パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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最終章

第290話 トレトのダンジョン探索 其の三

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 あっという間に一階層を抜け、二階層への巨大な階段を下りる。そこからまた走って前回辿り着いたところまでやってきた。

「地図があるのはここまでか……にしても二階層もずいぶん深くまで来たのう」
「階段を下りてからの方が一階層で走った分より長かった気がするねぇ」
「そうですね、一階層は意外と階段までの距離は短いですから……ずっと走りっぱなしでしたし、そこで少し休憩しませんか」

 そう言いながら師匠が指差すのは行き止まりになっている通路。行き止まりならば、一方向だけを警戒すればいいので通路のど真ん中にいるよりだいぶ楽だ。

 ぞろぞろと行き止まりまで移動し、思い思いの場所に皆壁にもたれかかるように座る。壁に体重を預けると、ひんやりとした感触が背中に伝わってきて、少し懐かしい気持ちになる。

 休憩とは言いつつも、レオンさんもサラさんも少し息が上がっているだけなので、水分を取りながら少し話すくらいになりそうだ。

「コルネくん、ちょっとマップを見せてもらえるかの」
「どうぞ」

 レオンさんがマップを見たいと言うので渡すと、ほお、と感嘆の声が漏れる。

「こんなに巨大で距離感が分からなくなりそうなものなのに、よくできたマップじゃ。通路も重なっていないし、これはかなり正確なんじゃないかのう」
「どれどれ、私にも見せとくれ」

 絶賛するレオンさんにつられて、サラさんもずずいとレオンさんの手元を覗き込む。

「これはびっくりするくらいマッピングが上手いねぇ。前にダンジョンに潜った弟子のマップを見せてもらったことがあるけど雲泥の差だよ」
「あ、ありがとうございます」

 俺はそんなにマッピングが上手いのか……? ラムハのときもやって今回は二回目だから、もしかしたら上達したのだろうか。

「これがもし土産屋に置いてあったら絶対買うんじゃがのう。よくできたダンジョンのマップってなんというか見てるだけで妙にワクワクするからの」
「それちょっと分かります。僕もコルネくんが作ったラムハのダンジョンマップをよく見てましたから」
「私も分かるねぇ。部屋に飾って毎日眺めたらきっと寿命が延びるね」

 俺も分からないわけではないが、俺の場合は自分で作ったマップなのでどちらかというとマップを作ったときのことを思い出すという感覚に近い。

「コルネくん、帰った後でいいから今日作ったダンジョンマップを書き写して送ってくれんかの。もちろんタダでとは言わんし言い値を払うから」
「あっ──レオンだけずるい。わ、私にも送ってほしいさね。私だって言い値を払うよ」

 レオンさんが言いだしたのに負けじとサラさんもグイグイ来て、師匠はその後ろで苦笑いをしながら眺めている。

 そんなに価値があるものなのかは分からないが、帰ってゆっくりとやるのなら問題ない。むしろせっかく自分が作ったマップが誰かの目に触れて少し嬉しいくらいだ。

「分かりました。送ります──送りますから」

二人が道場に飾るならきっと多くの人が見ることになる──そう考えるとプレッシャーがすごいな……
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