パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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最終章

第306話 新しい騎士 其の二

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「それより、ジャン様は元気に過ごされてましたか?」

 僕に気を遣って話題を変えようとするエミル。

「はい、特にこれといった怪我や病気もなく……エミルさんはどうでしたか?」
「僕も元気でしたよ。そういえばジャン様は剣の腕が立つと騎士仲間から聞きましたが、ジャン様は騎士を目指しておられるんですか?」
「いえ……その…………そうではなくて」

 僕が本格的に剣術を習い始めたのは冒険者パーティに入るためだ。パーティで剣士をしっかりと務められるようにと思ってのことだったが、将来冒険者になれるかと問われると……正直分からない。

 僕は三男ではあるが領主の息子だ。兄二人にもしものことがあって家督を継ぐことがあるかもしれない。そうでなくても、オランド家の一員として僕に何かしらの形でオランド家を支えるような職業に就いてほしいと父さんは思っているだろう。

 冒険者になりたいと言ってもきっと反対される。

「ではなぜ剣術を?」
「……冒険者パーティに入るため、です」

 冒険者になりたいということは父さんの耳には入れたくなかったが、同時にエミルには嘘をつきたくないという気持ちもあった。逡巡ののち、僕は「冒険者になるため」ではなく「パーティに入るため」と答える。

エミルは驚いた顔をして訊ねる。

「僕たちはジャン様のことをほっぽりだして置き去りにしたので、てっきり冒険者には悪い印象しかないと思ってました」
「最後はあんな形でしたが、それでも僕は──楽しかったんです。みんなでモンスターを倒して、一緒に喜んで、褒めてくれて──作ってもらった冒険者証だって大事にとっています。まあ、それも全部僕の父さんが領主だから気を遣ってのことだったのかもしれませんが……」
「そう……でしたか」

 相槌を打ってからエミルは何か考え込むような素振りをする。

「もしかしてあれから、冒険者パーティには入られてないんですか?」

 僕は首肯を返した後に続ける。

「剣士が二人だとよほど連携が上手くないと難しいので、剣士のいないパーティを探すしかなくて……しかも僕は毎日クエストに参加できるわけではないので、兼業のパーティじゃないといけなくて……」
「それは…………厳しい条件ですね」

 エミルは一度目を伏せてから、また僕の方に向き直る。

「では僕が盾使いとしてパーティを組むので、あと二人を一緒に探すのはどうでしょう」
「いい……んですか?」
「もちろんですよ。ただし、領主様への説明はジャン様に頼みますよ。今の僕は一介の騎士に過ぎませんし、さすがに雇われて早々クビは嫌なので……」

 眉尻をへにゃりと下げながら微笑むエミル。

エミルは僕に愛想をつかして出て行ったから、またパーティを組めるなんて思ってもいなかった。率直に嬉しいという気持ちと、赦されていいんだろうかという気持ちが混ざり合って、気付けば視界が滲んでいた。
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