パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

文字の大きさ
上 下
209 / 328
第十章 Aランク昇格編

第203話 マンドラゴラ 其の三

しおりを挟む
 いくらかシャベルで掘っていくと分かったが、この作業は常に気を張り詰めなければならず、精神的にきつい。

 地面を掘ったらすぐに、マンドラゴラが飛び出してきても捕獲できるようにシャベルを手放し、両手で構える──これを一回ごとにするのがかなり面倒だった。だから少しでも手間を省くために、土魔法を使い、手を使わずに掘り起こす方法に切り替えた。

 狭い範囲の土を少しだけ盛り上げるという緻密な作業は今までなら苦戦していただろうが、半年の間に土魔法もしっかり鍛えたので、出来るようになっているのは知っている。

 今から盛り上げる地面の周りに捕まえられるように両手を構えて、土魔法を使う。もしマンドラゴラが出てきたら素早く両手で捕まえられるはずだ。

 相変わらず集中力は必要だが、これならペースアップできそうだ。



 たしかにペースアップはしたが、なかなかマンドラゴラは見つからない。一帯にある葉っぱを調べつくしては移動し、調べつくしてはまた移動し──三十回くらいはもう繰り返しただろうか。

 あまり人が入らないであろう奥なら案外すぐに見つかってしまうかも──なんて密かに期待していたのだが、さすがに甘かったようだ。

 この辺もこの葉っぱを調べたら終わりか──左から来たから次は右の方に行ってみるか。気が緩んで次のことを考えながら魔法を使ってしまいそうになり、一旦深呼吸をする。

 集中しなければ……これがマンドラゴラの可能性だってあるのだ。マンドラゴラを二体捕まえるまで気を抜いてはいけない。気合いを入れ直して、魔法で土を盛り上げる。

「キィィィィィィィィィィィ」

 その刹那、土の中から出ているにもかかわらず、そこら中に響き渡るほど大きな金切り声が聞こえた。とてつもなくうるさい声を至近距離で出されて一瞬だけ怯んでしまいそうになるが、ここで逃がしてしまえば全てが水の泡となってしまう。

 盛り上がった土に被せるように、素早く両手を動かす。すると、土から飛び出そうとしたマンドラゴラが右手に当たる。

 小さな体からは想像もつかないほどの衝撃が伝わる。その結果、手にぶつかったマンドラゴラの勢いを殺しきれずに、右手が少し浮いてしまう。

 これはまずいと思い、左手を右手の下に滑り込ませると硬い感触がある。逃げられないように素早く右手を四本の指が入るくらいまで浮かせ、下から突いてくるマンドラゴラをしっかりと握る。

 握ってもなお、マンドラゴラはゴンゴンと勢いよく俺の手を突き上げてくる。このままだといつ逃げられるか分からない。早いところ締めてしまおう。

 まずは頭の葉っぱをむしり取る。全部むしると、かなりおとなしくなるらしい。てのひらで上からマンドラゴラを押さえながら右手の親指と人差し指で茎を折っていくと、金切り声は大きく、暴れ方は激しくなる。

 全部葉をむしってしばらく経つと、あんなにうるさかった声も弱々しいものになってきた。そろそろいいかと思い、俺はさっとナイフを取り出して、茎の付け根よりも少し下を切る──するとマンドラゴラは動きをぴたりと止め、周囲には静寂が訪れる。

 まずは一体確保だ。腰に下げていた袋に丁寧にマンドラゴラを入れ、口を縛る。この調子ならもしかすると昼過ぎくらいにはギルドに戻れるかもしれない。師匠にいい報告ができるように頑張らないと。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

剣しか取り柄がないという事で追放された元冒険者、辺境の村で魔物を討伐すると弟子志願者が続々訪れ剣技道場を開く

burazu
ファンタジー
剣の得意冒険者リッキーはある日剣技だけが取り柄しかないという理由でパーティーから追放される。その後誰も自分を知らない村へと移住し、気ままな生活をするつもりが村を襲う魔物を倒した事で弓の得意エルフ、槍の得意元傭兵、魔法の得意踊り子、投擲の得意演奏者と様々な者たちが押しかけ弟子入りを志願する。 そんな彼らに剣技の修行をつけながらも冒険者時代にはない充実感を得ていくリッキーだったのだ。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

―異質― 邂逅の編/日本国の〝隊〟、その異世界を巡る叙事詩――《第一部完結》

EPIC
SF
日本国の混成1個中隊、そして超常的存在。異世界へ―― とある別の歴史を歩んだ世界。 その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。 第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる―― 日本国陸隊の有事官、――〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟。 歪で醜く禍々しい容姿と、常識外れの身体能力、そしてスタンスを持つ、隊員として非常に異質な存在である彼。 そんな隊員である制刻は、陸隊の行う大規模な演習に参加中であったが、その最中に取った一時的な休眠の途中で、不可解な空間へと導かれる。そして、そこで会った作業服と白衣姿の謎の人物からこう告げられた。 「異なる世界から我々の世界に、殴り込みを掛けようとしている奴らがいる。先手を打ちその世界に踏み込み、この企みを潰せ」――と。 そして再び目を覚ました時、制刻は――そして制刻の所属する普通科小隊を始めとする、各職種混成の約一個中隊は。剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する未知の世界へと降り立っていた――。 制刻を始めとする異質な隊員等。 そして問題部隊、〝第54普通科連隊〟を始めとする各部隊。 元居た世界の常識が通用しないその異世界を、それを越える常識外れな存在が、掻き乱し始める。 〇案内と注意 1) このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。 2) 部隊規模(始めは中隊規模)での転移物となります。 3) チャプター3くらいまでは単一事件をいくつか描き、チャプター4くらいから単一事件を混ぜつつ、一つの大筋にだんだん乗っていく流れになっています。 4) 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。ぶっ飛んでます。かなりなんでも有りです。 5) 小説家になろう、カクヨムにてすでに投稿済のものになりますが、そちらより一話当たり分量を多くして話数を減らす整理のし直しを行っています。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

八十神天従は魔法学園の異端児~神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった

根上真気
ファンタジー
高校生活初日。神社の息子の八十神は異世界に転移してしまい危機的状況に陥るが、神使の白兎と凄腕美人魔術師に救われ、あれよあれよという間にリュケイオン魔法学園へ入学することに。期待に胸を膨らますも、彼を待ち受ける「特異クラス」は厄介な問題児だらけだった...!?日本の神様の力を魔法として行使する主人公、八十神。彼はその異質な能力で様々な苦難を乗り越えながら、新たに出会う仲間とともに成長していく。学園×魔法の青春バトルファンタジーここに開幕!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

処理中です...