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最終章
第271話 対オーガ 其の二
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「──ッ!」
間合いに入った途端に攻撃が飛んでくるので、大きく後ろに跳び回避する。速いが避けられないほどではない。
一度間合いに入ったことで、オーガの意識がこちらに向く。ここまでは順調だ。
俺はオーガを独力で倒すことは不可能だと判断し、なるべく被害が少なくなるように広場へと誘導することにした。広場の中央にある噴水は粉々になってしまうだろうが、人的被害や建物への被害はかなり抑えられるだろう。
周囲の人には広場に誘導すると伝えてあるから、逆方向に逃げるはずだ。その間にドラゴンの幼体事件を受けてできた街の騎士団が救助活動をしてくれる。
彼らは一応騎士団ではあるが、ここまでの強敵だと闘いに参加できない。しかし他の街への伝達はするだろうから、いずれは増援が来るだろう。
それまで俺がオーガを広場に留まらせればいいのだ。
俺が一度でも攻撃を受けてしまえば俺の負け──ラムハの街はめちゃくちゃになる。部の悪い勝負だが、やるしかない。これが考え得る限りの最善手なのだから。
* * *
馬車には乗ったが、僕はまだ目の前に座る男を信用しきってはいなかった。だから、いろいろな質問をぶつけてみた。
王宮ではどのような仕事をしているのか、王都でお気に入りの店はあるか、王宮の内部構造はどうなっているか──全ての質問に男は迷う素振りもなく答えてみせた。
冒険者会議の日程が突然変更になってその連絡も来なかった……さすがに怪しすぎると思っていたが、理由が外交上の都合というのも真実味があるし、もしかしたら本当なのかも──そう思いはじめた矢先だった。
(……通っている道がいつもと違う?)
今馬車は街中を走っているのだが、この道を行くとたしか街の東側に出るはずだ。いつもなら北側に出て王都を目指すルートを取るのだが、東側とは。
ここで消えかけていた疑念が一気に確信へ変わる。
東側に出てもそこから王都に行けるルートはあるが、北側から向かうルートに比べれば道が悪く少し時間がかかる。何もないのなら普通は選ばない道だ。この道を選ぶ理由があるとすればそう例えば──
「時間稼ぎ……」
その言葉を聞いたとき、男の目にかすかに動揺の色が混ざる。
「何のことでしょうか?」
目から先ほどまでの動揺は消え、飄々とした態度で訊いてくる。ここで弁明してこないということは、北側のルートが通れなくなっているというわけでもなく本当に時間稼ぎのようだ。
時間稼ぎ──ということは、目的は僕をラムハから遠ざけること。つまり今この瞬間、おそらくラムハで何かが起こっている。
僕は馬車の扉を開け、飛び降りる。街中で馬車はゆっくり走っているため、受け身を取る必要もない。
引き留めようとする男と御者を無視して、僕はラムハへと走りだす。
間合いに入った途端に攻撃が飛んでくるので、大きく後ろに跳び回避する。速いが避けられないほどではない。
一度間合いに入ったことで、オーガの意識がこちらに向く。ここまでは順調だ。
俺はオーガを独力で倒すことは不可能だと判断し、なるべく被害が少なくなるように広場へと誘導することにした。広場の中央にある噴水は粉々になってしまうだろうが、人的被害や建物への被害はかなり抑えられるだろう。
周囲の人には広場に誘導すると伝えてあるから、逆方向に逃げるはずだ。その間にドラゴンの幼体事件を受けてできた街の騎士団が救助活動をしてくれる。
彼らは一応騎士団ではあるが、ここまでの強敵だと闘いに参加できない。しかし他の街への伝達はするだろうから、いずれは増援が来るだろう。
それまで俺がオーガを広場に留まらせればいいのだ。
俺が一度でも攻撃を受けてしまえば俺の負け──ラムハの街はめちゃくちゃになる。部の悪い勝負だが、やるしかない。これが考え得る限りの最善手なのだから。
* * *
馬車には乗ったが、僕はまだ目の前に座る男を信用しきってはいなかった。だから、いろいろな質問をぶつけてみた。
王宮ではどのような仕事をしているのか、王都でお気に入りの店はあるか、王宮の内部構造はどうなっているか──全ての質問に男は迷う素振りもなく答えてみせた。
冒険者会議の日程が突然変更になってその連絡も来なかった……さすがに怪しすぎると思っていたが、理由が外交上の都合というのも真実味があるし、もしかしたら本当なのかも──そう思いはじめた矢先だった。
(……通っている道がいつもと違う?)
今馬車は街中を走っているのだが、この道を行くとたしか街の東側に出るはずだ。いつもなら北側に出て王都を目指すルートを取るのだが、東側とは。
ここで消えかけていた疑念が一気に確信へ変わる。
東側に出てもそこから王都に行けるルートはあるが、北側から向かうルートに比べれば道が悪く少し時間がかかる。何もないのなら普通は選ばない道だ。この道を選ぶ理由があるとすればそう例えば──
「時間稼ぎ……」
その言葉を聞いたとき、男の目にかすかに動揺の色が混ざる。
「何のことでしょうか?」
目から先ほどまでの動揺は消え、飄々とした態度で訊いてくる。ここで弁明してこないということは、北側のルートが通れなくなっているというわけでもなく本当に時間稼ぎのようだ。
時間稼ぎ──ということは、目的は僕をラムハから遠ざけること。つまり今この瞬間、おそらくラムハで何かが起こっている。
僕は馬車の扉を開け、飛び降りる。街中で馬車はゆっくり走っているため、受け身を取る必要もない。
引き留めようとする男と御者を無視して、僕はラムハへと走りだす。
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