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第十章 Aランク昇格編
第219話 Aランク昇格への挑戦 其の九
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七十一日目。
俺は予定通りラムハまで帰ってきていた。また、朝早くに出立してかなり遅くになんとか辿りついたといったところだ。とりあえず明るい街の中に入れたので、あとはゆっくりと道場まで歩けばいい。
そして肝心のクエストの進み具合は──残るモンスターはあと二体、つまりトレトでのクエストを残すだけとなっていた。
手紙を書いたあとはなかなかクエストが進まず、そのままのペースだとあともう一体残るところだったのだが、それだとわざわざ他の場所に寄って残ったクエストを終わらせてからトレトで師匠と合流しなければいけなくなる。
もしそうなると待ち合わせ場所や時間の指定など面倒なことが多い。それよりは一緒にトレトまで行ってクエストを終わらせてそのままダンジョンに潜る方が待ち合わせをしなくてもいいし、圧倒的に楽だ。
おそらくトレトまで師匠は馬車で行くつもりだろうから、それに乗っかれば俺も楽ができる。今までも馬車を使いたかったが、北のあたりは坂が多く馬車を使うとかえって俺が走るよりも遅くなってしまうため使わなかった。
しかしトレトまでならスムーズに行けるはずだし、その上ゴールは目前なのだからもうそんなに急ぐ必要もない。ゆっくりと馬車に揺られよう。
そのために一日クエストに行って一日休むというサイクルにのっとれば休むはずの最終日にクエストに行き、一体倒してきてあとはトレトに行くだけでいいようにしてきた。次の日からラムハまで走らなければならないことを考えれば休むべきなのだが、少し無理をしてでもここは行くべきだと思った。
その結果、着いたのがまた日没後になってしまったのだが、二日で着けたのでそこはよしとしよう。
ゆっくり歩いていたので遅くなってしまったが、やっと道場まで着いた──と思ったら、まだ俺は敷地に入ってないというのに俺が来たのに気付いたのか、向こうにある扉がいきなりバァンと勢いよく開き、師匠が飛び出してくる。
「コルネくんおかえり!」
「ただいま帰りました」
師匠の声は響き渡るほど大きくはなかったのだが、あまりにも速くドアを開けたために起こった風が通りまで届き、通りにいた人たちが驚いて立ち止まってこちらを見てから去っていく。
通行人たちの視線に恥ずかしそうに頭を掻きながら、ペコペコと軽く頭を下げる師匠。
風が来たときは俺もびっくりした。扉から通りまでは遠くはないが近くもない。開けただけでそんなに強い風が起こることなんてあるんだろうか──いや実際にあったのだが。ドアの繋ぎ目にある蝶番が心配だ。
「それで、クエストはどこまで進んだのかな?」
「あと二体です」
やたらとそわそわしている様子の師匠はその言葉を聞いた途端に、ぱあっと笑顔になる。やはりというか、そりゃあ師匠は俺のクエストの進み具合を気にするよな。それ次第でトレトへの出発日が変わるし。
「じゃあ一緒にトレトに行けるね」
ものすごくいい笑顔でそう言うと師匠は俺と一緒に道場へと上がり、今度はゆっくりと扉を閉めるのだった。
俺は予定通りラムハまで帰ってきていた。また、朝早くに出立してかなり遅くになんとか辿りついたといったところだ。とりあえず明るい街の中に入れたので、あとはゆっくりと道場まで歩けばいい。
そして肝心のクエストの進み具合は──残るモンスターはあと二体、つまりトレトでのクエストを残すだけとなっていた。
手紙を書いたあとはなかなかクエストが進まず、そのままのペースだとあともう一体残るところだったのだが、それだとわざわざ他の場所に寄って残ったクエストを終わらせてからトレトで師匠と合流しなければいけなくなる。
もしそうなると待ち合わせ場所や時間の指定など面倒なことが多い。それよりは一緒にトレトまで行ってクエストを終わらせてそのままダンジョンに潜る方が待ち合わせをしなくてもいいし、圧倒的に楽だ。
おそらくトレトまで師匠は馬車で行くつもりだろうから、それに乗っかれば俺も楽ができる。今までも馬車を使いたかったが、北のあたりは坂が多く馬車を使うとかえって俺が走るよりも遅くなってしまうため使わなかった。
しかしトレトまでならスムーズに行けるはずだし、その上ゴールは目前なのだからもうそんなに急ぐ必要もない。ゆっくりと馬車に揺られよう。
そのために一日クエストに行って一日休むというサイクルにのっとれば休むはずの最終日にクエストに行き、一体倒してきてあとはトレトに行くだけでいいようにしてきた。次の日からラムハまで走らなければならないことを考えれば休むべきなのだが、少し無理をしてでもここは行くべきだと思った。
その結果、着いたのがまた日没後になってしまったのだが、二日で着けたのでそこはよしとしよう。
ゆっくり歩いていたので遅くなってしまったが、やっと道場まで着いた──と思ったら、まだ俺は敷地に入ってないというのに俺が来たのに気付いたのか、向こうにある扉がいきなりバァンと勢いよく開き、師匠が飛び出してくる。
「コルネくんおかえり!」
「ただいま帰りました」
師匠の声は響き渡るほど大きくはなかったのだが、あまりにも速くドアを開けたために起こった風が通りまで届き、通りにいた人たちが驚いて立ち止まってこちらを見てから去っていく。
通行人たちの視線に恥ずかしそうに頭を掻きながら、ペコペコと軽く頭を下げる師匠。
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「あと二体です」
やたらとそわそわしている様子の師匠はその言葉を聞いた途端に、ぱあっと笑顔になる。やはりというか、そりゃあ師匠は俺のクエストの進み具合を気にするよな。それ次第でトレトへの出発日が変わるし。
「じゃあ一緒にトレトに行けるね」
ものすごくいい笑顔でそう言うと師匠は俺と一緒に道場へと上がり、今度はゆっくりと扉を閉めるのだった。
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