パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

第八章 新しいメニューと緊急クエスト編

第160話 オーガ討伐を終えて

　子オーガを倒した後、洞穴から出る足跡が親オーガのものしかないことをしっかり確認してから、下山した。

　方角だけ確認して、ずんずんとハイペースで斜面を下っていくロンド様についていったら、俺が案内する間もなく山の入り口まで戻ってこれてしまった。

　近くで見張りをしていた冒険者にオーガを倒したと伝え、他の見張りにも伝えるように言った後、ロンド様はオーガを倒したという報せを早く届けるために村まで走ろうと言い出す。

　あんなペースで山を下った後に走る体力は俺には残っていないので、一人で行ってきてくださいと伝えておいた。

　討伐を全部一人でやって、走る一歩手前のスピードで山を下って、それでもまだ走る体力が残っているなんて、体力おばけとしか言いようがない。オーガとの戦闘では魔法の面が強いのかと思ったが、単純に体力面もめちゃくちゃ強いな。

　＊　＊　＊

　村へと走り、冒険者ギルドの扉を勢いよく開ける。みんなを早く安心させなくちゃ。

「オーガを倒してきたよ！」

　耳を入れた袋を掲げてそう言うと、ギルドで待機していた冒険者たちは突然開いたドアに驚いた様子だったが、すぐに大きな勝ち鬨を上げる。

　オーガは親子だったことを報告しながら、討伐の証拠として袋から耳を取り出してギルドに提出すると、「たしかに」という言葉が返ってくる。よかった──何も言われなかったということは、討伐部位は耳で合っていたみたいだ。

　ギルドにいた冒険者が僕の周りに集まって次々と礼を述べてくる。オーガが出たとなれば村から逃げだしてもいい状況だったのに、そうせずにいたのはきっとみんなこのヴィレアに愛着があるからなのだろう。

　どうもと皆に返しながら、目線でコルネくんを探す。さすがにあのあと道で倒れたりはしてないとは思うが、少し心配だった。

　ギルドを見回してもコルネくんの姿がないので、集まってきた冒険者に訊いてみると見張りに行ったようだった。最低限オーガを足止めできそうな者は見張りに行く──いい判断をしたと思う。後で褒めてあげなくちゃ。

　僕が帰ってきてからギルドはすっかりお祭り気分になっていて、気付けばどこからともなく冒険者が酒を持ってきて宴の準備をしているようだ。

　しばらくすると見張り組が白髪の老人を連れて帰ってきた。コルネくんも一緒だ。

「わたしはこの村の村長です。このたびはオーガを倒していただき本当にありがとうございます」

　村長と名乗る老人は深々と頭を下げる。

「大したものは用意できませぬが、宴でもてなしとうございます。皆さま、こちらへ」

　そう言って村長が歩き出すと、冒険者たちの盛り上がりは最高潮に達し、まだ見ぬご馳走に胸を膨らませてぞろぞろとついていくのだった。