306 / 328
最終章
第297話 ダンジョンマップ(サラ視点)
しおりを挟む
「よく来たね、ユルゲン。アクスウィルの校長はまだ続けてるのかい?」
「お久しぶりです、サラ様。まだまだやるつもりですよ」
私の魔法道場に元門下生であり現アクスウィル魔法学校校長のユルゲンがやってくる。彼の訪問は一年ぶりで、今も校長という職に就いて忙しくやっているみたいだ。
炎魔法を使って素早くお茶を淹れてお茶請けと一緒に持っていくと、ユルゲンはソファに座ったまま壁に飾られているある物をじっくりと見ていた。
「これが噂のダンジョンマップですか」
「そうさね。これはねぇ、コルネくんが私のために書き写してくれたんだよ。歪んだところがなくて本当に整ったマップだろう? もはや芸術品と言っても差し支えないほどの──」
「そ、そのあたりは存じ上げておりますので」
今、このトレトのダンジョンマップは王国中で評判になっている。どうやらレオンも私と同じようにこうやって来る人来る人に見せているようで、それで瞬く間に噂が広がったらしい。学校でも話題になっているとアドレアも言っていた。
大抵のダンジョンはすぐにどこかの冒険者が踏破して消えてしまうので、作ったダンジョンマップは役に立たなくなる。そのためダンジョンマップというもの自体が公開されることが前代未聞だ。
しかもこのダンジョンマップはあのトレトのものだ。トレトのダンジョンはほとんどの人が入れないにもかかわらず、入り口だけは誰でも見ることができて冒険者以外にも親しまれている。
とても身近にあるのにその実よく分かっていないダンジョンの内部──その構造がどうなっているのか気にならない訳がない。
その上このクオリティの高さ──話題にならないわけがない。私のところにやってくる弟子が最近増えたのも気のせいではないだろう。
「それにしてもよくできたマップですね。僕が昔作ったのとは本当に雲泥の差ですよ」
額縁に顔を近づけてしげしげと眺めながら、ユルゲンが言う。以前見せてくれたユルゲンのマップは通路がぐにゃぐにゃだったり他の通路が貫通していたりとそれは酷いものだったが、置いて書くこともできない状況なら私が作っても似たようなものになるだろうと同時に思ったのを覚えている。
「いいものが見られました。これで明後日の集会で生徒たちにも話せますね」
「やっぱり今日来たのはダンジョンマップ目当てだったさね。いつでも忙しいと手紙で返ってくるユルゲンがいきなり来たからびっくりしたもんだよ」
「ハハハ、バレましたか。生徒たちに見てこい見てこいとせがまれましてね」
そうやって頭を掻くユルゲンを見て、生徒に慕われている良き校長なのだと私は感じた。
「お久しぶりです、サラ様。まだまだやるつもりですよ」
私の魔法道場に元門下生であり現アクスウィル魔法学校校長のユルゲンがやってくる。彼の訪問は一年ぶりで、今も校長という職に就いて忙しくやっているみたいだ。
炎魔法を使って素早くお茶を淹れてお茶請けと一緒に持っていくと、ユルゲンはソファに座ったまま壁に飾られているある物をじっくりと見ていた。
「これが噂のダンジョンマップですか」
「そうさね。これはねぇ、コルネくんが私のために書き写してくれたんだよ。歪んだところがなくて本当に整ったマップだろう? もはや芸術品と言っても差し支えないほどの──」
「そ、そのあたりは存じ上げておりますので」
今、このトレトのダンジョンマップは王国中で評判になっている。どうやらレオンも私と同じようにこうやって来る人来る人に見せているようで、それで瞬く間に噂が広がったらしい。学校でも話題になっているとアドレアも言っていた。
大抵のダンジョンはすぐにどこかの冒険者が踏破して消えてしまうので、作ったダンジョンマップは役に立たなくなる。そのためダンジョンマップというもの自体が公開されることが前代未聞だ。
しかもこのダンジョンマップはあのトレトのものだ。トレトのダンジョンはほとんどの人が入れないにもかかわらず、入り口だけは誰でも見ることができて冒険者以外にも親しまれている。
とても身近にあるのにその実よく分かっていないダンジョンの内部──その構造がどうなっているのか気にならない訳がない。
その上このクオリティの高さ──話題にならないわけがない。私のところにやってくる弟子が最近増えたのも気のせいではないだろう。
「それにしてもよくできたマップですね。僕が昔作ったのとは本当に雲泥の差ですよ」
額縁に顔を近づけてしげしげと眺めながら、ユルゲンが言う。以前見せてくれたユルゲンのマップは通路がぐにゃぐにゃだったり他の通路が貫通していたりとそれは酷いものだったが、置いて書くこともできない状況なら私が作っても似たようなものになるだろうと同時に思ったのを覚えている。
「いいものが見られました。これで明後日の集会で生徒たちにも話せますね」
「やっぱり今日来たのはダンジョンマップ目当てだったさね。いつでも忙しいと手紙で返ってくるユルゲンがいきなり来たからびっくりしたもんだよ」
「ハハハ、バレましたか。生徒たちに見てこい見てこいとせがまれましてね」
そうやって頭を掻くユルゲンを見て、生徒に慕われている良き校長なのだと私は感じた。
0
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?


爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる