パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

文字の大きさ
上 下
268 / 328
第十一章 サラの魔法道場編

第260話 ティータイム

しおりを挟む
 馬車がラムハに着くと、いつものように師匠とヘルガさんが扉から顔を出す。ヘルガさんはエプロンをかけたままなので、ちょうど昼食を作っていたところだったんだろう。

「「おかえり、コルネくん」」
「ただいま帰りました。これはサラさんからのお土産です」

 もらった木箱を手渡すと、師匠の顔がぱあっと輝く。馬車の中でちらっと中身を見たのだが、道場に着いてすぐにサラさんが内緒で食べさせてくれたクッキーが入っていた。

「僕これ好きなんだよねぇ。前にもサラさんにもらったことがあるんだけど、すごく香ばしくってサクサクで…………ねえ、ヘルガ──」
「だめですよ、今からお昼なんですから。お土産はおやつにいただきましょう」
「だよね……」

 今食べればごはんが入らなくなるため断られるのは分かってはいたけど、一応ヘルガさんに訊いてみたといった様子の師匠。ごはんの前に食べたいだなんて、師匠はこの甘味がよっぽど好きなんだな……



「それで、Aランクのモンスターはどうだった?」

 ヘルガさんが淹れたあつあつのお茶を飲んだ後、ホクホクした顔で師匠がクッキーを口に運びながら俺に問いかける。

「マーナ・ガルムと闘ったんですが、やはり強かったというか──こちらの動きを一回見てから、二回目で即座に対応してくるとは夢にも思いませんでした」
「Aランクになると知能が高いモンスターが多いからそういうこともあるかもね。マーナ・ガルム──は、たしかウルフみたいなモンスターだったっけ」
「そうですね、輝くような毛並みのモンスターです。魔力操作で攻撃を避けようとしたら読まれてしまって、避けた先に爪での攻撃が来たんですよね。利き腕ではなかったですが、ちょっと怪我しちゃいました」

 そこまで言ったところで、ゆっくりとお茶を飲んでいた師匠が焦ったように身を乗り出す。

「どこ!? どこを怪我したの?」
「えっ……えっと、左腕のここなんですけど、もうほぼ治ってるので大丈夫です」
「本当に大丈夫なんだね?」
「は、はい」

 俺の返事を聞いてからホッとした様子で椅子に戻る師匠。小さく安堵のため息をつき、さっきまでとは打って変わって真剣な目つきで語りだす。

「いいかい、何度も言うけどコルネくんには助けてくれるパーティメンバーがいないから、怪我で動けなくなったら逃げられない。本当に気を付けてね。それと今回のマーナ・ガルムのように、足の速さで敵わない相手から逃げるための策も考えておく必要があるね」
「逃げる方法……ですか。土魔法は発動よりマーナ・ガルムの方が速くて使えませんでしたし、剣を使うとなると完全に逃げきることは難しくなりますね」
「たしかに剣だと結局闘わなきゃいけないし、かえって戦闘から離脱するのが難しくなる。うーん、ブライトもただの目くらましだから逃げていった方向は音で分かっちゃうしな…………すぐに追いかけられないほどのダメージを負わせるにしても生半可な魔法じゃだめだし……」

 さきほどまでの優雅なお茶の時間はどこかに行ってしまって、二人してうんうん唸りながら考えていると、静かにクッキーを貪っていたヘルガさんが顔を上げる。

「でしたらアレなんてどうでしょうか」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

剣しか取り柄がないという事で追放された元冒険者、辺境の村で魔物を討伐すると弟子志願者が続々訪れ剣技道場を開く

burazu
ファンタジー
剣の得意冒険者リッキーはある日剣技だけが取り柄しかないという理由でパーティーから追放される。その後誰も自分を知らない村へと移住し、気ままな生活をするつもりが村を襲う魔物を倒した事で弓の得意エルフ、槍の得意元傭兵、魔法の得意踊り子、投擲の得意演奏者と様々な者たちが押しかけ弟子入りを志願する。 そんな彼らに剣技の修行をつけながらも冒険者時代にはない充実感を得ていくリッキーだったのだ。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

処理中です...