パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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最終章

第310話 パーティメンバー 其の四

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「コ、コルネ様──お久しぶりです」

 そう言いながら緊張した面持ちでこちらに向かってくるジャンは、エミルの言うようにまるで別人のようだった。

「以前はひどい態度を取ってしまって、も、申し訳ありませんでした」
「──それは収穫祭のときにもう聞きましたし、俺も大人げないことをしたのでお互い様です」

 かつてのジャンの言動と全く違うことに面食らい、戸惑ってしまう。

「あの……僕の都合のためにパーティメンバーを探していただいてありがとうございます」
「いえ、そんな……珍しくエミルからの頼みごとだったので」
「……」
「…………」

 気まずい。ジャンは俺がSランク冒険者だから緊張しているのだろうということは伝わってくるし、俺も想像と全く違うジャンと何を話していいのか分からない。深刻そうな謝罪から昔のことを掘り返すのもまずい気がするし──

「エミル、何を話せばいいと思う……?」

 ジャンと俺のちょうど間に立って横から見守っているエミルに、ジャンがひそひそ声で訊ねている。小さい声とはいえ離れているわけではないから、俺にもしっかりと聞こえてくる。

 俺もちょうど同じことを考えてたよ。

「うーん、二人ともよそよそしい気がするからコルネに前みたいに名前で呼んでいいか訊いてみたらいいんじゃないかな」

 エミルも同じようにひそひそ声で返すが、その口元はにやけている。完全に俺に聞こえているのを知っている顔だ。

「そ、そんなことしたら、失礼じゃ──」
「コルネ、ジャンが前みたいにコルネって呼んでいいかって」
「ちょっ、エミル!」

 慌てるジャンを尻目にエミルが普通のボリュームで訊いてくる。以前会ったときにも感じたが、三年前よりも図太くなったと感じるのは気のせいではないと思う。

「別に。むしろそっちの方が落ち着くし──俺もジャンって呼んでもいい?」
「も、もちろん……だよ、コルネ」

 ジャンは恥ずかしげに見たことのない表情で笑った。びっくりして少しの間見ていると、エミルが話しだす。

「あ、もし二人を誘うんだったら、コルネもパーティに参加しちゃえば? 再結成みたいな感じでそっちの方が絶対楽しいって」

 たしかに入れるなら入った方が楽しそうだ。俺が手紙を送ったり受けとったりと準備をするのに、俺抜きで楽しむなど、正直妬けて仕方がない。

「そうだな、入れるのなら入りたい」
「エミル、それだとコルネと俺の役割が被って──」

 ジャンはおそらくパーティに剣士が二人になってしまうことを心配しているのだろうが──

「心配いらないって。コルネだって一人でAランクパーティやってたんだから、がっつり討伐クエストで剣を振るおうとは思っちゃいないさ」

 元から討伐クエストのためにパーティに入ろうとは思ってはいない。アドレアやマリーたちとただ昔のようにわいわい過ごしたいだけだ。

「エミルの言う通りだよ、討伐なら他のところで一人でやればいいから。ジャン、参加してもいいかな?」
「もちろん──コルネさえいいなら僕が反対する理由はないから」

 そう答えるジャンはどこか満足げだった。
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