パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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最終章

第288話 トレトのダンジョン探索

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「ちょっと早く着きすぎちゃったかなぁ」
「そうかもしれないですね」

 俺と師匠はトレトに来ていた。褒賞をもらった後にレオンさんやサラさんとトレトのダンジョンに行く約束をしていたのだ。

 あの場にはアドレアもいたが、さすがに実戦慣れしておらず危険だということでレオンさん、サラさん、師匠、俺の四人で行くことになった。街に出た巨大ケルベロスは別にして久しぶりに闘うのがトレトのダンジョンというのはなかなかに堪えるだろう。

 トレトの街を待ち合わせ場所の喫茶店を探しながら歩く。師匠と違って二人は顔がよく知られていてダンジョン前で集合してしまうと人だかりができてしまいそうだったので、建物の中で落ち合うことにしたのだ。

「あそこじゃないかな。ほら、聞いてた名前と同じ」

 師匠の指差している看板にはデカデカとお店の名前が書いてある。分かりやすくて待ち合わせによく使われてそうだな。

 ドアを開けて喫茶店の中に入ると、驚いたことにすでにレオンさんとサラさんがテーブルに座っていた。

こちらに小さく手を振っている二人のもとに行き、俺たちも注文をしてから座る。朝っぱらから喫茶店に来る人などいるはずもなく、店内はガラガラだ。

「まだ集合時間よりかなり前なんですが」
「……年寄りの朝は早いんじゃよ」
「さっきは『楽しみすぎて早く来てしもうたわい』なんて言ってたくせに。ま、私も楽しみだったから早くきちまったんだけどねぇ」

 なるほど、みんな今日を楽しみにしていたようだ。

「トレトのダンジョンなんていつぶりかのう。スケジュールがすぐに入ってしまうから足は伸ばすのは難しゅうて。剣士だと魔力結晶を使わないというのもあるが」
「私もダンジョンに潜るのは久しぶりだねぇ。新しいのができても入ってる予定をやめるにはいかないし、ここのダンジョンは魔法使いだけだとさすがに危ないからね。あ、そうさね──」

何かを思い出したようにがさごそと鞄の中をまさぐるサラさん。

「ほら、ダンジョンといえばこれなんだろう? コルネくんがうちに来たときに聞いたからね、しっかり準備してきたよ」

 得意げに取り出したのは大きな袋だった。この前行ったときに師匠が持ってきていたものよりも一回り二回り大きい気がする。

そういえば道場でサラさんに最近何があったかと訊かれたときにダンジョンの話をしたな。

「そんなに魔力結晶は採れるのか……困ったのう、わしそんなに大きい袋持っとらんぞ」
「あんたの分も持ってきたよ、ほら」
「おお、ありがとう。これでわしも魔力結晶ザクザクじゃな」

 出発する前から二人ともめちゃくちゃはしゃいでいる。楽しいダンジョン探索になりそうだ。
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