パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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第六章 レオンの剣術道場編

第96話 レオンの剣術道場 其の七(ヨーゼフ視点)

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 コルネという弟子がお師匠様と手合わせするところを見学する。お師匠様の言う「ヒント」が得られるとは思えないが、審判も任せられた俺は嫌でも目を離せない。

 最初に、コルネの剣が土で覆われていく。これが魔法剣──初めて見たが、案外地味だな。

 もし真剣で使えば刃が隠れてしまうだろうが、これは元々木刀──太さや重みを変えることで単純に威力を上げたのか。

 重くすれば扱いがその分難しくなるが、見る限りでは扱いに困っている様子はない。悪くない判断だろう。

 そしてコルネはお師匠様めがけて木刀を振り下ろす──が、踏み込む位置が手前すぎる。このままではお師匠様に届かないのは目に見えている。

 俺は離れて観ているから分かるのであって、もしかして本人は上手く距離感が掴めていない……? だとしたらお粗末だな。間合いは剣士の基本だろうに。

 それすら出来ないとしたら剣士としては下の下だ──そう鼻で笑っていると、木刀の長さが急激に伸びる。最初は見間違いだと思ったが、空を切るはずだった木刀が、しっかりとお師匠様を捉えている。

 木刀が伸びるはずがないので、土の部分を動かしているのだろう。なるほど、こういうことが出来るのか。魔法剣は存外面白いかもしれない。

 しかし、そんなことでお師匠様が動揺することはなく、待ち構えていたように木刀でしっかりと受け止める。タイミングをずらされても、しっかりと対応できる──やはり流石だ。俺だったら対応できているか分からない。

 コルネはコルネの方で、お師匠様と力比べをしても崩れない木刀に纏わせた土は大したものだ。魔法のことはよく分からないが、よほど固めないと、あの力には耐えられないだろう。

 傍から見れば力比べのように見えるが、お師匠様の力はあんなものではない──鍔迫り合いではこの道場の誰一人として勝てないのだから。技術が巧いのもあるのだが、お師匠様は体格から想像できないほどに、力が強い。

一流の若い剣士と比べても遜色ない力の秘密は、体の使い方にある。一言で言うと、お師匠様は運動神経が異常にいいのだ。

 どんなに筋骨隆々でもその筋肉を完璧に生かせているわけではない。一つ一つの体の動かし方には必ず無駄が生じる。

 お師匠様は体の動かし方の無駄がほとんどないため、身体能力を完璧と言っていいほどに活用できている。だから、強い。

だからこの鍔迫り合いだって──ほら、お師匠様が押し返した。体勢が大きく崩れたコルネはもうおしまいだろう。

 だが、コルネはよくやった方だ。俺の中での評価を引き上げねばならんようだ──そう考え、「勝負あり」という言葉を喉まで準備していたところだった。

 コルネが尻餅をついたところから、不自然な動きですぐに立て直す。何が起こったのか分からなかった。

 普通、人間は尻餅をついてすぐに立ち上がることは不可能だ。故意に座り込んだのなら別だが、今回は体勢を崩して尻餅をついてしまったのだから、それはあり得ない。

 正直、人体の動き方として気持ち悪いと思った。まるで何かに引っ張られて、後から体がついてくるかのような……そう、例えるなら人形だ。

 お師匠様の体を上手く動かすことで力を引き出す方法とは真逆だが、あれはあれで戦いの役に立ちそうだ。

 もしかしてこの動きこそが、お師匠様が「俺にヒントとしてほしいもの」なのだろうか。だが、あれは何がどうなっているのだろう……否、それが分かったとき、俺は成長できる──そういうことなのか?
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