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第六章 レオンの剣術道場編
第107話 討伐を終えて
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半ば強制的に魔力操作を教える約束を取り付けられ、冒険者ギルドに黒焦げになったアイクルの死体を持っていく。
みな顔は笑っていたのだが、感じる圧がすごかった。なるべくお弟子さんたちとは揉めたくなかったし、あの人数と戦うことにでもなれば勝ち目はなく、受けるしかなかった。
魔力操作って教えたらやっぱり駄目なのかな……師匠に訊かずにこんな人数に教えるのはやはりまずいんじゃ──でも既に一人教えてしまっているし、今さら悩んでももう遅いか。
「ええと、たしかここを右に曲がって……大きい建物が──あれかな」
教えてもらった道順通りに進めば、冒険者ギルドに到着だ。運んでいるアイクルが軽かったおかげか、そんなに時間はかからなかった。
さっさと報酬を受け取って、道場に戻ろう。
「うーん……思ったよりだったなぁ」
ギルドから出て、金貨の入った袋の中を見て呟く。
同じBランクの討伐クエストだったのに、ヴィレアに比べて報酬の額がかなり控えめだったのだ。訊けば、このあたりではBランク相当のモンスターは珍しくもなく、最低でも一日に一回は討伐クエストが消化されるのだそう。
そのため、同じBランクでも他のギルドよりも報酬が少ないそうだ。Bランクモンスターが特に珍しくもないとは、もしかしてかなり危ない場所なんじゃ──と思ったが、ここにはレオンさんの道場出身者が多く住んでおり、高ランクの冒険者パーティがたくさんいるらしい。
Aランクパーティもいくつかあるそうで、あのお弟子さんたちのパーティもそうらしい。Aランクパーティとなれば、王国中でかなり名が売れていてもおかしくないのだが、俺は聞いたことがない。
もしかするとここは、噂には上らない強者がうじゃうじゃいる魔境のようなところなのかもしれない。
道場に戻ると、午前の修行は半分以上終わったところだった。修行中は皆気にしていない素振りをしていたが、休憩時間になった途端にいろんな質問が飛んでくる。
「アイクル出たんだよね? 誰が倒したの?」
「どうだった? やっぱりトップグループの剣捌きはすごかった?」
「報酬! 報酬は!?」
一人金の亡者みたいになっているが、上のグループから討伐のことはあまり聞くことがないらしく、気になるようだ。
「まずアイクルにとどめを刺したのは俺」
「すごい! すごいよコルネ! アイクルを倒したのは歴代でもお師匠様ともう一人しかいないんだよ! だってアイクルは魔法に弱いけど物理には──あっコルネは魔法剣だった……で、でもすごいことに変わりはないよ」
興奮した様子で話しだしたが、俺が魔法剣士だということを思い出して尻すぼみになってしまった。やはりアイクルはそれだけ硬いようだ。もう一人というのは誰のことなのか気になるな。
「トップグループの剣捌きは……剣捌きはよく見てないけど、連携はすごかった」
「なーんだ、剣捌きは見てないのか──もしかして速すぎて見えなかったってこと?」
「そういうことじゃない」
がっかりされた顔をされても、俺はちゃんとアイクルを倒せるかでドキドキだったし、ヨーゼフさんのクネクネに気を取られていたから仕方がないのだ。
「報酬は……正直そんなじゃなかった」
「そっか…………」
こちらもあからさまに落胆しているようだが、これも俺のせいじゃないし。強いモンスターが多すぎるせいなので、恨むならモンスターを恨んでほしい。
しかし金額を言うと、みんなの反応ががらっと変わる。
「コルネ、それはそんなじゃなくはないよ」
「でも他のギルドに比べると低いんだよ」
「ということは、他のギルドに討伐クエストを受けに行けばぼろ儲けってこと……!?」
ぱあっとみんなの顔が輝きだす。なんだか教えてはいけないことを教えてしまった気がする。
みな顔は笑っていたのだが、感じる圧がすごかった。なるべくお弟子さんたちとは揉めたくなかったし、あの人数と戦うことにでもなれば勝ち目はなく、受けるしかなかった。
魔力操作って教えたらやっぱり駄目なのかな……師匠に訊かずにこんな人数に教えるのはやはりまずいんじゃ──でも既に一人教えてしまっているし、今さら悩んでももう遅いか。
「ええと、たしかここを右に曲がって……大きい建物が──あれかな」
教えてもらった道順通りに進めば、冒険者ギルドに到着だ。運んでいるアイクルが軽かったおかげか、そんなに時間はかからなかった。
さっさと報酬を受け取って、道場に戻ろう。
「うーん……思ったよりだったなぁ」
ギルドから出て、金貨の入った袋の中を見て呟く。
同じBランクの討伐クエストだったのに、ヴィレアに比べて報酬の額がかなり控えめだったのだ。訊けば、このあたりではBランク相当のモンスターは珍しくもなく、最低でも一日に一回は討伐クエストが消化されるのだそう。
そのため、同じBランクでも他のギルドよりも報酬が少ないそうだ。Bランクモンスターが特に珍しくもないとは、もしかしてかなり危ない場所なんじゃ──と思ったが、ここにはレオンさんの道場出身者が多く住んでおり、高ランクの冒険者パーティがたくさんいるらしい。
Aランクパーティもいくつかあるそうで、あのお弟子さんたちのパーティもそうらしい。Aランクパーティとなれば、王国中でかなり名が売れていてもおかしくないのだが、俺は聞いたことがない。
もしかするとここは、噂には上らない強者がうじゃうじゃいる魔境のようなところなのかもしれない。
道場に戻ると、午前の修行は半分以上終わったところだった。修行中は皆気にしていない素振りをしていたが、休憩時間になった途端にいろんな質問が飛んでくる。
「アイクル出たんだよね? 誰が倒したの?」
「どうだった? やっぱりトップグループの剣捌きはすごかった?」
「報酬! 報酬は!?」
一人金の亡者みたいになっているが、上のグループから討伐のことはあまり聞くことがないらしく、気になるようだ。
「まずアイクルにとどめを刺したのは俺」
「すごい! すごいよコルネ! アイクルを倒したのは歴代でもお師匠様ともう一人しかいないんだよ! だってアイクルは魔法に弱いけど物理には──あっコルネは魔法剣だった……で、でもすごいことに変わりはないよ」
興奮した様子で話しだしたが、俺が魔法剣士だということを思い出して尻すぼみになってしまった。やはりアイクルはそれだけ硬いようだ。もう一人というのは誰のことなのか気になるな。
「トップグループの剣捌きは……剣捌きはよく見てないけど、連携はすごかった」
「なーんだ、剣捌きは見てないのか──もしかして速すぎて見えなかったってこと?」
「そういうことじゃない」
がっかりされた顔をされても、俺はちゃんとアイクルを倒せるかでドキドキだったし、ヨーゼフさんのクネクネに気を取られていたから仕方がないのだ。
「報酬は……正直そんなじゃなかった」
「そっか…………」
こちらもあからさまに落胆しているようだが、これも俺のせいじゃないし。強いモンスターが多すぎるせいなので、恨むならモンスターを恨んでほしい。
しかし金額を言うと、みんなの反応ががらっと変わる。
「コルネ、それはそんなじゃなくはないよ」
「でも他のギルドに比べると低いんだよ」
「ということは、他のギルドに討伐クエストを受けに行けばぼろ儲けってこと……!?」
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