パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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第十一章 サラの魔法道場編

第247話 サラの魔法道場 其の十二

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 いきなりの話にどう反応していいか分からず、一瞬怯んでしまう。さっきまで平気な顔をして俺と話していたのに、一気に言葉を吐いて……何か慰めの言葉をと思ったが、それよりも前にルカがすっと顔を上げる。

「……な、なんてね──いきなりこんなこと言われて困っちゃうよね。全部冗談だから安心して」

 目尻に溜まった涙を拭いながら、らしくもなくヘラヘラと笑うルカを目の前に考える。さっきのは本当にただの冗談だったのだろうか──いや、そうとは思えない。演技にしては熱が入りすぎていたし、たとえ部分的に冗談があったとしてもほとんどは本心だろう。

 そう考えると、その前の魔力結晶を試していたという言葉も嘘で、無意識に魔法を使うほど魔法のことで悩んでいたのかもしれないと思えてくる。

「それで、俺は何をすればいい?」
「──毒魔法の使い手として使える魔法を全部教えてほしい」

 その言葉を聞いた途端、背筋が冷たくなる。なぜ俺が毒魔法を使えることを知って──いや、ルカは知ってるんだった。普段、奥の手として隠しているから使えると指摘されて驚いてしまった。

 言いぶりから、きっとルカは複数の魔法を使えるのだろうが、生憎俺は未だ毒魔法は<ポイズン>しか使えないのだ。おそらくはルカがまだ使えない毒魔法を俺から教えてもらおうと思っているのだろうが、残念ながら俺がルカに教えられる魔法はない。

「言いづらいんだけど……俺はポイズンしか使えないんだ」
「えっ……」

 予想もしない答えが返ってきて固まってしまうルカ。二年も経っても一種類しか魔法が使えないとは思わないもんな。

「じゃ、じゃあ俺が今から毒魔法を見せるから、何か新しい魔法のヒントになりそうなことを思いついたら言って」

 ルカが使えるのは<ポイズン><アシッド><ビスカス>の三つらしい。<ポイズン>は俺もよく知っている液体の毒を宙に浮かべるものだ。

「アシッド!」

 ルカが言うと、紫色の球が現れる。ポイズンと同じかと思ったが、地面にぶつけた瞬間、シュウウという音を立てながら小さく煙が上がる。これはうっかり皮膚にでも当たれば溶けてしまうやつだ。

 見た目通り強力な魔法なのか、ルカは青い顔でぐびぐびと解毒薬を飲んでいる。ある程度回復したのか、ルカは次の魔法を使う。

「ビスカス!」

 これまた同じような球体がルカの前に浮かぶが、きっと地面に落ちたときに何か違うことが起きるのだろうと期待したが、特に煙が上がるでもなく、べちゃあと染みが残っただけだった。

 疑問に思っているとルカが近くに落ちていた葉っぱを染みに浸けると、葉から毒の糸が垂れる。どうやら粘り気のある毒らしい。やはり粘り気があると効果も違ってくるのだろうか、と訊いてみたが淡泊な返答がくる。

「ねばねばしてる以外はポイズンと変わらないけどね。一応できるけど使い道はないかな」

 自嘲気味に笑うルカを尻目に何か新たな魔法に繋がりそうなものはないかと考える──うん、やはりこれだ。

 ポイズン、アシッド、ビスカス──冗談だと言っていたルカの「魔法で人を不幸にしたくない」という言葉が本当だと仮定して、誰かを幸せにできる新しい魔法のヒントになるとしたらおそらくこれだろう。
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