パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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最終章

第297話 ダンジョンマップ(サラ視点)

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「よく来たね、ユルゲン。アクスウィルの校長はまだ続けてるのかい?」
「お久しぶりです、サラ様。まだまだやるつもりですよ」

 私の魔法道場に元門下生であり現アクスウィル魔法学校校長のユルゲンがやってくる。彼の訪問は一年ぶりで、今も校長という職に就いて忙しくやっているみたいだ。

 炎魔法を使って素早くお茶を淹れてお茶請けと一緒に持っていくと、ユルゲンはソファに座ったまま壁に飾られているある物をじっくりと見ていた。

「これが噂のダンジョンマップですか」
「そうさね。これはねぇ、コルネくんが私のために書き写してくれたんだよ。歪んだところがなくて本当に整ったマップだろう? もはや芸術品と言っても差し支えないほどの──」
「そ、そのあたりは存じ上げておりますので」

 今、このトレトのダンジョンマップは王国中で評判になっている。どうやらレオンも私と同じようにこうやって来る人来る人に見せているようで、それで瞬く間に噂が広がったらしい。学校でも話題になっているとアドレアも言っていた。

 大抵のダンジョンはすぐにどこかの冒険者が踏破して消えてしまうので、作ったダンジョンマップは役に立たなくなる。そのためダンジョンマップというもの自体が公開されることが前代未聞だ。

 しかもこのダンジョンマップはあのトレトのものだ。トレトのダンジョンはほとんどの人が入れないにもかかわらず、入り口だけは誰でも見ることができて冒険者以外にも親しまれている。

とても身近にあるのにその実よく分かっていないダンジョンの内部──その構造がどうなっているのか気にならない訳がない。

 その上このクオリティの高さ──話題にならないわけがない。私のところにやってくる弟子が最近増えたのも気のせいではないだろう。

「それにしてもよくできたマップですね。僕が昔作ったのとは本当に雲泥の差ですよ」

 額縁に顔を近づけてしげしげと眺めながら、ユルゲンが言う。以前見せてくれたユルゲンのマップは通路がぐにゃぐにゃだったり他の通路が貫通していたりとそれは酷いものだったが、置いて書くこともできない状況なら私が作っても似たようなものになるだろうと同時に思ったのを覚えている。

「いいものが見られました。これで明後日の集会で生徒たちにも話せますね」
「やっぱり今日来たのはダンジョンマップ目当てだったさね。いつでも忙しいと手紙で返ってくるユルゲンがいきなり来たからびっくりしたもんだよ」
「ハハハ、バレましたか。生徒たちに見てこい見てこいとせがまれましてね」

 そうやって頭を掻くユルゲンを見て、生徒に慕われている良き校長なのだと私は感じた。
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