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第十章 Aランク昇格編
第225話 トレトのダンジョン 其の三
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師匠とずんずん奥に進んでいく。俺の前を師匠が歩いており、出てきたモンスターたちは師匠の魔法剣ですぐさま灰となっていく。
息をするように素早く剣を振るい、落ちた魔力結晶を拾う──師匠の闘いぶりはとても安定していて、型なのではないかと錯覚してしまうほど迷いがない。
向かってくるモンスターを見て瞬時にどう対応するかを考え、それを実行する。やっていること自体は俺と変わらないはずなのに、師匠は息をするかのようにそれをやってのける。
俺は一体倒すだけでこの手は使えないだとかあの手にした方がいいだとかあれこれ考えて大変だったのに、師匠はそれを何度も何度もやっておきながら消耗している素振りを全く見せない。
こんなに楽々と危険なモンスターが闊歩するダンジョンを進むなんて──とも思ったが、逆にこのくらいのモンスターは楽々倒せる実力がないと、トレトのダンジョンには潜るべきではないのかもしれない。
「コルネくん、ここどっちだっけ?」
「そこは右ですね」
俺は手元の地図を見ながら答える。ラムハのときのように俺は紙とペンでマッピングをしながら師匠の後ろを歩いている。
マップはここに潜ったパーティならどこも作りながら進んだはずだが、その情報は市場には出回っていない。ほとんどの人にとっては潜れないダンジョンのマップなど無用の長物だ。需要などないに等しいものを買う商人がいるはずもない。
ここのダンジョンはラムハの比ではないほど巨大でマッピングが難しいのだが、今のところはまともなマップが作れている気がする。
まあ多少マップが狂っていても師匠がモンスターをバタバタと倒していくので、いずれは外に出られるはずだ。そんなに気負うことなくマッピングできる。
「コルネくん、いい感じのモンスター出たから倒す?」
「はい」
前でモンスターの相手をしていた師匠の呼びかけに、俺は答えてからモンスターを視認する。
通路の一つ一つが長いので、遠くにいるモンスターも見通せる。こちらに向かってきているのは──サイクロプス、一つめの巨人のモンスターだ。
たまにこうやって師匠が腕試しによさそうなモンスターを見繕って声をかけてくれるので、その度に倒しているというわけだ。
持っていたペンと紙を素早く師匠に預け、俺は剣を抜く。サイクロプスは動きがそんなに早くなく、オルトロスのような壁にぶつける戦法はとれなさそうだ。
このモンスターの特徴は巨体──ならばその分足元が見えづらくなるはず。サイクロプスの足元の床を盛り上げると、こちらに集中して真っ直ぐ前を見ていたサイクロプスは盛大に転ぶ。
その隙に俺は素早くサイクロプスの背に飛び乗り、首に思いっきり炎の魔法剣を突き立てる。すると、存在感のある巨体はサラサラと解けていき、足場を失った俺は魔力操作でゆっくりと着地する。
ダンジョンのモンスターは俺たちのような侵入者が珍しいのか真っ直ぐ向かってくることが多く、土魔法が便利だ。
通常の土なら少しバランスを崩す程度だが、ダンジョンの床は硬いのでぶつかったときの衝撃も大きいし、足元を盛り上げてもしっかりとモンスターのバランスを崩してくれる。
「あれは……もしかして階段?」
俺がサイクロプスの魔力結晶を袋にしまっていると、師匠が呟く。
目を凝らして見るとたしかに向こうの床に穴が空いている部分がある。こんな硬い床に穴を開けるモンスターも冒険者もいるはずがないから十中八九階段だろう。
こうして俺たちは二階層への入り口を見つけたのだった。
息をするように素早く剣を振るい、落ちた魔力結晶を拾う──師匠の闘いぶりはとても安定していて、型なのではないかと錯覚してしまうほど迷いがない。
向かってくるモンスターを見て瞬時にどう対応するかを考え、それを実行する。やっていること自体は俺と変わらないはずなのに、師匠は息をするかのようにそれをやってのける。
俺は一体倒すだけでこの手は使えないだとかあの手にした方がいいだとかあれこれ考えて大変だったのに、師匠はそれを何度も何度もやっておきながら消耗している素振りを全く見せない。
こんなに楽々と危険なモンスターが闊歩するダンジョンを進むなんて──とも思ったが、逆にこのくらいのモンスターは楽々倒せる実力がないと、トレトのダンジョンには潜るべきではないのかもしれない。
「コルネくん、ここどっちだっけ?」
「そこは右ですね」
俺は手元の地図を見ながら答える。ラムハのときのように俺は紙とペンでマッピングをしながら師匠の後ろを歩いている。
マップはここに潜ったパーティならどこも作りながら進んだはずだが、その情報は市場には出回っていない。ほとんどの人にとっては潜れないダンジョンのマップなど無用の長物だ。需要などないに等しいものを買う商人がいるはずもない。
ここのダンジョンはラムハの比ではないほど巨大でマッピングが難しいのだが、今のところはまともなマップが作れている気がする。
まあ多少マップが狂っていても師匠がモンスターをバタバタと倒していくので、いずれは外に出られるはずだ。そんなに気負うことなくマッピングできる。
「コルネくん、いい感じのモンスター出たから倒す?」
「はい」
前でモンスターの相手をしていた師匠の呼びかけに、俺は答えてからモンスターを視認する。
通路の一つ一つが長いので、遠くにいるモンスターも見通せる。こちらに向かってきているのは──サイクロプス、一つめの巨人のモンスターだ。
たまにこうやって師匠が腕試しによさそうなモンスターを見繕って声をかけてくれるので、その度に倒しているというわけだ。
持っていたペンと紙を素早く師匠に預け、俺は剣を抜く。サイクロプスは動きがそんなに早くなく、オルトロスのような壁にぶつける戦法はとれなさそうだ。
このモンスターの特徴は巨体──ならばその分足元が見えづらくなるはず。サイクロプスの足元の床を盛り上げると、こちらに集中して真っ直ぐ前を見ていたサイクロプスは盛大に転ぶ。
その隙に俺は素早くサイクロプスの背に飛び乗り、首に思いっきり炎の魔法剣を突き立てる。すると、存在感のある巨体はサラサラと解けていき、足場を失った俺は魔力操作でゆっくりと着地する。
ダンジョンのモンスターは俺たちのような侵入者が珍しいのか真っ直ぐ向かってくることが多く、土魔法が便利だ。
通常の土なら少しバランスを崩す程度だが、ダンジョンの床は硬いのでぶつかったときの衝撃も大きいし、足元を盛り上げてもしっかりとモンスターのバランスを崩してくれる。
「あれは……もしかして階段?」
俺がサイクロプスの魔力結晶を袋にしまっていると、師匠が呟く。
目を凝らして見るとたしかに向こうの床に穴が空いている部分がある。こんな硬い床に穴を開けるモンスターも冒険者もいるはずがないから十中八九階段だろう。
こうして俺たちは二階層への入り口を見つけたのだった。
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