パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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第七章 里帰りと収穫祭編

第124話 収穫祭

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 見てはいけないものを見てしまった気がして、二人にバレないうちに食堂を離れる。二人とも気配を察知するのが上手いので、とっくにバレているのかもしれないが。

 里帰りで持って行った鞄を開け、荷解きをしていると、しばらくしてパンを食べ終えたであろう師匠とヘルガさんがやってくる。

「パン美味しかったよ。ありがとう、コルネくん」
「美味しかったです。コルネくん、ありがとうございます」

 爽やかに笑う師匠と、いつも通りポーカーフェイスなヘルガさん。食堂での二人は見間違いだったのだろうか。

「そうだ、コルネくんに収穫祭の話をしようと思ってたんだった」

 収穫祭──もうそんな時期か。ラムハで毎年秋に開かれる祭で、今年の収穫に感謝し、来年の豊作を願う。

 ミャクー村によく来ていた行商人のおじさんからは、他の村からも人が来て賑やかだと聞いていて、ラムハに住むなら参加できると去年はとても楽しみにしていたのだが……ドラゴンの幼体騒ぎで、喪に服するため中止になってしまったのだ。

 あのときは来年こそは、と思っていたが、もう一年経ってしまったとは。

「収穫祭はもちろん行くよね?」
「はい。師匠は──」
「もちろん行くよ」

 師匠も去年、俺と一緒に回ると楽しみにしていたから、絶対そうだと思っていた。

「収穫祭では、ステージでたくさんの人がパフォーマンスをしていて、僕も毎年出させてもらっているんだ。魔法剣の伝道師として、少しでも多くの人に魔法剣を知ってもらいたいからね」

 たしかに、たくさんの人が集まるこのお祭りで魔法剣を披露するのは、魔法剣を広めるためにはとても有効な手段だろう。

「ちょうど昨日、そのことを街の人と話しててね。話の中で出たんだけど、今年はお弟子さんと一緒に出たらどうかって──どうかな、コルネくん」

 ステージに出るのは緊張するが、魔法剣を広めようと頑張っている師匠を「俺は出ないから勝手にやっていろ」と突き放すわけにはいかない。

 それに、俺が出ればそれだけで少しは注目されるはずだ。経験上、Sランク冒険者の弟子という肩書きはある程度の注目を集めることは分かっている。

 ならば、ここは出るしかないだろう。

「出ます」
「ありがとう、コルネくん……コルネくんとステージ……」

 感極まった師匠の涙をポケットから出したハンカチでヘルガさんがサッと拭う。なんだかこの光景も久しぶりに見た気がする。
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