パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

第十一章 サラの魔法道場編

第251話 初めてのAランクモンスター討伐 其の二

　ギルドの扉を閉め、マーナ・ガルムが棲むという山へと向かう。魔法道場やギルドの裏手はすぐ山で、ちょうど山から下りてくるモンスターを堰き止めるような位置に作られている。

　まだ秋だとはいえ、ときおり吹く風が肌寒い。やはり北方にあるからだろうか、ここに来てからラムハにいたときと比べて急激に季節が進んだ気がしている。

　山に入り、周りの音に神経を尖らせながらゆっくりと歩いていく。まだ近くにこれといったモンスターはいないみたいだ。

　サラさんがギルドで俺に提示した紙はそれなりに数があった──ということはその分だけAランク相当のモンスターが生息していることになる。全ての依頼書に相当ランクはAと書いてあったから間違いない。

　Aランク相当のモンスターと初めて闘うのがこんな魔境だなんて……いや、来てしまった以上は今考えても仕方のないことだ。今俺にできるのはモンスターに囲まれないように慎重に山を登っていくことだけだ。

　いざというときは全速力で走れば大抵のモンスターからは逃げきれると思っているが、どのモンスターも初めて闘うのだから慢心はよくない。

　しばらく歩いているとCランクやDランクのモンスターには何体か出会ったが、BランクやAランクのこれといったモンスターには出会わなかった。

　山の麓に行くとサラさんやお弟子さんたちに狩られるのが分かっていて、近づかないようにしているんだろうか。

　そんなことを考えていると突然木々が開け、池が現れる。池の周りにはモンスターたちの足跡があり、水飲み場になっていることが窺える。

　すると、右手に見える木々の隙間から一体のマーナ・ガルムが出てきて池の水に口をつける。後から他の個体がついてくる気配もないので、おそらく一体だけなのだろう。

　ここで闘うとなると、池に落ちないように気を付けなければならないし、この足跡の数なら戦闘中に他のモンスターが水を飲みにくる可能性もある。

　あのマーナ・ガルムの後をつけて、離れたところで仕掛けよう。