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第七章 里帰りと収穫祭編
第123話 お土産
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朝にミャクー村を出て、ラムハに着くころには、日が暮れ始めていた。長いこと歩いていたが、持っているパンは氷の魔法で冷やしていたので、問題ない。
最初にラムハまで来たときに比べると、魔力操作を使っている分早くなっているのが分かる。あのときは朝早くに出て、着くころにはもう夜だったから半日だ。
道場に着くと、今日は師匠が飛び出してきた。
「コルネくん、おっかえりー!」
俺の顔を見るなり、そう告げる師匠は異常にテンションが高かった。今までも妙にテンションが高いことはあったが、今回はその比ではない。「妙に」ではなく、「異常に」だ。
「里帰りはどうだった? 楽しかったかい?」
「は……はい。あ、そうだ。これお土産です」
師匠の勢いに戸惑いながら、袋に入れていたパンを袋ごと差し出す。
「お、おみ……おみやげ!?」
袋を持った師匠がわなわなと震えだす。師匠と出かけたときは必ずヘルガさんにお土産を買っていたから、何か買って帰った方がいいと思ったのだが……もしかして里帰りにお土産はいらなかったのだろうか。
袋の中身を見て、まるで財宝を見つけたかのような顔をする師匠。
「ありがとう、コルネくん。大事に食べるね」
目を細めた笑顔でそう告げる師匠の頬にはツー、と涙がつたっている。師匠が袋を抱えたまま奥へと引っ込んでから、俺も道場に上がろうとすると、食堂の方から声が聞こえてくる。
「ヘルガ! お茶淹れて! コルネくんのお土産!」
「全て聞いておりました。今、準備しているところです。もちろんとっておきの、ですよね?」
「もちろん!」
どうやら今からおやつに持って帰ったパンを食べる気らしい。
ずっと冷やしていたとはいえ、外で持ち歩いていたパンだ──なるべく早く食べた方がいいのは分かる。分かるのだが……聞こえてくる声が、異様にテンションが高い。
普段静かな口調で喋るヘルガさんの声まで嘘みたいに高い。別人が喋っているのかと思うほどだが、声はヘルガさんのものなのだ。
俺は一旦、荷物を置いてから食堂に向かう。食堂の扉は開けっ放しで、ちょうど師匠とヘルガさんがパンを食べ始めるところだった。
入りづらい雰囲気だったので、扉の陰から様子を窺う。
「んっ……素朴な味……! これは何の変哲もないありふれたパン! でもコルネくんが僕たちのために買ってきてくれたというだけで──それだけで価値がある! この美味しさ……プライスレス……」
パンを一口齧っただけとは思えない量の食レポをする師匠。そんなにお土産が嬉しかったのだろうか。
もう、大袈裟だなぁ……ヘルガさんはきっとそんなことはないだろう。そう思ったのだが……
「たしかに素朴な味ですが、これもまたいいものです。それよりもコルネくんが私たちのためにこのパンを買ってきてくれたという事実だけで私は嬉しいです。私の中ではパンがこの世界の全てであり、パンは私に幸福を与えてくれます」
ヘルガさんも似たようなことを言っている上に、最後の方はもうおかしくなってしまっている。
二人がそんなに喜んでくれるなら、どこかに行ったときは絶対にお土産を買わないとな。
最初にラムハまで来たときに比べると、魔力操作を使っている分早くなっているのが分かる。あのときは朝早くに出て、着くころにはもう夜だったから半日だ。
道場に着くと、今日は師匠が飛び出してきた。
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俺の顔を見るなり、そう告げる師匠は異常にテンションが高かった。今までも妙にテンションが高いことはあったが、今回はその比ではない。「妙に」ではなく、「異常に」だ。
「里帰りはどうだった? 楽しかったかい?」
「は……はい。あ、そうだ。これお土産です」
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「お、おみ……おみやげ!?」
袋を持った師匠がわなわなと震えだす。師匠と出かけたときは必ずヘルガさんにお土産を買っていたから、何か買って帰った方がいいと思ったのだが……もしかして里帰りにお土産はいらなかったのだろうか。
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「全て聞いておりました。今、準備しているところです。もちろんとっておきの、ですよね?」
「もちろん!」
どうやら今からおやつに持って帰ったパンを食べる気らしい。
ずっと冷やしていたとはいえ、外で持ち歩いていたパンだ──なるべく早く食べた方がいいのは分かる。分かるのだが……聞こえてくる声が、異様にテンションが高い。
普段静かな口調で喋るヘルガさんの声まで嘘みたいに高い。別人が喋っているのかと思うほどだが、声はヘルガさんのものなのだ。
俺は一旦、荷物を置いてから食堂に向かう。食堂の扉は開けっ放しで、ちょうど師匠とヘルガさんがパンを食べ始めるところだった。
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「たしかに素朴な味ですが、これもまたいいものです。それよりもコルネくんが私たちのためにこのパンを買ってきてくれたという事実だけで私は嬉しいです。私の中ではパンがこの世界の全てであり、パンは私に幸福を与えてくれます」
ヘルガさんも似たようなことを言っている上に、最後の方はもうおかしくなってしまっている。
二人がそんなに喜んでくれるなら、どこかに行ったときは絶対にお土産を買わないとな。
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