164 / 328
第八章 新しいメニューと緊急クエスト編
第158話 オーガとの戦い
しおりを挟む
頭から伸びる二本の角に、筋肉質な太い腕は人間の胴体ほどもある。体のつくりは人間とよく似ているが、木々に紛れるためか肌の色が緑だ。
俺は初めて見るオーガに本能的な恐怖を抱いていた。あの腕が胴体に一度直撃しただけで、おそらく死ぬ──たとえ運よく即死を免れたとしても、しばらく動けないだろうから死ぬ。
頼むからこちらに気付かないでくれ。早く……早く過ぎ去ってくれ。今から倒さないといけないと分かっているのに、頭の中が恐怖でいっぱいになる。
「行ってくるよ。きみはここから動かないで」
ロンド様の言葉に俺が震えながらコクコクと頷くと、ロンド様は切った蔓を静かにかき分けて、のしのしとだんだん離れていくオーガの方へと向かっていく。
蔓の擦れあう音がどうしてもしてしまうが、オーガ自身の足音に紛れたせいか、幸いにも気付かれることはなかった。
オーガをほぼ一直線に狙えるところまで移動したロンド様は一度目を閉じ、呼吸を整える。集中しているのだろう。
そこからすぐにカッと目を開けたかと思うと、突然走り出す。は、速い──人間は走り始めてからだんだんとスピードが上がるはずなのに、走り出しから異様に速いのだ。
身体能力で説明がつくようなものではない。おそらくは何かしらの魔法だろう。
尋常ではない速さでロンド様はオーガに接近するが、ずっと歩き続けていたオーガまではかなり距離が出来てしまっている。
半分まで距離を詰めたあたりでオーガの方も気付いた素振りを見せ、素早く振り返る。こちらも速い──巨体からは想像できないほどの速さでオーガが体の向きを変える。
ロンド様が斬りかかる前にオーガは完全に構えてしまっている。これでは不意打ちはできない。ロンド様はどう出るのか──自分の命をもが懸かった状況でこんなことを思うのもなんだが、これは見ものだ。
ロンド様の剣が青白い輝きに包まれる。これは──たしか雷の魔法剣だ。コルネが見せてくれた中にあった。
なるほど、痺れさせてから攻撃しようというわけか。危険な腕も、そもそも体が動かなければ怖くない。
斬りかかろうとするロンド様に向かってオーガは横薙ぎに腕を振るう。それを勢いよく突っ込んでいたのにも関わらず、いきなりバックステップで回避し、脚へと斬りつける。
突然勢いを殺して後ろに下がるなど、常人にできる技ではない。おそらくこれも魔法だ。
脚に傷は出来ているようだが、オーガが倒れる気配はない。この巨躯には効かないということか──だとしたら、この状況はまずいんじゃないか。
オーガの脚が動くのなら、蹴飛ばされておしまいだ。ロンド様の方に攻撃を防ぐ術はないのだから。
ずっと目を離さずに見ていたはずなのに、オーガの足元からロンド様が忽然と消える。否、まるで消えたかのように一瞬で地面を蹴ってオーガの頭の高さまで跳びあがったのだ。
「はあああああああああっ……!」
俺が戸惑っている間にロンド様は近くの木を蹴り、その勢いのまま、オーガの首を一太刀で切り落とす。
スタッと軽やかに着地したロンド様の剣にはいつの間にか炎が燃え盛っていた。
何が起きたのか分からなかった──いや、全て見ていたのだから正確には分かっているのだが、頭が追いついてこない。
そうか、オーガは倒れはしなかったが、痺れていて一瞬動けなかった──雷の魔法剣は効いていたのだ。その一瞬の隙にロンド様は跳びあがって木を蹴ることで勢いをつけ、炎の魔法剣で首を刎ねた。
俺が全てを理解したのは、オーガの首が鈍い音を立てて地面にぶつかった後だった。
俺は初めて見るオーガに本能的な恐怖を抱いていた。あの腕が胴体に一度直撃しただけで、おそらく死ぬ──たとえ運よく即死を免れたとしても、しばらく動けないだろうから死ぬ。
頼むからこちらに気付かないでくれ。早く……早く過ぎ去ってくれ。今から倒さないといけないと分かっているのに、頭の中が恐怖でいっぱいになる。
「行ってくるよ。きみはここから動かないで」
ロンド様の言葉に俺が震えながらコクコクと頷くと、ロンド様は切った蔓を静かにかき分けて、のしのしとだんだん離れていくオーガの方へと向かっていく。
蔓の擦れあう音がどうしてもしてしまうが、オーガ自身の足音に紛れたせいか、幸いにも気付かれることはなかった。
オーガをほぼ一直線に狙えるところまで移動したロンド様は一度目を閉じ、呼吸を整える。集中しているのだろう。
そこからすぐにカッと目を開けたかと思うと、突然走り出す。は、速い──人間は走り始めてからだんだんとスピードが上がるはずなのに、走り出しから異様に速いのだ。
身体能力で説明がつくようなものではない。おそらくは何かしらの魔法だろう。
尋常ではない速さでロンド様はオーガに接近するが、ずっと歩き続けていたオーガまではかなり距離が出来てしまっている。
半分まで距離を詰めたあたりでオーガの方も気付いた素振りを見せ、素早く振り返る。こちらも速い──巨体からは想像できないほどの速さでオーガが体の向きを変える。
ロンド様が斬りかかる前にオーガは完全に構えてしまっている。これでは不意打ちはできない。ロンド様はどう出るのか──自分の命をもが懸かった状況でこんなことを思うのもなんだが、これは見ものだ。
ロンド様の剣が青白い輝きに包まれる。これは──たしか雷の魔法剣だ。コルネが見せてくれた中にあった。
なるほど、痺れさせてから攻撃しようというわけか。危険な腕も、そもそも体が動かなければ怖くない。
斬りかかろうとするロンド様に向かってオーガは横薙ぎに腕を振るう。それを勢いよく突っ込んでいたのにも関わらず、いきなりバックステップで回避し、脚へと斬りつける。
突然勢いを殺して後ろに下がるなど、常人にできる技ではない。おそらくこれも魔法だ。
脚に傷は出来ているようだが、オーガが倒れる気配はない。この巨躯には効かないということか──だとしたら、この状況はまずいんじゃないか。
オーガの脚が動くのなら、蹴飛ばされておしまいだ。ロンド様の方に攻撃を防ぐ術はないのだから。
ずっと目を離さずに見ていたはずなのに、オーガの足元からロンド様が忽然と消える。否、まるで消えたかのように一瞬で地面を蹴ってオーガの頭の高さまで跳びあがったのだ。
「はあああああああああっ……!」
俺が戸惑っている間にロンド様は近くの木を蹴り、その勢いのまま、オーガの首を一太刀で切り落とす。
スタッと軽やかに着地したロンド様の剣にはいつの間にか炎が燃え盛っていた。
何が起きたのか分からなかった──いや、全て見ていたのだから正確には分かっているのだが、頭が追いついてこない。
そうか、オーガは倒れはしなかったが、痺れていて一瞬動けなかった──雷の魔法剣は効いていたのだ。その一瞬の隙にロンド様は跳びあがって木を蹴ることで勢いをつけ、炎の魔法剣で首を刎ねた。
俺が全てを理解したのは、オーガの首が鈍い音を立てて地面にぶつかった後だった。
0
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる