パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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第六章 レオンの剣術道場編

第101話 レオンの剣術道場 其の十二

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 次の日、修行を終えて俺はヨーゼフさんとの約束の場所へ向かう。

 ここでの修行も以前に比べれば多少は慣れてきたが、それでも疲れることに変わりはない。

 魔力操作を少しするくらいなら大して疲れることもないだろうと思って、修行終わりの時間でいいと昨日は言ったのだが──

(──単純に移動距離が長い。)

 普段ならただ長いと思うだけだったが、疲れの溜まった体には堪える。

 今になって思うのだが、師匠の許可もなしに魔力操作を勝手に他の人に教えてもいいのだろうか。

 師匠やレオンさん、サラさんはそうではないようだが、修行の内容を一切秘密にしている道場もある。そこまでいかなくても、本当に大事な技は秘伝としているところは多い。

 特に魔力操作は秘伝などと言われた覚えはないし、他の修行でも秘伝という言葉を師匠の口から聞いたことがないからおそらく大丈夫だと思うが、後で報告はしておこう。

 約束の場所にたどり着くと、こちらに気付き手を挙げるヨーゼフさん。その表情は、昨日と違い、気持ち悪いくらいに晴れわたっていた。

 すっきりとした笑顔が怖かったが、時間もないので挨拶もそこそこに、俺は魔力操作のレクチャーを始めた。



 師匠が俺にしたのと同じように、ヨーゼフさんの魔力を操って、感覚を掴むところからスタートしたのだが、ヨーゼフさんはなかなか、魔力が動く感覚を掴みきれないようだった。

 そのまま食堂に向かう時間が来てしまい、解散となる。別れた後も、ヨーゼフさんは食堂に向かいながら、体を動かして感覚を思い出そうとしていた。


熱心だと感心すると同時に、もし習得できなければ──そんな考えが頭をよぎる。

 正直、感覚自体が掴めないのでは、俺にはどうしようもない。いくら言葉を尽くして説明しても、結局は自分で掴むしかないのだ。

 こんなとき師匠だったら、上手く教えられるのかもしれない。

 今頃師匠はどうしているんだろう。

 * * *

「魔力操作を教えますので……どうでしょうか?」

 突然の提案に驚いてしまう。体を自由自在に操れるなどという代物は、てっきり秘伝か何かだと思っていた。

 俺は使えるようになれるのなら、なりたかった。だが、俺に魔法の才能などないし、出来るかどうか分からなかった。

 もし出来ないのなら、俺がどれだけ修行しても無駄になってしまうし、何より教えてくれたコルネに悪い。無駄にコルネの時間を奪ってしまうわけなのだから。

 それに、だ。魔力操作など魔法に類するものは、やはり美学に反するというか──これに関しては、魔力操作はもはや体術に近い気がするが、それでもなんとなく受け入れがたい。

 でもあれが使えれば、俺は──俺はもっと高みを目指せるはずだ。

 思考が堂々巡りになってしまった俺は、お師匠様に相談することにした。剣術でも体術でもお師匠様に訊けば間違いないのだ。



 お師匠様に話し終えると、短く相槌を打っていたお師匠様は俺に告げる。

「教えてもらうべきじゃろう。ヨーゼフの言う通り、もし使えるようになれば大きな武器になる。剣術とて、誰しもが必ず会得できるとは限らん。それはやってみて初めて分かるのじゃ。それに──」

 お師匠様は一度言葉を止め、僅かに微笑む。

「背中を押してほしかったんじゃろう」
「……はい」

 お師匠様はお見通しだったか──やはり敵わない、そう思った。
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