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第十一章 サラの魔法道場編
第249話 サラの魔法道場 其の十四
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他の二人のところを巡って一緒に魔法を考えていると、気付けば日が傾きはじめていた。最初に行ったエリックやルカはどうなったかなとエリックのもとに行ってみると、なんと彼はこの短時間で木の枝に風魔法を纏わせることに成功していた。
纏わせ方はまだ稚拙で魔法剣のようにしっかりと枝についているというよりは、枝に魔法が引っかかっているという表現の方が近いくらいだが、引っかけるまでが難しいのだ。
引っかかりさえすれば地道に練習していけばきっと上手く纏わせられるようになる。これは帰ったら師匠に報告しなければ──そう思案しながらエリックに話しかける。
「たった一日で出来るようになるのはすごいな。エリックには魔法剣の素質があるんじゃないか」
「これもコルネのおかげだよ。魔法剣みたいに魔法を纏わせると威力も違うんだ。見てて──」
さきほど飛ばしたばかりの木の枝を拾ってきて、短く唱える。
「──ウィンド」
魔法を使う直前にパッと離した木の枝は、突風に飛ばされたように移動していき、落ちた後も勢いのままにしばらく地面を転がっていく。移動しつづけているせいで落下がゆるやかに感じ、カランという音で枝が落ちたことを認識した。枝が止まると、エリックが走って枝を拾いにいく。
エリックの背中を眺めながら考える──飛距離が長すぎる。エリックがいたところから枝まではうちの道場の端から端くらいまである。普通の民家数軒分の幅を飛ばされやすいわけでもない枝が飛んでいく──正直これでも十分だと思うのだが。
俺が同じように風魔法を使ってもきっとこうはいかないだろう。初級の魔法ひとつで一流だと分かるほどの技量──寮でカードゲームで盛り上がる姿は普通の少年と変わらなかったが、ここにいるのは皆一流の魔法使い。もちろんエリックも例に漏れず、というわけだ。
はぁはぁと息を弾ませながら戻ってきたエリックは、次は魔法剣を参考にした方だと俺に伝えてから目を閉じ呼吸を整える。集中しタイミングを計っているのだろうと静かに見守っていると、エリックは突然カッと目を見開く。
「──フンッ」
力を入れるような音とともに勢いよく枝が飛び出していく。飛ばされる、ではなく飛び出していく、なのだ。おおよそ風魔法だとは思えないほど直線的に枝は進んでいき、そのまま向こうに見える木の幹にぶつかった──と思う。ベキッという音が遠くで他の人が使っている魔法の音に混じってかすかに聞こえてくる。
「どう? 結構やばくない?」
自分でもかなりやばいと思っているであろうエリックが、少しぎこちない笑みで訊いてくる。
直線的に飛んでいく枝はまるで現実ではないかのようで、もはや本当に風魔法なのか──本当に目の前の光景は起きている事象なのか疑いたくなるレベルだった。
俺はとんでもない化け物を生み出してしまったのかもしれない。
纏わせ方はまだ稚拙で魔法剣のようにしっかりと枝についているというよりは、枝に魔法が引っかかっているという表現の方が近いくらいだが、引っかけるまでが難しいのだ。
引っかかりさえすれば地道に練習していけばきっと上手く纏わせられるようになる。これは帰ったら師匠に報告しなければ──そう思案しながらエリックに話しかける。
「たった一日で出来るようになるのはすごいな。エリックには魔法剣の素質があるんじゃないか」
「これもコルネのおかげだよ。魔法剣みたいに魔法を纏わせると威力も違うんだ。見てて──」
さきほど飛ばしたばかりの木の枝を拾ってきて、短く唱える。
「──ウィンド」
魔法を使う直前にパッと離した木の枝は、突風に飛ばされたように移動していき、落ちた後も勢いのままにしばらく地面を転がっていく。移動しつづけているせいで落下がゆるやかに感じ、カランという音で枝が落ちたことを認識した。枝が止まると、エリックが走って枝を拾いにいく。
エリックの背中を眺めながら考える──飛距離が長すぎる。エリックがいたところから枝まではうちの道場の端から端くらいまである。普通の民家数軒分の幅を飛ばされやすいわけでもない枝が飛んでいく──正直これでも十分だと思うのだが。
俺が同じように風魔法を使ってもきっとこうはいかないだろう。初級の魔法ひとつで一流だと分かるほどの技量──寮でカードゲームで盛り上がる姿は普通の少年と変わらなかったが、ここにいるのは皆一流の魔法使い。もちろんエリックも例に漏れず、というわけだ。
はぁはぁと息を弾ませながら戻ってきたエリックは、次は魔法剣を参考にした方だと俺に伝えてから目を閉じ呼吸を整える。集中しタイミングを計っているのだろうと静かに見守っていると、エリックは突然カッと目を見開く。
「──フンッ」
力を入れるような音とともに勢いよく枝が飛び出していく。飛ばされる、ではなく飛び出していく、なのだ。おおよそ風魔法だとは思えないほど直線的に枝は進んでいき、そのまま向こうに見える木の幹にぶつかった──と思う。ベキッという音が遠くで他の人が使っている魔法の音に混じってかすかに聞こえてくる。
「どう? 結構やばくない?」
自分でもかなりやばいと思っているであろうエリックが、少しぎこちない笑みで訊いてくる。
直線的に飛んでいく枝はまるで現実ではないかのようで、もはや本当に風魔法なのか──本当に目の前の光景は起きている事象なのか疑いたくなるレベルだった。
俺はとんでもない化け物を生み出してしまったのかもしれない。
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