パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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第十一章 サラの魔法道場編

第260話 ティータイム

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 馬車がラムハに着くと、いつものように師匠とヘルガさんが扉から顔を出す。ヘルガさんはエプロンをかけたままなので、ちょうど昼食を作っていたところだったんだろう。

「「おかえり、コルネくん」」
「ただいま帰りました。これはサラさんからのお土産です」

 もらった木箱を手渡すと、師匠の顔がぱあっと輝く。馬車の中でちらっと中身を見たのだが、道場に着いてすぐにサラさんが内緒で食べさせてくれたクッキーが入っていた。

「僕これ好きなんだよねぇ。前にもサラさんにもらったことがあるんだけど、すごく香ばしくってサクサクで…………ねえ、ヘルガ──」
「だめですよ、今からお昼なんですから。お土産はおやつにいただきましょう」
「だよね……」

 今食べればごはんが入らなくなるため断られるのは分かってはいたけど、一応ヘルガさんに訊いてみたといった様子の師匠。ごはんの前に食べたいだなんて、師匠はこの甘味がよっぽど好きなんだな……



「それで、Aランクのモンスターはどうだった?」

 ヘルガさんが淹れたあつあつのお茶を飲んだ後、ホクホクした顔で師匠がクッキーを口に運びながら俺に問いかける。

「マーナ・ガルムと闘ったんですが、やはり強かったというか──こちらの動きを一回見てから、二回目で即座に対応してくるとは夢にも思いませんでした」
「Aランクになると知能が高いモンスターが多いからそういうこともあるかもね。マーナ・ガルム──は、たしかウルフみたいなモンスターだったっけ」
「そうですね、輝くような毛並みのモンスターです。魔力操作で攻撃を避けようとしたら読まれてしまって、避けた先に爪での攻撃が来たんですよね。利き腕ではなかったですが、ちょっと怪我しちゃいました」

 そこまで言ったところで、ゆっくりとお茶を飲んでいた師匠が焦ったように身を乗り出す。

「どこ!? どこを怪我したの?」
「えっ……えっと、左腕のここなんですけど、もうほぼ治ってるので大丈夫です」
「本当に大丈夫なんだね?」
「は、はい」

 俺の返事を聞いてからホッとした様子で椅子に戻る師匠。小さく安堵のため息をつき、さっきまでとは打って変わって真剣な目つきで語りだす。

「いいかい、何度も言うけどコルネくんには助けてくれるパーティメンバーがいないから、怪我で動けなくなったら逃げられない。本当に気を付けてね。それと今回のマーナ・ガルムのように、足の速さで敵わない相手から逃げるための策も考えておく必要があるね」
「逃げる方法……ですか。土魔法は発動よりマーナ・ガルムの方が速くて使えませんでしたし、剣を使うとなると完全に逃げきることは難しくなりますね」
「たしかに剣だと結局闘わなきゃいけないし、かえって戦闘から離脱するのが難しくなる。うーん、ブライトもただの目くらましだから逃げていった方向は音で分かっちゃうしな…………すぐに追いかけられないほどのダメージを負わせるにしても生半可な魔法じゃだめだし……」

 さきほどまでの優雅なお茶の時間はどこかに行ってしまって、二人してうんうん唸りながら考えていると、静かにクッキーを貪っていたヘルガさんが顔を上げる。

「でしたらアレなんてどうでしょうか」
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