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第九章 ルミーヴィアへの旅編
第173話 ルミーヴィアへの旅 其の二(ロンド視点)
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出発前夜、僕は旅の前だというのに珍しく心配事を抱えていた。それは──
(二人も知らない子がいて、気まずい……)
アルノくんが来ることになった経緯を聞く限り、おそらくアルノくんとマリーさんの仲はかなりいい。
このままだと歩きながら三人が喋っているのを、僕が保護者のように後ろでひっそりと眺めることになるだろう。少しくらいならどうということはないが、三日間ずっとこれは正直きつい。
僕がいいと言ってしまった手前、これは仕方のないことなのだが──でも、あそこでダメ、とは言えないじゃないか。
もちろん楽しみではあったのだが、このことをぐるぐると考えてしまい、僕はなかなか寝付けなかった。
翌日、二人との顔合わせをする。マリーちゃんの方は一度うちに訪ねてきたことがあったから顔は知っていたが、アルノくんの方は完全に初対面だ。
「はっ、はじめまして。アルノと申します。あ、あの今回は本当にロンド様と旅ができるということで──図々しいお願いだったと思いますが、きょ、許可していただいてありがとうございます」
緊張した面持ちでそう挨拶するのは、凛としていながらもどこか幼さを残した青年だった。
初対面にも関わらずなぜか親しみが湧くのは、どことなくコルネくんに似ているからだろうか。顔が似ているとは思わないのだが、纏う雰囲気というか醸し出されるオーラというか──そういったものがコルネくんと近い。
コルネくんが兄と慕っているのだから悪い子ではないと分かっていたが、どんな子が来るのかとドキドキだったため、ホッとした。
マリーちゃんが彼女のお父様へと別れを告げ、歩きだす。父、か──僕が冒険者になったときに父がいたとしたら、こうして抱擁を交わし泣いてくれたのだろうか──ふと、そう考えてしまう。
いや、いいのだ、と浮かんでしまった考えをすぐにかき消す。今は僕にも父のような存在がいる。だから、いいのだ。
そうして僕らが歩きだすと、気が付けばなぜか四人で横一列になっていた。いつの間にか僕はコルネくんとアルノくんに挟まれていて、アルノくんに話しかけれられていた。
「あの、昔からずっとロンド様に憧れてて──握手していただいてもいいですか?」
僕が握手をするとアルノくんはさっきまでの凛々しい表情はどこに行ったのかというように緩んだ表情をする。いきなりのことに驚いたが、正直少し面白い。
コルネくんはマリーちゃんと楽しく話しているようだし、このままいけば僕が引率のように一人寂しく見守るということにはならなさそうだ。
(二人も知らない子がいて、気まずい……)
アルノくんが来ることになった経緯を聞く限り、おそらくアルノくんとマリーさんの仲はかなりいい。
このままだと歩きながら三人が喋っているのを、僕が保護者のように後ろでひっそりと眺めることになるだろう。少しくらいならどうということはないが、三日間ずっとこれは正直きつい。
僕がいいと言ってしまった手前、これは仕方のないことなのだが──でも、あそこでダメ、とは言えないじゃないか。
もちろん楽しみではあったのだが、このことをぐるぐると考えてしまい、僕はなかなか寝付けなかった。
翌日、二人との顔合わせをする。マリーちゃんの方は一度うちに訪ねてきたことがあったから顔は知っていたが、アルノくんの方は完全に初対面だ。
「はっ、はじめまして。アルノと申します。あ、あの今回は本当にロンド様と旅ができるということで──図々しいお願いだったと思いますが、きょ、許可していただいてありがとうございます」
緊張した面持ちでそう挨拶するのは、凛としていながらもどこか幼さを残した青年だった。
初対面にも関わらずなぜか親しみが湧くのは、どことなくコルネくんに似ているからだろうか。顔が似ているとは思わないのだが、纏う雰囲気というか醸し出されるオーラというか──そういったものがコルネくんと近い。
コルネくんが兄と慕っているのだから悪い子ではないと分かっていたが、どんな子が来るのかとドキドキだったため、ホッとした。
マリーちゃんが彼女のお父様へと別れを告げ、歩きだす。父、か──僕が冒険者になったときに父がいたとしたら、こうして抱擁を交わし泣いてくれたのだろうか──ふと、そう考えてしまう。
いや、いいのだ、と浮かんでしまった考えをすぐにかき消す。今は僕にも父のような存在がいる。だから、いいのだ。
そうして僕らが歩きだすと、気が付けばなぜか四人で横一列になっていた。いつの間にか僕はコルネくんとアルノくんに挟まれていて、アルノくんに話しかけれられていた。
「あの、昔からずっとロンド様に憧れてて──握手していただいてもいいですか?」
僕が握手をするとアルノくんはさっきまでの凛々しい表情はどこに行ったのかというように緩んだ表情をする。いきなりのことに驚いたが、正直少し面白い。
コルネくんはマリーちゃんと楽しく話しているようだし、このままいけば僕が引率のように一人寂しく見守るということにはならなさそうだ。
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