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最終章
第315話 腕試し
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「それにしてもいきなりDランクとはなかなか思い切ったことを……」
討伐に向かう途中でエミルが口を開く。討伐対象はコボルトで、村の近くに棲む数少ないDランク相当のモンスターだ。
「最近、稽古をつけてもらっている騎士から『Dランクパーティの剣士くらいの実力』って言われたから──本当にそうなのか確かめようと思って」
もしその騎士の言っていることが本当なら、かなりすごいんじゃないか。この歳でDランクパーティをやっている人間はそうそういまい。ただまあ、やる気を出させるためかそれとも取り入るためかは分からないが、お世辞を言っているだけという可能性も十分ある。
「この面子ならもし実力が及ばなかったとしても死ぬことはないし、実力を知るなら早い方がいいからさ」
ジャンの達観したような発言に皆目を丸くする。普通は自分の実力を知るのは嫌がるものだ──知りさえしなければ無限に夢が見られるのだから。それなのに、こんなにも躊躇なく限界を知ろうとするとは──
「今日ここでDランクのモンスターを倒せるか分かれば、明日はクエストを選ぶときに実力に見合うかどうかを気にせずに済む」
ああ、そういう理由かとも思ったが、それでも実力をすぱっと認められるのはすごいことだと思った。
そうして喋りながら木々の間を歩いていると、コボルトらしき影が遠くの方に見えたので、隠れようという合図を無言でする。
全員がサッとしゃがんだのを確認してから、ひそひそ声で告げる。
「手はず通りに」
しっかりと頷き合うと、まずジャンとエミルがコボルトに向かって走り出す。もちろんコボルトもすぐにそれに気付き、逃げようとする、が──
「ウォン!?」
その前に俺が素早く移動してコボルトの退路を塞ぐ。コボルトは逃げられないと思ったのか、数の少ない俺の方に向かってくる。
俺が倒してしまうのでは意味がないので、サッと退いてエミルたちの後ろに回り込む。追いつけないと判断して留まったところにジャンとエミルがコボルトのもとへ到着し、ジャンの剣がコボルトを襲う。
「──ハッ!」
ジャンの剣は想像よりは速かったが、さすがはDランクといったところかコボルトもしっかり避けていた。
攻撃に転じたコボルトからジャンを盾で守った後、エミルはわずかに横にずれてジャンにチャンスを作る。
ジャンはそれを逃さず、斜め下からコボルトめがけて斬り上げる。素早い剣の切先はコボルトの腹部を捉え、そこから血が飛び散る。
痛みに怯んだコボルトに続けざまに上から太刀を浴びせると、今度は肩から胸にかけて大きな傷ができ、鮮血が噴き出す。コボルトは地面に膝をつき、そのままバタリと地面に倒れこみ動かなくなった。
討伐に向かう途中でエミルが口を開く。討伐対象はコボルトで、村の近くに棲む数少ないDランク相当のモンスターだ。
「最近、稽古をつけてもらっている騎士から『Dランクパーティの剣士くらいの実力』って言われたから──本当にそうなのか確かめようと思って」
もしその騎士の言っていることが本当なら、かなりすごいんじゃないか。この歳でDランクパーティをやっている人間はそうそういまい。ただまあ、やる気を出させるためかそれとも取り入るためかは分からないが、お世辞を言っているだけという可能性も十分ある。
「この面子ならもし実力が及ばなかったとしても死ぬことはないし、実力を知るなら早い方がいいからさ」
ジャンの達観したような発言に皆目を丸くする。普通は自分の実力を知るのは嫌がるものだ──知りさえしなければ無限に夢が見られるのだから。それなのに、こんなにも躊躇なく限界を知ろうとするとは──
「今日ここでDランクのモンスターを倒せるか分かれば、明日はクエストを選ぶときに実力に見合うかどうかを気にせずに済む」
ああ、そういう理由かとも思ったが、それでも実力をすぱっと認められるのはすごいことだと思った。
そうして喋りながら木々の間を歩いていると、コボルトらしき影が遠くの方に見えたので、隠れようという合図を無言でする。
全員がサッとしゃがんだのを確認してから、ひそひそ声で告げる。
「手はず通りに」
しっかりと頷き合うと、まずジャンとエミルがコボルトに向かって走り出す。もちろんコボルトもすぐにそれに気付き、逃げようとする、が──
「ウォン!?」
その前に俺が素早く移動してコボルトの退路を塞ぐ。コボルトは逃げられないと思ったのか、数の少ない俺の方に向かってくる。
俺が倒してしまうのでは意味がないので、サッと退いてエミルたちの後ろに回り込む。追いつけないと判断して留まったところにジャンとエミルがコボルトのもとへ到着し、ジャンの剣がコボルトを襲う。
「──ハッ!」
ジャンの剣は想像よりは速かったが、さすがはDランクといったところかコボルトもしっかり避けていた。
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ジャンはそれを逃さず、斜め下からコボルトめがけて斬り上げる。素早い剣の切先はコボルトの腹部を捉え、そこから血が飛び散る。
痛みに怯んだコボルトに続けざまに上から太刀を浴びせると、今度は肩から胸にかけて大きな傷ができ、鮮血が噴き出す。コボルトは地面に膝をつき、そのままバタリと地面に倒れこみ動かなくなった。
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