149 / 328
第八章 新しいメニューと緊急クエスト編
第143話 新しいメニュー
しおりを挟む
──コルネが喫茶店を出た後、コルネは知る由もなかったが領主アランたち一家はしばらくその場に残って話していた。
アランの次男オリヴァーは品定めをするようにニヤリと笑う。
「あれがSランク冒険者ロンドの唯一の弟子……か。それなりに鍛えているみたいだな」
「これ、ロンド様だろう。誰が聞いているかも分からぬのに、そのような口を利くな」
「へーい」
言い方を窘めるアランにオリヴァーは生返事をし、眠たそうな眼をしている彼の兄──フリードリヒの方を向く。
「兄貴はどう思った?」
「たぶん強いんじゃない? ……よく分からないけど」
アランの長男であり、オリヴァーの兄であるフリードリヒは魔法の天才と呼ばれており、王国魔法師団に所属している。
「よく分からないけどって……兄貴はそればっかり」
「オリヴァー、仕方ないだろう。一目見ただけでその者の強さが完全に分かるはずがない。ましてや魔法は肉体に現れないのだから」
ため息をつくオリヴァーに仕方ないと言うアラン。
「──だが、彼は一時期冒険者としてこの近辺で話題になったことがある。今は一人でBランクパーティとして討伐を行っているそうだ」
「へぇ、一人でBランクとは大したものだ。さぞ強いんだろうなぁ」
三人のやりとりをよそにジャンは一人で喜びに浸っていた。コルネは今も冒険者をやっていたのだ、と。
ということは消息の分からない二人もどこかで冒険者をやっている可能性も十分にある。
そうすれば、もしかしたら──もしかしたら俺のパーティ再結成計画が実現するかもしれない。
* * *
「おはよう、コルネくん。昨日は楽しかったね」
食堂に向かうと、師匠はいつものように先に座っていた。二日酔いになっている様子もなく、いつもと何も変わらなかった。
そう、今日からはまた何も変わらない日常が始まるのだ。レオンさんのところから帰ってから里帰り、さらに続けて収穫祭──ここ最近出かけるとが多かったからな。
ここらでゆっくりするのもいいだろう──そう考えている俺に、師匠は思い出したように告げる。
「収穫祭も終わったし、今日から届いたアレを使うから」
いつものように道場の裏に出ると、大きな袋を手にした師匠がやってくる。昨晩、師匠の部屋で見たあの袋だ。
「いやぁ、僕気付いちゃったんだよね。コルネくん、今のメニュー結構余裕あるでしょ?」
そう言いながら師匠は袋から丁寧に中身を取り出す。出てきたのは──剣。きちんと鞘がついている真剣だ。
練習時間を捻出するためにメニューを速くこなしていたからか。終わった後は動けなくなってしまったが、以前の俺ではあのスピードでこなすことすら出来なかっただろう。確かに俺は成長している。
「だから今日からメニューを変えます。覚悟しててね?」
笑顔で剣の鞘を少し浮かせては手のひらを叩く師匠。剣が手にぶつかるたびに、重い音が鳴る。新しいメニューに俺はついていけるのだろうか。
アランの次男オリヴァーは品定めをするようにニヤリと笑う。
「あれがSランク冒険者ロンドの唯一の弟子……か。それなりに鍛えているみたいだな」
「これ、ロンド様だろう。誰が聞いているかも分からぬのに、そのような口を利くな」
「へーい」
言い方を窘めるアランにオリヴァーは生返事をし、眠たそうな眼をしている彼の兄──フリードリヒの方を向く。
「兄貴はどう思った?」
「たぶん強いんじゃない? ……よく分からないけど」
アランの長男であり、オリヴァーの兄であるフリードリヒは魔法の天才と呼ばれており、王国魔法師団に所属している。
「よく分からないけどって……兄貴はそればっかり」
「オリヴァー、仕方ないだろう。一目見ただけでその者の強さが完全に分かるはずがない。ましてや魔法は肉体に現れないのだから」
ため息をつくオリヴァーに仕方ないと言うアラン。
「──だが、彼は一時期冒険者としてこの近辺で話題になったことがある。今は一人でBランクパーティとして討伐を行っているそうだ」
「へぇ、一人でBランクとは大したものだ。さぞ強いんだろうなぁ」
三人のやりとりをよそにジャンは一人で喜びに浸っていた。コルネは今も冒険者をやっていたのだ、と。
ということは消息の分からない二人もどこかで冒険者をやっている可能性も十分にある。
そうすれば、もしかしたら──もしかしたら俺のパーティ再結成計画が実現するかもしれない。
* * *
「おはよう、コルネくん。昨日は楽しかったね」
食堂に向かうと、師匠はいつものように先に座っていた。二日酔いになっている様子もなく、いつもと何も変わらなかった。
そう、今日からはまた何も変わらない日常が始まるのだ。レオンさんのところから帰ってから里帰り、さらに続けて収穫祭──ここ最近出かけるとが多かったからな。
ここらでゆっくりするのもいいだろう──そう考えている俺に、師匠は思い出したように告げる。
「収穫祭も終わったし、今日から届いたアレを使うから」
いつものように道場の裏に出ると、大きな袋を手にした師匠がやってくる。昨晩、師匠の部屋で見たあの袋だ。
「いやぁ、僕気付いちゃったんだよね。コルネくん、今のメニュー結構余裕あるでしょ?」
そう言いながら師匠は袋から丁寧に中身を取り出す。出てきたのは──剣。きちんと鞘がついている真剣だ。
練習時間を捻出するためにメニューを速くこなしていたからか。終わった後は動けなくなってしまったが、以前の俺ではあのスピードでこなすことすら出来なかっただろう。確かに俺は成長している。
「だから今日からメニューを変えます。覚悟しててね?」
笑顔で剣の鞘を少し浮かせては手のひらを叩く師匠。剣が手にぶつかるたびに、重い音が鳴る。新しいメニューに俺はついていけるのだろうか。
0
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる