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第六章 レオンの剣術道場編
第106話 分け前
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モンスターを倒して一段落──と言いたいところだが、そうもいかない。周りが歓びに沸く中、俺は内心ハラハラしていた。
合同討伐──複数の冒険者パーティで協力し、モンスターを討伐する状況はままある。
協力してモンスターを討伐する──ただそれだけなら何も問題がないように思われるが、合同討伐はその後のクエスト達成報酬やモンスターの素材で諍いに発展しやすいのだ。
クエストのシステム上、クエストを達成したと認定されるのはどちらかのパーティのみであり、さらにモンスターからとれる素材の分け方も難しい。
「素材とクエストの報酬で貰えるお金は譲るから、パーティのランクアップに必要な功績がほしい」だとか、「最後にとどめを刺したのはうちだから全部貰う」だとかパーティ同士の要望がぶつかり、揉めることが非常に多いのだ。
俺自身は合同討伐をしたことはないが、ギルドで揉めているパーティをたくさん見てきた。特に、ランクの高い討伐クエストだと報酬の多さやクエスト達成での功績、素材の貴重さから激しく揉める傾向にある。
今回俺がとどめを刺したこのアイクルはBランク──ランクとしてもかなり高い部類に入る上に、少々気持ち悪いが、びっしりと毛の生えた皮は素材としての価値が高そうだ。
正直、俺が来るまで手をこまねいていたようなので、貢献度から考えればクエスト達成の功績も報酬も素材も全部俺が取るのが妥当だろう。しかし、長時間耐え続けていたお弟子さんたちが何もないとなれば黙っているはずがない。
揉めそうな臭いがプンプンする。
「討伐報酬のことなんだけど──」
ある程度モンスターを倒した後の熱狂も落ち着いてきて、お弟子さんの一人が喋りだす。この道場では珍しく細身で中性的な顔立ちをしているが、この場を取り仕切ろうとしていることから相当な強さを持ち合わせていることが窺える。
ああ、地獄のような時間が始まってしまう。
「コルネさんに全部譲っていいかな? 他に意見がある人はどうぞ」
えっ、全部……全部もらっていいんですか!? ずっとこのモンスターの相手をし続けていたのに?
意見を言う人も出てこないので、このまま決まってしまいそうだ。
「あの……いいんですか? 本当に全部もらってしまっても」
「いいんですよ。我々はあの憎きアイクルを自らの力でもって倒すまでは、報酬を受け取らない──そう決めていますので」
そう言って安心させるようにニコリと微笑むお弟子さん。「あの憎きアイクル」のあたりで表情が一度オーガのように豹変してから微笑みに移ったので、全く安心はできなかったが。
Bランクのモンスターなんてそうそう出るものではないし、初めて見るモンスターの素材も気になる。何より揉めなくてほっとするが、話はまだ終わりではなかったようだ。
「その代わり──我々にも魔力操作とやらを教えていていただけますか? ヨーゼフだけずるいではありませんか」
うんうん、と頷く周りのお弟子さんたち。
「コルネさん、教えていただけますね?」
ニコニコと笑いながら、繰り返し言うお弟子さん。あ……これは断れないやつですね。
合同討伐──複数の冒険者パーティで協力し、モンスターを討伐する状況はままある。
協力してモンスターを討伐する──ただそれだけなら何も問題がないように思われるが、合同討伐はその後のクエスト達成報酬やモンスターの素材で諍いに発展しやすいのだ。
クエストのシステム上、クエストを達成したと認定されるのはどちらかのパーティのみであり、さらにモンスターからとれる素材の分け方も難しい。
「素材とクエストの報酬で貰えるお金は譲るから、パーティのランクアップに必要な功績がほしい」だとか、「最後にとどめを刺したのはうちだから全部貰う」だとかパーティ同士の要望がぶつかり、揉めることが非常に多いのだ。
俺自身は合同討伐をしたことはないが、ギルドで揉めているパーティをたくさん見てきた。特に、ランクの高い討伐クエストだと報酬の多さやクエスト達成での功績、素材の貴重さから激しく揉める傾向にある。
今回俺がとどめを刺したこのアイクルはBランク──ランクとしてもかなり高い部類に入る上に、少々気持ち悪いが、びっしりと毛の生えた皮は素材としての価値が高そうだ。
正直、俺が来るまで手をこまねいていたようなので、貢献度から考えればクエスト達成の功績も報酬も素材も全部俺が取るのが妥当だろう。しかし、長時間耐え続けていたお弟子さんたちが何もないとなれば黙っているはずがない。
揉めそうな臭いがプンプンする。
「討伐報酬のことなんだけど──」
ある程度モンスターを倒した後の熱狂も落ち着いてきて、お弟子さんの一人が喋りだす。この道場では珍しく細身で中性的な顔立ちをしているが、この場を取り仕切ろうとしていることから相当な強さを持ち合わせていることが窺える。
ああ、地獄のような時間が始まってしまう。
「コルネさんに全部譲っていいかな? 他に意見がある人はどうぞ」
えっ、全部……全部もらっていいんですか!? ずっとこのモンスターの相手をし続けていたのに?
意見を言う人も出てこないので、このまま決まってしまいそうだ。
「あの……いいんですか? 本当に全部もらってしまっても」
「いいんですよ。我々はあの憎きアイクルを自らの力でもって倒すまでは、報酬を受け取らない──そう決めていますので」
そう言って安心させるようにニコリと微笑むお弟子さん。「あの憎きアイクル」のあたりで表情が一度オーガのように豹変してから微笑みに移ったので、全く安心はできなかったが。
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「その代わり──我々にも魔力操作とやらを教えていていただけますか? ヨーゼフだけずるいではありませんか」
うんうん、と頷く周りのお弟子さんたち。
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