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第十章 Aランク昇格編
第221話 アンデッド
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最後のクエストで倒すのはアンデッドだ。アンデッドはここトレトでしか見られないモンスターだ。
人間の骸骨によく似た不気味な姿をしており、見た目が苦手な人も多い。戦争が起きダンジョンが発生した百年前から出現するようになったと言われている謎多きモンスターだ。
まずこのモンスターは他のモンスターとは違い、倒すと消えてなくなり代わりに黒い石のようなものが残る。これは昔は戦争で死んだ兵士の亡骸が動き出し、倒されたことで成仏したからだと思われていたが、今では違う説が定説とされている。
その説というのは、ダンジョンから漏れ出した魔力が兵士の怨念と合わさり実体を得たというものだ。倒すと黒い石が残る点がダンジョンのモンスターと似ており、その石にほんの少しだけ魔法を使いやすくする効果があることから広く信じられている。
アンデッドが多く生息するというダンジョンに近い森でアンデッドを探す。奥に入っていくにつれ、高い木々から延びた枝が日光を遮り鬱蒼とした雰囲気になっていく。
近くでたくさんの血が流れたという事実を知っているからか、眼前に広がる暗緑色の景色がひどく不気味に映る。遠くから聞こえてくるモンスターの声までも気味が悪く感じてしまう。
俺はおばけの類が特に苦手なわけではないが、さすがにこの状況は誰しもが恐怖を覚えるだろう。
しばらく歩くと、緑の中に目立つ白い頭が遠くに見えた。間違いない──アンデッドだ。こちらからはっきり目視できる距離までアンデッドが近づくと、俺は土魔法を発動させる。素早くアンデッドの周りの土を隆起させ、四方を土壁で囲みアンデッドの動きを封じる。
よし、ここまでは完璧だ。正確に四方に土壁を出すのを何度も練習した甲斐があった。
今ごろは攻撃を受けていることに気付き、狼狽えているであろうアンデッドに向かって俺は走りだす。
アンデッドは今までのモンスターの中で俺にとって一番の強敵だ。アンデッドには回復魔法が有効だとされているが、俺には使えない。一般的な系統の魔法は威力の低いものなら一通り扱えるが、回復魔法だけは使えないのだ。
身のない骨だけの軀に剣や他の魔法はほとんど通らないと言われていて、俺には有効な手段がなかった。だから師匠と一緒に他の攻撃手段を模索した。そしてついに効果がありそうなものが見つかった──圧し潰すのだ。
俺は地面を蹴り、木の枝に当たらない高さまで跳ぶ。そしてジャンプの勢いがなくなり自由落下を始めるところで魔力操作と風の魔法を使い、一気に加速する。
目標は土壁を登ろうとしているアンデッド。高いところから落ちたものは、さほど重くないものでもすさまじい殺傷力を持つ。それに加え、人為的な力で加速させればアンデッドの硬い体でも耐えられないほどの衝撃が生まれるはず。
俺の足先がアンデッドの肩を捉える。途端にバキバキという音とともにアンデッドの肩が足に押しこまれどんどん下がっていく。
こちらにもかなりの衝撃が伝わってくるが、それもすぐに終わる。腰の高さほどまで肩だったものが押し込まれた時点でフッと足に伝わっていた感覚が消える。息絶えて石になったのだ。
急いで魔力操作と風の魔法で自分の体を引き上げる。アンデッドの体で勢いが多少殺されたとはいえ、このままでは勢いよく地面や土壁に叩きつけられてしまう。
「ウッ……!」
勢いは完全に殺しきれず、ぶつかった衝撃で息が漏れ出てしまう。しかしこのくらいなら許容範囲だ。痛む背中をさすりながら俺はゆっくりと起き上がり、また次のアンデッドを探しはじめた。
人間の骸骨によく似た不気味な姿をしており、見た目が苦手な人も多い。戦争が起きダンジョンが発生した百年前から出現するようになったと言われている謎多きモンスターだ。
まずこのモンスターは他のモンスターとは違い、倒すと消えてなくなり代わりに黒い石のようなものが残る。これは昔は戦争で死んだ兵士の亡骸が動き出し、倒されたことで成仏したからだと思われていたが、今では違う説が定説とされている。
その説というのは、ダンジョンから漏れ出した魔力が兵士の怨念と合わさり実体を得たというものだ。倒すと黒い石が残る点がダンジョンのモンスターと似ており、その石にほんの少しだけ魔法を使いやすくする効果があることから広く信じられている。
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近くでたくさんの血が流れたという事実を知っているからか、眼前に広がる暗緑色の景色がひどく不気味に映る。遠くから聞こえてくるモンスターの声までも気味が悪く感じてしまう。
俺はおばけの類が特に苦手なわけではないが、さすがにこの状況は誰しもが恐怖を覚えるだろう。
しばらく歩くと、緑の中に目立つ白い頭が遠くに見えた。間違いない──アンデッドだ。こちらからはっきり目視できる距離までアンデッドが近づくと、俺は土魔法を発動させる。素早くアンデッドの周りの土を隆起させ、四方を土壁で囲みアンデッドの動きを封じる。
よし、ここまでは完璧だ。正確に四方に土壁を出すのを何度も練習した甲斐があった。
今ごろは攻撃を受けていることに気付き、狼狽えているであろうアンデッドに向かって俺は走りだす。
アンデッドは今までのモンスターの中で俺にとって一番の強敵だ。アンデッドには回復魔法が有効だとされているが、俺には使えない。一般的な系統の魔法は威力の低いものなら一通り扱えるが、回復魔法だけは使えないのだ。
身のない骨だけの軀に剣や他の魔法はほとんど通らないと言われていて、俺には有効な手段がなかった。だから師匠と一緒に他の攻撃手段を模索した。そしてついに効果がありそうなものが見つかった──圧し潰すのだ。
俺は地面を蹴り、木の枝に当たらない高さまで跳ぶ。そしてジャンプの勢いがなくなり自由落下を始めるところで魔力操作と風の魔法を使い、一気に加速する。
目標は土壁を登ろうとしているアンデッド。高いところから落ちたものは、さほど重くないものでもすさまじい殺傷力を持つ。それに加え、人為的な力で加速させればアンデッドの硬い体でも耐えられないほどの衝撃が生まれるはず。
俺の足先がアンデッドの肩を捉える。途端にバキバキという音とともにアンデッドの肩が足に押しこまれどんどん下がっていく。
こちらにもかなりの衝撃が伝わってくるが、それもすぐに終わる。腰の高さほどまで肩だったものが押し込まれた時点でフッと足に伝わっていた感覚が消える。息絶えて石になったのだ。
急いで魔力操作と風の魔法で自分の体を引き上げる。アンデッドの体で勢いが多少殺されたとはいえ、このままでは勢いよく地面や土壁に叩きつけられてしまう。
「ウッ……!」
勢いは完全に殺しきれず、ぶつかった衝撃で息が漏れ出てしまう。しかしこのくらいなら許容範囲だ。痛む背中をさすりながら俺はゆっくりと起き上がり、また次のアンデッドを探しはじめた。
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