137 / 328
第七章 里帰りと収穫祭編
第133話 収穫祭当日
しおりを挟む
前日の合同練習を滞りなく終えて、収穫祭当日がやってくる。
練習を重ねて自信を持って本番に臨めるくらいにはなったので、緊張はしているがあまり不安はない。
それよりも、今日はステージに上がる日であると同時に収穫祭でもあるのだ。ラムハに来る前からずっと楽しみにしていたお祭りだ──目いっぱい楽しまなければ。
師匠も俺もいつもより早く起きて、祭りに行く準備をしている。昨日の夜は寝付けないのを見越して、さらに早く横になったのでコンディションはばっちりだ。
服を着替え、お金を入れた袋をしっかりとベルトに結ぶ。こういうときはスリがよく出るから気を付けないと。
「コルネくん、準備はできたかい?」
遠くから師匠の弾んだ声が聞こえてくる。きっと支度を終えて玄関で待っているのだろう。
「今行きまーす!」
忘れ物はなし、服も着替え終えた、と──よし、行こう。
街に出てみると、まだ朝早いというのにたくさんの露店が出ていた。まだ準備中らしいところもあったが、多くはすでに準備を終えているようだった。
いつもは露店が出ていない通りであっても、その内いくつかはこの日だけは許可が下りると師匠が言っていた。普段通っている道に露店が並んでいるのは新鮮だ。
露店だけではなく、人も多い。まだ朝市の時間よりも早いのに、いつもの昼ほどの人影がある。
昼になるとまともに買い物が出来なくなるから──そう師匠に言われこの時間に来たのだが、どうやら本当のようだ。この調子ならば、昼頃には通りは人で埋め尽くされてしまい、人の波に押し流されて買い物どころではないだろう。
「僕、あそこのお店見たいんだけど──いいかな」
師匠が指差すのは道の反対側にある露店だ。俺が頷くと、間隙を縫うようにして師匠はお店の方にスルスルと進んでいき、師匠が作ったスペースを辿るように俺もついていく。
「いらっしゃい、新しいの入ってるよ」
「お、楽しみだね」
傍らに置いてある袋をゴソゴソと探り始める店主のおじさん。どうやら師匠とここの店主は顔見知りのようだ。きっと以前も何か買ったことがあるのだろう。
並べられている商品を見ると、うちにあるボードゲームがいくつかあった。なるほど、ここで買っていたのか。
「これだこれだ──どうだい? 買うかい?」
「なるほど……買おう」
渡された説明書のようなものを読んで、師匠はお金を差し出す。
「まいどあり」
「また頼むよ。コルネくんはここで何か買う?」
「いえ、うちにありますし──いいかな、と」
「僕が買っちゃってるからね……じゃ、また来るよ」
店主に別れを告げ、他の店に移る。収穫祭はまだ始まったばかりなのだから、ゆっくりと露店を見て回ろう。
練習を重ねて自信を持って本番に臨めるくらいにはなったので、緊張はしているがあまり不安はない。
それよりも、今日はステージに上がる日であると同時に収穫祭でもあるのだ。ラムハに来る前からずっと楽しみにしていたお祭りだ──目いっぱい楽しまなければ。
師匠も俺もいつもより早く起きて、祭りに行く準備をしている。昨日の夜は寝付けないのを見越して、さらに早く横になったのでコンディションはばっちりだ。
服を着替え、お金を入れた袋をしっかりとベルトに結ぶ。こういうときはスリがよく出るから気を付けないと。
「コルネくん、準備はできたかい?」
遠くから師匠の弾んだ声が聞こえてくる。きっと支度を終えて玄関で待っているのだろう。
「今行きまーす!」
忘れ物はなし、服も着替え終えた、と──よし、行こう。
街に出てみると、まだ朝早いというのにたくさんの露店が出ていた。まだ準備中らしいところもあったが、多くはすでに準備を終えているようだった。
いつもは露店が出ていない通りであっても、その内いくつかはこの日だけは許可が下りると師匠が言っていた。普段通っている道に露店が並んでいるのは新鮮だ。
露店だけではなく、人も多い。まだ朝市の時間よりも早いのに、いつもの昼ほどの人影がある。
昼になるとまともに買い物が出来なくなるから──そう師匠に言われこの時間に来たのだが、どうやら本当のようだ。この調子ならば、昼頃には通りは人で埋め尽くされてしまい、人の波に押し流されて買い物どころではないだろう。
「僕、あそこのお店見たいんだけど──いいかな」
師匠が指差すのは道の反対側にある露店だ。俺が頷くと、間隙を縫うようにして師匠はお店の方にスルスルと進んでいき、師匠が作ったスペースを辿るように俺もついていく。
「いらっしゃい、新しいの入ってるよ」
「お、楽しみだね」
傍らに置いてある袋をゴソゴソと探り始める店主のおじさん。どうやら師匠とここの店主は顔見知りのようだ。きっと以前も何か買ったことがあるのだろう。
並べられている商品を見ると、うちにあるボードゲームがいくつかあった。なるほど、ここで買っていたのか。
「これだこれだ──どうだい? 買うかい?」
「なるほど……買おう」
渡された説明書のようなものを読んで、師匠はお金を差し出す。
「まいどあり」
「また頼むよ。コルネくんはここで何か買う?」
「いえ、うちにありますし──いいかな、と」
「僕が買っちゃってるからね……じゃ、また来るよ」
店主に別れを告げ、他の店に移る。収穫祭はまだ始まったばかりなのだから、ゆっくりと露店を見て回ろう。
0
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。
なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。
しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。
探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。
だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。
――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。
Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。
Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。
それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。
失意の内に意識を失った一馬の脳裏に
――チュートリアルが完了しました。
と、いうシステムメッセージが流れる。
それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる