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第九章 ルミーヴィアへの旅編
第188話 初めての修行(マリー視点)
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みんなを見送って寂しい気持ちはあるが、ここでうじうじしてはいられない。この後、レネさんとの初めての修行があるのだ。
「まずは回復魔法を見せてもらおうか」
レネさん──師匠が凝視するなかで、私は回復魔法を使う。
「ヒール」
集中して小さく唱えると、私自身に回復魔法がかかる──が、今は体の不調もないため特に変化はない。
「変わらなかっただろ? 変わらなかったってことはそれをアンタは戻すべき本来の状態だと認識してるってことだ。でもそれを鮮明にイメージしていたかい?」
なるほど、今はどこも痛くないし体調が悪いわけでもない──たしかにコンディションはかなりいい方だ。
「アンタはまだ戻すべき状態に対しての認識が甘いね。回復魔法は体が治るのを手助けするものだ──だから、どうかければ治りが早いのか、より少ない魔力で治せるのかを考えるべきだ。例えば指先を怪我して血が出たとき、どう治すべきだと思う?」
「血管と皮膚を修復する……でしょうか」
「その通りだ。漠然とかけるのではなく、そのように意識してかけた方が魔力の効率もいいし、綺麗に治る」
今までは何も考えずになんとなく「元の状態に」と魔法をかけていたから意識したことはなかった。根本から意識を変えなければならないようだ。
「じゃあ、それを意識しながらまずは回復魔法千回、いってみようか」
「せ、千回!?」
さすがに千回は多すぎるんじゃ──いや、魔法発動にかかる時間は短いから意外とすぐ終わってしまうのかもしれない。とにかくここに来てしまった以上、やるしかないのだ。
「ヒール……ヒール……ヒール……」
「はい、二百! 今いい感じだからそのままキープ!」
冒険者ギルドに連れてこられた私はひたすらヒールをかけていた。テーブルの上には縫物に使う針が立てられており、そこに師匠と協力してもらっている師匠のパーティメンバーの方が順番に指をさしていく。
それを一人ずつ私が治していくのだ。皮膚や血管を意識するには実際にやるしかないということらしい。
浅い傷をつけるだけとはいえ、痛いものは痛いし、何百回もするのは苦痛だろう。師匠にもパーティメンバーの方にも申し訳なく思う。
私も指を刺すと言ったが、「アンタもやるとその分ヒールが途切れて時間が長くなる」と言われてしまった。たしかにその通りなので、私は痛い思いをせずにのうのうとヒールをかけ続けているのだが──
「あれ何してんの?」
「回復魔法の練習だってさ」
ときおり、ギルドに入ってきた冒険者たちがこちらをジロジロと見てそういった会話をする。たしかにこの光景は私から見ても異質なためは仕方がないとは思うのだが、やはり少し恥ずかしい。
「──二百五十、一、二……」
ときどき途切れる師匠のカウントはまだまだ終わりには程遠いことを指している。集中力だけがゴリゴリと削られていくけど、こんなに協力してもらっているのだからやりきらなくちゃ。
「まずは回復魔法を見せてもらおうか」
レネさん──師匠が凝視するなかで、私は回復魔法を使う。
「ヒール」
集中して小さく唱えると、私自身に回復魔法がかかる──が、今は体の不調もないため特に変化はない。
「変わらなかっただろ? 変わらなかったってことはそれをアンタは戻すべき本来の状態だと認識してるってことだ。でもそれを鮮明にイメージしていたかい?」
なるほど、今はどこも痛くないし体調が悪いわけでもない──たしかにコンディションはかなりいい方だ。
「アンタはまだ戻すべき状態に対しての認識が甘いね。回復魔法は体が治るのを手助けするものだ──だから、どうかければ治りが早いのか、より少ない魔力で治せるのかを考えるべきだ。例えば指先を怪我して血が出たとき、どう治すべきだと思う?」
「血管と皮膚を修復する……でしょうか」
「その通りだ。漠然とかけるのではなく、そのように意識してかけた方が魔力の効率もいいし、綺麗に治る」
今までは何も考えずになんとなく「元の状態に」と魔法をかけていたから意識したことはなかった。根本から意識を変えなければならないようだ。
「じゃあ、それを意識しながらまずは回復魔法千回、いってみようか」
「せ、千回!?」
さすがに千回は多すぎるんじゃ──いや、魔法発動にかかる時間は短いから意外とすぐ終わってしまうのかもしれない。とにかくここに来てしまった以上、やるしかないのだ。
「ヒール……ヒール……ヒール……」
「はい、二百! 今いい感じだからそのままキープ!」
冒険者ギルドに連れてこられた私はひたすらヒールをかけていた。テーブルの上には縫物に使う針が立てられており、そこに師匠と協力してもらっている師匠のパーティメンバーの方が順番に指をさしていく。
それを一人ずつ私が治していくのだ。皮膚や血管を意識するには実際にやるしかないということらしい。
浅い傷をつけるだけとはいえ、痛いものは痛いし、何百回もするのは苦痛だろう。師匠にもパーティメンバーの方にも申し訳なく思う。
私も指を刺すと言ったが、「アンタもやるとその分ヒールが途切れて時間が長くなる」と言われてしまった。たしかにその通りなので、私は痛い思いをせずにのうのうとヒールをかけ続けているのだが──
「あれ何してんの?」
「回復魔法の練習だってさ」
ときおり、ギルドに入ってきた冒険者たちがこちらをジロジロと見てそういった会話をする。たしかにこの光景は私から見ても異質なためは仕方がないとは思うのだが、やはり少し恥ずかしい。
「──二百五十、一、二……」
ときどき途切れる師匠のカウントはまだまだ終わりには程遠いことを指している。集中力だけがゴリゴリと削られていくけど、こんなに協力してもらっているのだからやりきらなくちゃ。
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