パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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最終章

第295話 標

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 土壁が消えてから師匠たちの方を見ると、かなりモンスターが減っていて、ひしめき合うモンスターたちの隙間から奥にある魔力結晶が煌めく。

 それに加えてダンジョンの床にゴロゴロ散らばっているたくさんの魔力結晶もチラチラと目を刺激する。うじゃうじゃとモンスターがいる前で悠長に拾っている暇などなく、皆踏まないように気を付けながら闘っている。

「一撃で決められたね、コルネくん」

 モンスター相手にきりきりと舞いつづけながら師匠が言う。俺が闘っていた間もそうやって何体ものモンスターと闘っていたはずなのに見ていたのだろうか。

「はい! ありがとうございます」
「もう少しでモンスター倒しおわるからちょっと待ってて」

 師匠とやりとりをしている間にもモンスターの数はどんどん減っていく。十、八、五、二──ゼロ。眼前のモンスターが全部消えて最奥部の魔力結晶が目の前に現れる。

「おお…………」

 思わず感嘆の息が漏れるほど、正面の壁に鎮座している魔力結晶は巨大で、荘厳だった。俺の身長の四、五倍はあるだろう。ダンジョンを照らす炎に浮かびあがる魔力結晶は、さまざまな方向に光を反射してキラキラと強く輝いている。

「すごい……」
「来た甲斐があったねぇ」
「そうじゃの」

 三人も俺の前で大きな煌めきを見上げている。師匠はぽかんと口を開けて、あの魔力結晶に魅入られてしまっているようだ。

 俺ももっと近づいて見ようと三人のところまで前に出る。

「とても綺麗……というよりは圧倒されるというかなんというか──すごい、ですね」
「そうだねぇ……この魔力結晶はたくさんの命が失われたしるしでもあるから余計にそう感じるのかもしれないねぇ」

 このトレトのダンジョンは戦争で大量の魔力が溜まったために形成されたから、たしかにそう見ることもできる。

「今もこれだけの大きさなら昔はどれだけ大きかったのやら……想像もできんわい」
「そうさねぇ」

 熟年夫婦のように並んで魔力結晶を見上げる二人をよそに、師匠は最初からずっと同じ場所で魔力結晶を見つめていた。ぴくりとも動かない様子は本当にあの輝きに魅せられているようだ。

 しばらく思い思いに魔力結晶を見ていると、レオンさんが口を開く。

「最初に最奥部に辿り着いた者が核となっている魔力結晶を持って帰るのが通例じゃが……」
「──それは……」
「そんな野暮なことできないねぇ」

 すぐに反応する二人。

「そうじゃな。それに──」
「それに?」
「通路の幅よりも大きいから持って帰るのは無理じゃろ」

 後ろを振り返って見比べると、たしかにこれでは通路の手前でつっかえてしまうだろう。この魔力結晶は持ち帰らないことになった。
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