パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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最終章

第263話 近況

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 サラさんの魔法道場から帰ってきてから半年が経ち、俺はかなり短剣を扱えるようになってきた。ヴィレアでクエストに行くたびに試していて、まだ浅くではあるが狙い通りに刺さるまでにはなった。

 一方でルカに言われた毒魔法の練習も修行メニューとは別にあれからするようになった。今までは奥の手として持っていたが、使う機会がほぼなかったうえに解毒薬を消費するのでほとんど練習はしていなかったのだが、これを機会に始めてみた。

 その結果、なんとか<ポイズン>をより強くしたような<アシッド>は習得できたのだが、粘り気のある毒を生成する<ビスカス>の方は全く出来るようになる気配もなかった。

 <ビスカス>は不得手なのだろうと思い半ば諦めており、それは残念なことなのだが、それ以上に<アシッド>を習得できたことへの驚きの方が大きかった。

 他系統は威力の高い魔法はてんで駄目だったのに、毒魔法はどうやら例外らしかった。これを使えるようになったときは、とても嬉しかった。

 本格的に練習をしはじめて、ただ「毒を生成する魔法」としか認識していなかった毒魔法のことが、なんとなく分かってきた。

 まだただの推測にすぎないが、おそらく実際には毒魔法は「体の記憶にある液体を生成する魔法」なのだと思う。

 俺が<アシッド>の練習をしているときに、初めての毒魔法を同じように何か近いものを食べれば何かヒントが得られるのではないかとふと思い立った。市場で酸っぱい木の実を買ってきて、練習直前に食べてその酸っぱさが体を巡っているのをイメージしたところ一気に上達したのだ。

 これはもしやと思い、同じように甘いものや苦いものを食べるとちょっと甘い毒やちょっと苦い毒ができた。だからおそらく体が覚えているものを再現するのが毒魔法なのだと思う──ルカにもそのように手紙を送っておいた。

 あれから他に変わったことといえばエミルが見つかったという報告があったことだろうか。三ヶ月ほど前にサラさんからレクタムでそれらしい人物を見つけたと手紙があった。

 今も尾行させていて、会いに行くなら案内させるとも書いてあったが、結局俺は会いにはいかなかった。レクタムからラムハなら来ようと思えば来られる距離だ。きっと強情なエミルのことだから、何か目標を成し遂げるまで俺には合わないとか決めているんだろう。

 元気にやってるのが分かればそれでいい。エミルが会いたくないのならこちらから会いに行かなくていい──そう思ったのだ。

「コルネくん、まだー?」

 道場の裏で待っている師匠の呼ぶ声が聞こえる。剣を持って向かっていると、車輪の音が近づいてくる。

 馬車か……今日は特に何もないと師匠は言っていたはずだが、ご近所さんが呼んだんだろうか。珍しいな。
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