パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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最終章

第316話 腕試し 其の二

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「倒せた……」

 剣を握ったまま目を丸くしているジャンを促して、素早く本当に死んでいるかを確認する──よし、しっかりと脈も呼吸も止まっている。

「たしかこのクエストは素材を持ち帰らないといけないから──やっぱり丸ごと運ぶ感じ?」
「解体できる人がいなければそうするしかないよね……あれから解体できるようになった人いる?」

 エミルの言葉に返事はなく、丸ごとギルドまで持っていくことが確定した。

「素材クエストでこんな大物を狩ったの初めてじゃない? これ運ぶのは結構大変よ」

 マリーが倒れたコボルトをまじまじと眺めながら言う。パーティを抜けたときはちょうどDランクのクエストに行き始めた頃だったし、記憶が正しければコボルトのクエストは受けたことがなかったはずだ。

「コボルトはいつも一人で担いでたし、俺が持っていくよ」
「コルネ一人に任せるのは悪いから、私らも持つよ。こういうときはどこを持てばいいの?」

 不意に飛んできたマリーの質問に詰まってしまう。

 考えてみれば、倒したモンスターを丸ごとギルドまで運ぶときって普通のパーティはどうしているんだろう。俺はいつも一人で担いでいたから今まで考えもしなかった。

「いつも一人で運んでたから分かんないや」
「まあそれもそうか……じゃ、両手両足で四人、残った一人は頭を支えるってことで、一回担いでみる?」

 流れ出した血を水魔法でサッと落としてから、風魔法で軽く乾かす。水滴で手が滑らないことを確認した後、マリーの提案通りの位置につき全員で一気に力を入れると、案外すんなりとコボルトの体は宙に浮く。

 持つ位置を微調整して安定させると、そのままぺちゃくちゃと喋りながらギルドを目指して進む。

 こうやってパーティメンバーでモンスターを運ぶのはとても冒険者らしい気がするなあ、なんてぼんやり思いつつジャンの方を見ると、コボルト頭を支えていた彼は非常に満足げな表情を浮かべていた。
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