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第七章 里帰りと収穫祭編
第129話 収穫祭に向けて 其の四
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一部分だけを演奏してもらいながら少しずつプランを詰めていき、詳しい動きはまだだが、どこでどの魔法剣を使うかは決まった。
お礼を言って、一度くらいは本番前に一緒に合わせることが出来るか訊いてみたところ、さすがに何回かはした方がいいのではないかと言われた。
出来るならそうしたかったので、この提案はありがたかった。都合のつく日を確認してから、プランを書き起こしたメモを手に、俺は道場に戻った。
師匠は珍しく用事があって、昼からは道場を空けている。本当はマシューさんのところにも一緒に行ければよかったのだが、外せない用事らしかった。
メモ通りに一度動いてみようと思い、裏へと出る。剣をぶつけ合う部分など、一人では出来ないところが多いが、やれるものだけでもやっておこう。
「ええと、まず最初は光で……ここで八拍。そこからは雷で、こう打ち込んで──」
メモを見ながら、片手で軽い木刀を振るう。メモが手放せないため、両手でしか持てない自分の剣はまだ使えないのだ。
やってみて分かったが、やはり打ち込んだり受けたりする部分は、想像だけではいまいち実感が掴めない。ある程度木刀を扱える相手がいれば、確認できるのだが──
「ヘルガさんは無理だろうしな……」
「私が何か?」
ひとりごちたものに返事があった。ガチャ、と扉の開く音がしたのでヘルガさんが出てきたのは分かったが、まさか聞かれているとは思っていなかった。
「木刀で打ち込みや受ける動きを確認したくて──でもヘルガさんは木刀とか使ったことないから無理かな……と思って」
「出来ますよ。やりましょう」
「本当に大丈夫ですか?」
そう確認すると、ヘルガさんは首を傾げてから、納得したように喋りだす。
「あ、戸締りはちゃんとしていますので、侵入者がいれば音で分かるでしょう。そのときは全てを放り出してそちらに向かうので、悪しからず」
「いえ、そういうことではなくてですね──剣や木刀を使ったことはあるんですか?」
「ええ、ありますよ」
ああそういうことか、と再び納得したような顔をするヘルガさん。それなら問題なさそうだ。
「さっきの続きからで……俺が打ち込むのでヘルガさんは剣を横にして受けてください」
「はい」
そう言って構えるヘルガさんの姿はとても様になっていた。
俺が軽く打ち込んでも、ヘルガさんの剣はほとんど揺らぐことはなかった。もしかして相当な腕なんじゃないだろうか。
「次は俺が受けるので、ヘルガさんは右斜め上から打ち込んでください」
「はい」
ヘルガさんの剣はそれなりに重かった。表情が動かないから分からないが、おそらく軽くやっているつもりなのだろう。本当にかなりの使い手なんじゃないか。
ともかく、これなら動きの確認は出来そうだ。ヘルガさんを付き合わせるのは少し悪い気もするが、とても助かる。
それにしてもヘルガさんは一体──
お礼を言って、一度くらいは本番前に一緒に合わせることが出来るか訊いてみたところ、さすがに何回かはした方がいいのではないかと言われた。
出来るならそうしたかったので、この提案はありがたかった。都合のつく日を確認してから、プランを書き起こしたメモを手に、俺は道場に戻った。
師匠は珍しく用事があって、昼からは道場を空けている。本当はマシューさんのところにも一緒に行ければよかったのだが、外せない用事らしかった。
メモ通りに一度動いてみようと思い、裏へと出る。剣をぶつけ合う部分など、一人では出来ないところが多いが、やれるものだけでもやっておこう。
「ええと、まず最初は光で……ここで八拍。そこからは雷で、こう打ち込んで──」
メモを見ながら、片手で軽い木刀を振るう。メモが手放せないため、両手でしか持てない自分の剣はまだ使えないのだ。
やってみて分かったが、やはり打ち込んだり受けたりする部分は、想像だけではいまいち実感が掴めない。ある程度木刀を扱える相手がいれば、確認できるのだが──
「ヘルガさんは無理だろうしな……」
「私が何か?」
ひとりごちたものに返事があった。ガチャ、と扉の開く音がしたのでヘルガさんが出てきたのは分かったが、まさか聞かれているとは思っていなかった。
「木刀で打ち込みや受ける動きを確認したくて──でもヘルガさんは木刀とか使ったことないから無理かな……と思って」
「出来ますよ。やりましょう」
「本当に大丈夫ですか?」
そう確認すると、ヘルガさんは首を傾げてから、納得したように喋りだす。
「あ、戸締りはちゃんとしていますので、侵入者がいれば音で分かるでしょう。そのときは全てを放り出してそちらに向かうので、悪しからず」
「いえ、そういうことではなくてですね──剣や木刀を使ったことはあるんですか?」
「ええ、ありますよ」
ああそういうことか、と再び納得したような顔をするヘルガさん。それなら問題なさそうだ。
「さっきの続きからで……俺が打ち込むのでヘルガさんは剣を横にして受けてください」
「はい」
そう言って構えるヘルガさんの姿はとても様になっていた。
俺が軽く打ち込んでも、ヘルガさんの剣はほとんど揺らぐことはなかった。もしかして相当な腕なんじゃないだろうか。
「次は俺が受けるので、ヘルガさんは右斜め上から打ち込んでください」
「はい」
ヘルガさんの剣はそれなりに重かった。表情が動かないから分からないが、おそらく軽くやっているつもりなのだろう。本当にかなりの使い手なんじゃないか。
ともかく、これなら動きの確認は出来そうだ。ヘルガさんを付き合わせるのは少し悪い気もするが、とても助かる。
それにしてもヘルガさんは一体──
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