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第八章 新しいメニューと緊急クエスト編
第155話 緊急クエスト 其の三
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「ヴィ、ヴィレアにオーガが出て──」
「ごめん、なんて言ってるか分かんない。街を出てから詳しく説明してほしい」
街中を人を縫うように二人で駆けながら、事情を説明しようとするが、街の喧騒にかき消されて師匠まで届かない。
きっと俺が息が上がって上手く喋れていないのが原因だ。その証拠に師匠の声は風の音や喋り声に紛れながらも、内容はしっかりと伝わってくる。
かなりの速度で飛ばしてラムハまで帰ってきたからとはいえ、もっと俺に体力があればきちんと喋れるくらいの余裕は残っていたのだろうか。
とりあえずラムハを出るところまで行って、そこで説明を済ませて師匠に先に行ってもらおう。師匠が到着すればすべて解決だ──だからそこまで体力がもてばいい。
人を避けられるギリギリの速度を落とさずにラムハの門を走り抜け、ヴィレアへの道に出ると一気に喧騒が遠のく。
「ヴィレアに、オーガが出て──」
「なるおど、オーガだね。状況は?」
よかった、伝わったみたいだ。体力がどんどんなくなってきて、さっきよりも呼吸が激しくなっているから心配だった。
「俺が、出たときは、まだ山の中でした」
「まだ人里には下りてなかった──と。それで、僕はどこに行けばいい?」
「冒険者ギルドに……ヴィレア村の──」
「──分かった、僕は先に行くね。コルネくんはペースを落として体力を温存しつつゆっくり来ればいいから」
「は、い……」
そう残して師匠はスピードを一気に上げ、隣の俺を抜き去っていく。かなりの速さで走っているはずの俺から見ても、普通に走るくらいのスピードは出ているように見えるのだから、傍から見たら目で追えないんじゃないだろうか。
師匠が行ったのなら、もう安心だ。きっと師匠が全部どうにかしてくれる。だからといって俺が行かないわけにもいかないが。
いつもの速度くらいにペースを落として息を整えながら走り始めると、すでに豆粒のようになっていた師匠の姿はもう見えなくなっていた。
師匠がこのままヴィレアに向かったところで俺の任務が終わったような気がして、肩の荷が下りた。
緊張感から解放されたところで、俺は気付く。そういえば以前、師匠はヴィレアに行ったことがないと言っていたはず──冒険者ギルドの場所、すぐに分かるかな……
* * *
コルネが飛び出していった後の冒険者ギルドには、偵察隊の一人が帰ってきていた。
「オーガは探したが、見つからなかった。まだこの村には下りてきていないことは確かだ。他の偵察隊に見張ってもらっている」
報告を終えると、恐怖に駆られた冒険者の一人が声を上げる。
「見つからなかったって──それじゃあ打って出ることもできないじゃないか! いつ来るかも分からないオーガに怯えながらずっと生活しろっていうのか!」
「落ち着け、山の奥まで入ってオーガに全員殺されるよりはマシだ。見つからなかったってことは村の近くにはオーガは今いないってことだ、ロンド様が来るのを待って皆でオーガを探せばいいだろう?」
それを宥める他の冒険者の言葉に、偵察から帰ってきた冒険者は驚く。
「ロンド様、あのロンド様が来るのか? そりゃあ安心だ」
「ああ、あの弟子が呼んでくるってな」
「そうか……あんまり言いたかねぇんだけどよ、もしかして逃げたんじゃねぇのか? ロンド様を呼んでくるってのはその口実で……」
彼が誰もが思っていたことを口にしたことで、ギルドは静まり返る。確かに本当にあのSランク冒険者ロンドを連れてくる保証はどこにもないし、そもそも本当に連れてこられるのかとも疑問に思っている者も多い。
Bランクパーティの魔法使いが長い沈黙を破る。
「だが、あたしらだけじゃオーガには勝てない──それはみんな分かってるはずだ。結局のところ、あたしらは来るかどうかも分からない救援を待ち続けるしかないのさ」
彼女の言葉が消えると、再びギルドに長い沈黙が訪れた。
「ごめん、なんて言ってるか分かんない。街を出てから詳しく説明してほしい」
街中を人を縫うように二人で駆けながら、事情を説明しようとするが、街の喧騒にかき消されて師匠まで届かない。
きっと俺が息が上がって上手く喋れていないのが原因だ。その証拠に師匠の声は風の音や喋り声に紛れながらも、内容はしっかりと伝わってくる。
かなりの速度で飛ばしてラムハまで帰ってきたからとはいえ、もっと俺に体力があればきちんと喋れるくらいの余裕は残っていたのだろうか。
とりあえずラムハを出るところまで行って、そこで説明を済ませて師匠に先に行ってもらおう。師匠が到着すればすべて解決だ──だからそこまで体力がもてばいい。
人を避けられるギリギリの速度を落とさずにラムハの門を走り抜け、ヴィレアへの道に出ると一気に喧騒が遠のく。
「ヴィレアに、オーガが出て──」
「なるおど、オーガだね。状況は?」
よかった、伝わったみたいだ。体力がどんどんなくなってきて、さっきよりも呼吸が激しくなっているから心配だった。
「俺が、出たときは、まだ山の中でした」
「まだ人里には下りてなかった──と。それで、僕はどこに行けばいい?」
「冒険者ギルドに……ヴィレア村の──」
「──分かった、僕は先に行くね。コルネくんはペースを落として体力を温存しつつゆっくり来ればいいから」
「は、い……」
そう残して師匠はスピードを一気に上げ、隣の俺を抜き去っていく。かなりの速さで走っているはずの俺から見ても、普通に走るくらいのスピードは出ているように見えるのだから、傍から見たら目で追えないんじゃないだろうか。
師匠が行ったのなら、もう安心だ。きっと師匠が全部どうにかしてくれる。だからといって俺が行かないわけにもいかないが。
いつもの速度くらいにペースを落として息を整えながら走り始めると、すでに豆粒のようになっていた師匠の姿はもう見えなくなっていた。
師匠がこのままヴィレアに向かったところで俺の任務が終わったような気がして、肩の荷が下りた。
緊張感から解放されたところで、俺は気付く。そういえば以前、師匠はヴィレアに行ったことがないと言っていたはず──冒険者ギルドの場所、すぐに分かるかな……
* * *
コルネが飛び出していった後の冒険者ギルドには、偵察隊の一人が帰ってきていた。
「オーガは探したが、見つからなかった。まだこの村には下りてきていないことは確かだ。他の偵察隊に見張ってもらっている」
報告を終えると、恐怖に駆られた冒険者の一人が声を上げる。
「見つからなかったって──それじゃあ打って出ることもできないじゃないか! いつ来るかも分からないオーガに怯えながらずっと生活しろっていうのか!」
「落ち着け、山の奥まで入ってオーガに全員殺されるよりはマシだ。見つからなかったってことは村の近くにはオーガは今いないってことだ、ロンド様が来るのを待って皆でオーガを探せばいいだろう?」
それを宥める他の冒険者の言葉に、偵察から帰ってきた冒険者は驚く。
「ロンド様、あのロンド様が来るのか? そりゃあ安心だ」
「ああ、あの弟子が呼んでくるってな」
「そうか……あんまり言いたかねぇんだけどよ、もしかして逃げたんじゃねぇのか? ロンド様を呼んでくるってのはその口実で……」
彼が誰もが思っていたことを口にしたことで、ギルドは静まり返る。確かに本当にあのSランク冒険者ロンドを連れてくる保証はどこにもないし、そもそも本当に連れてこられるのかとも疑問に思っている者も多い。
Bランクパーティの魔法使いが長い沈黙を破る。
「だが、あたしらだけじゃオーガには勝てない──それはみんな分かってるはずだ。結局のところ、あたしらは来るかどうかも分からない救援を待ち続けるしかないのさ」
彼女の言葉が消えると、再びギルドに長い沈黙が訪れた。
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