっと自分の思いを言ったな、この野郎が」
「・・・え」
「それが聞きたかったんだよ。お前が今、何をしたいのか。そして、俺はその事に対して答えてやれる」
ネロはユーガの頭に置いていた手を今度はユーガの肩に置き、ユーガをまっすぐ見つめた。
「どうすればいいのか、なんて簡単な話だ。お前がどうしたいのかー、それだけじゃないのか?」
「ええ」とルインもネロの横で頷く。「ユーガ。あなたの『仲間を信じる』という思いは・・・トビに否定された事で崩れてしまうのですか?辛いのはわかります。しかし・・・私はこのまま、ユーガが落ち込んでいるのを黙って見ている程薄情ではありませんよ」
そうです、とミナも頷く。
「トビさんも、何か事情があるのかもしれません。もう一度、話しましょう。トビさんと、しっかりと。それこそが、『仲間』になる第一歩なのではないでしょうか?」
「私も同意します。・・・あなたは仲間の為なら諦めないのではありませんでしたか?ガイアであなたはこう言ったと聞きましたよ。『弱いからこそ仲間や絆を信じて、助け合いたいと思う』と」
シノもユーガに向かって頷く。それを黙って見ていたリフィアも、また頷いた。
「アタシもさ、ユーガ君達とはまだ知り合って間もないけど・・・キミが仲間を強く信じてるのはわかったよ。けど・・・一度仲間にフラれたからって、全てが終わりみたいな顔しないの。そんなに離れたくないなら、話してみなよ。トビ君と」
「・・・どうだ」とネロはユーガの顔をしっかりと、まっすぐ見つめた。「こんなに、お前には仲間がいる。たった五人かもしれないけど、少なくともお前を理解しようとしてる。お前を助けようとしてんだぜ、ユーガ。・・・いや、五人どころじゃないかもしれない。お前の仲間はたくさんいるんだ。だったら、あの皮肉野郎もこっちの世界に引き入れちまおうぜ。俺もあの野郎に、ちっと文句を言わないと気が済まないしな」
「・・・皆・・・」
「トビもきっと、しっかり話せばあなたを仲間として認めてくれますよ。彼も鬼ではないでしょうし」
ルインも頷いて少し微笑みながら言った。ユーガは涙が溢れそうになったが、ぐっ、と溢れかけた涙を袖で拭った。そうだった。ネロも、ルインも、ミナも、シノも、リフィアも、ートビも。皆、自分の事を少なからず信用してくれていた。ネロはユーガの幼馴染として支えてくれた。ルインは色々な知識と多彩な魔法で助けてくれた。ミナはどんな時でも側にいてくれて、守りたい存在で、支えてくれた。シノは冷淡だが、その性格に何度も助けられてきた。リフィアは・・・まだあまり関わりはないけど。そして、トビは。トビは冷たくあしらっても、最終的には助けてくれた。どんなに辛い事でも、文句は言うが助けてくれた。皆は、自分の為に色々な事をしてくれた。くれたじゃないか。ユーガは自嘲するような笑みを浮かべて、口を開いた。
「・・・そうか・・・」
何をしているんだ、自分は。今自分がやらなきゃいけない事は、トビに冷たくされたから落ち込む事か?そうじゃないだろう。何度も仲間を信じる事、ー『絆を信じて前を向く』事が、自分の数少ない良いところだった筈だ。落ち込んでいる暇は、ないのだ。世界の危機も救わなきゃいけないのだから。それに何より、『絆』とは何か、なんて誰かに答えを求めるものではない。
「・・・ごめん。俺、弱かった」
ユーガは顔を上げ、前に立つ親友をーネロを見つめた。ネロはユーガの瞳に光が戻っているのを見て、小さく頷いた。ユーガも頷き、皆を見渡した。
「・・・皆も、ごめん」
「いえ」とミナ。「ユーガさんが辛い事も理解できますから・・・」
「それでもだよ。・・・ごめん」
ユーガは仲間達全員に頭を下げた。リフィアはそれを見て、ぷっ、と笑った。
「ユーガ君、キミは謝る癖があるのかい?」
「確かにな」とネロも笑う。「お前、どうでも良いとこで卑屈になったり謝ったりするよな」
「そ、そうかな・・・?」
ユーガはそう言って頭を掻いて、少し笑った。ーいや、笑えた、と言う方が正しいかもしれない。やっと、笑顔を取り戻せた、とミナとネロは安堵した。
「・・・なぁ、皆」
ユーガが顔を引き締め、口を開いた。全員が、ユーガに顔を向ける。
「・・・俺、自分の思いを押し付ける事がこれから先もあるかもしれない。けど、ちゃんと気をつけるようにするけど・・・もし、またそういう事があったら指摘してくれないかな・・・?」
ユーガはその言葉に、決意を込めた。今まで信じてきた『一方通行の絆』ではなく、今度こそ。今度こそ、互いが信頼し合えるような絆を。思いが一方通行にならないような、『本当の絆』を信じてみせる。仲間達が頷いたのを確認して、ユーガは改めて緋色の眼を全員に向けて、言った。
「・・・俺は、仲間を・・・絆を、今度こそ信じてみせる!」
今はここにいないトビの事を思いながら、ユーガは握った右手を前に突き出した。
~トビサイド~
「く・・・」
トビは唸って体を起こし、眼の前の状況に驚いた。手は手錠で体の後ろに拘束され、牢獄に囚われているようだった。頭を上げようとすると、シレーフォで殴られた時の影響であろう頭痛がトビを襲い、顔を顰めた。
「・・・ちっ、まだ面倒に巻き込まれるのかよ・・・」
トビは小さく呟いて、手錠を外そうとしたが外れず、魔法を使おうとしても発動できなかった。ーと、その時。足音が近付いてくる音が響いてきて、それはトビの牢屋の前で止まった。その顔は、トビがよく見慣れた顔だった。
「・・・スウォー・・・!」
「よぉ、『蒼眼』サマ。気分はどうだ?」
「最悪に決まってんだろ。ふざけんな」
トビは冷たく言い放ち、顔を背けた。ふっ、とスウォーは笑い、口を開く。
「ここはゼロニウスだ。ちょっとお前と話がしたくてな」
「俺はしたくねぇ。ここから出せ」
「おいおい、気が短えよ。・・・お前を呼んだのは他でもねえ。俺と共に、この世界を模造品(クローン)の世界にする事を手伝え。そうすりゃ、お前はその世界で生かしててやるよ」
「断る」
「・・・なぜ?オリジナルとはもう別離してんだ。お前が俺と敵対する必要はないと思うが」
「俺は面倒事は嫌いなんだよ。それに、お前の計画で作り出された世界とか気味が悪ぃんだ」
トビはそう言って頭痛を堪えてスウォーを見た。スウォーは、やれやれ、と頭を振った。
「・・・そうか。なら、お前は三日後に死刑となる」
「・・・なっ・・・⁉︎」
トビの眼が見開かれ、トビは歯を食いしばった。
「・・・ざけんなよ?無理やり連れて来といて、いきなり死刑だと?」
「ふざけてなんてねぇよ。お前は『マキラサマに反逆した罪』で見せしめとして死刑にする。ゼロニウスがどういう街かは・・・知ってんだろ?それとも、俺達に協力するか?」
「・・・てめぇ・・・」
「・・・確かに、いきなり決めるのは無下な話だな。なら三日猶予をやる。その三日間で決めるんだな。俺達に下るか、死ぬかを」
スウォーはそう言い残し、牢屋の前から去った。一人残されたトビは、何でこんな事に、と舌を打った。死刑だと?冗談じゃねぇ。
「・・・あの野郎・・・」
スウォーの顔を思い出しながら、トビは唇を噛んだ。まったく、面倒な事ばかり巻き込まれる。
(・・・現段階では逃げる手段は無い、か・・・くそが・・・)
逃げる手段は無い。そう、現段階では。しかし、魔法が使えなくても外に出る事ができれば良い。そうすれば、もしかしたら逃げる事はできるかもしれない。先程、奴は『見せしめ』と言っていた。とすれば、公開処刑の筈だ。つまり、外には出られる。狙うとすれば、そこしかない。トビは計画を密かに進めた。ーできれば良いように使える駒が欲しかったが、仕方ない。一人でやるしかない。
(・・・今まで一人でやってきたんだ。・・・やるしかねぇ)
トビは決意を固め、三日後の計画を淡々と立て続けていった。
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