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第十章 Aランク昇格編
第235話 エミル
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「また新しいAランクパーティだとよ。なんでもメンバーはコルネってやつ一人だけらしい」
届け物のクエストのために来たトレトの市場でパーティメンバーの買い物を待っていると、不意に聞こえた他の冒険者の会話に釘付けになる。コルネ──幼馴染と一緒の名前だが、珍しい名前ではないしきっと別人だ。コルネは今頃元気にしているだろうか。
「やべえな! 一人ってぇと、やっぱり剣士か?」
「それが魔法剣士ってやつらしい」
──歩きだそうとした足が再び止まる。たしかコルネ……僕の知っているコルネも魔法剣士だったはず。
まさか──いや、まさかな。コルネがAランクパーティなんて……第一、どこにいるかも分からないし確かめようもない。
「ロンド様の弟子でラムハでは有名なんだとよ」
「Sランク冒険者の弟子はやっぱり強いなぁ。俺もレオン様の道場入れば強くなるかな」
「お前じゃ無理だろ」
「それもそうか」
ハハハと笑いながら去っていく冒険者たち。どうやらAランクになったコルネはラムハにいるらしい。
ジャンを置き去りにパーティを抜けてこの二年、僕はミャクー村に一度も帰っていない。噂になっていたコルネが僕の知るコルネと同一人物なのかを確かめるついでにそろそろ帰っても、と思わないでもないが──
「おい! 置いてくぞエミル!」
「あ、うん。すぐ行く」
パーティメンバーに呼ばれ、止まっていた足を動かす。冒険者の会話に聞き入ってるうちに買い物はいつの間にか終わっていたようだ。
僕はパーティを抜けた後、とあるパーティに盾使いとして加わり今も冒険者をやっている。パーティのランクはだいぶ上がったけど、それでもDランク──コルネたちと昔組んでたパーティにやっと追いついたくらいだ。
コルネはAランクになったっていうのに、僕が二年も冒険者を続けて得られたのは抜ける前のパーティと同じランクなんて、自分のことながら笑ってしまう。
僕は何も、まだ何もできてない。盾の使い方だってあれから上手くなったとは思えないし、パーティメンバーが変わったとはいえ、以前は楽々倒せていたモンスターにも苦労してばかりだ。
……だから僕はミャクー村には帰れない。コルネだけじゃなくてマリーやアドレア、父さん母さんに合わせる顔がない。
ごめんね、コルネ、アドレア、それにマリー。
届け物のクエストのために来たトレトの市場でパーティメンバーの買い物を待っていると、不意に聞こえた他の冒険者の会話に釘付けになる。コルネ──幼馴染と一緒の名前だが、珍しい名前ではないしきっと別人だ。コルネは今頃元気にしているだろうか。
「やべえな! 一人ってぇと、やっぱり剣士か?」
「それが魔法剣士ってやつらしい」
──歩きだそうとした足が再び止まる。たしかコルネ……僕の知っているコルネも魔法剣士だったはず。
まさか──いや、まさかな。コルネがAランクパーティなんて……第一、どこにいるかも分からないし確かめようもない。
「ロンド様の弟子でラムハでは有名なんだとよ」
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「お前じゃ無理だろ」
「それもそうか」
ハハハと笑いながら去っていく冒険者たち。どうやらAランクになったコルネはラムハにいるらしい。
ジャンを置き去りにパーティを抜けてこの二年、僕はミャクー村に一度も帰っていない。噂になっていたコルネが僕の知るコルネと同一人物なのかを確かめるついでにそろそろ帰っても、と思わないでもないが──
「おい! 置いてくぞエミル!」
「あ、うん。すぐ行く」
パーティメンバーに呼ばれ、止まっていた足を動かす。冒険者の会話に聞き入ってるうちに買い物はいつの間にか終わっていたようだ。
僕はパーティを抜けた後、とあるパーティに盾使いとして加わり今も冒険者をやっている。パーティのランクはだいぶ上がったけど、それでもDランク──コルネたちと昔組んでたパーティにやっと追いついたくらいだ。
コルネはAランクになったっていうのに、僕が二年も冒険者を続けて得られたのは抜ける前のパーティと同じランクなんて、自分のことながら笑ってしまう。
僕は何も、まだ何もできてない。盾の使い方だってあれから上手くなったとは思えないし、パーティメンバーが変わったとはいえ、以前は楽々倒せていたモンスターにも苦労してばかりだ。
……だから僕はミャクー村には帰れない。コルネだけじゃなくてマリーやアドレア、父さん母さんに合わせる顔がない。
ごめんね、コルネ、アドレア、それにマリー。
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