98 / 328
第六章 レオンの剣術道場編
第94話 レオンの剣術道場 其の五
しおりを挟む
「どうじゃ、わしはもう歳じゃが、それなりにはやるじゃろう」
木刀を置き、少し得意げに笑って見せるレオンさん。歳だとかそういう次元ではない気がするが。
俺は夢でも見ていたような気分だ。こんな俺よりも背の低い老人──と呼ぶにはまだ若いが──おじいさんから今まで味わったことのないほどの重い攻撃が繰り出されるとは思ってもいなかった。
大して筋肉もあるとは思えないこの体の一体どこからあんな化け物じみたパワーが湧いてくるのだろうか。俺はレオンさんの笑みが少し怖くなった。
「あそこで立て直してくるのはさすがじゃが、手加減をしておったのではないかのう。ロンドからは魔法も使うと聞いておるし──よし、今度は魔法も使って全力でかかってくるのじゃ」
髭をなでながら話していたレオンさんが再び木刀を手に取る。
あのレオンさんに褒められた! 魔力操作と魔法は魔法剣士だから使えたものだから、俺がもし純粋な剣士だったら立ち直れなかっただろう。魔法剣士ならではのところを褒められるのって嬉しいな。
やはりというか、最初に魔法をあえて全く使わなかったのを見抜かれていた。あれは完全に俺の驕りだったし、勝つためには絶対に使うべきだったのだろうが──
「土系統の魔法は使っても大丈夫ですか?」
「それは……ちと困るのう」
視線を泳がせ、レオンさんが答える。
土系統の魔法は基本的に地面を操作するため、地面が凸凹になる。ここはよく手入れがされているようで、稽古の邪魔にならないように、土が均されている。
それを崩してしまうのは忍びないと思い、訊いてみたが駄目だった。土壁なんて出された日には、土を均すのが大変だからな。
魔法学校のときは、均すのが少々雑でも他の人は動かずに魔法を撃っていたから問題なかった。そもそも魔法の撃ちあいで距離を開けるための空間だったので、そんなに気にすることはなかった。
しかし、ここでそれをしてしまうと、稽古のときにちょっとした凹みで足を挫いたり、土が柔らかくて踏ん張れなくなったりと、稽古に支障をきたしそうだ。
事前に訊いて正解だったようだ。
「では炎の魔法は──」
「それも…………ちと困るのじゃ」
しばしの沈黙が訪れ、レオンさんが口を開く。
「……戻るかのう」
木刀を置き、少し得意げに笑って見せるレオンさん。歳だとかそういう次元ではない気がするが。
俺は夢でも見ていたような気分だ。こんな俺よりも背の低い老人──と呼ぶにはまだ若いが──おじいさんから今まで味わったことのないほどの重い攻撃が繰り出されるとは思ってもいなかった。
大して筋肉もあるとは思えないこの体の一体どこからあんな化け物じみたパワーが湧いてくるのだろうか。俺はレオンさんの笑みが少し怖くなった。
「あそこで立て直してくるのはさすがじゃが、手加減をしておったのではないかのう。ロンドからは魔法も使うと聞いておるし──よし、今度は魔法も使って全力でかかってくるのじゃ」
髭をなでながら話していたレオンさんが再び木刀を手に取る。
あのレオンさんに褒められた! 魔力操作と魔法は魔法剣士だから使えたものだから、俺がもし純粋な剣士だったら立ち直れなかっただろう。魔法剣士ならではのところを褒められるのって嬉しいな。
やはりというか、最初に魔法をあえて全く使わなかったのを見抜かれていた。あれは完全に俺の驕りだったし、勝つためには絶対に使うべきだったのだろうが──
「土系統の魔法は使っても大丈夫ですか?」
「それは……ちと困るのう」
視線を泳がせ、レオンさんが答える。
土系統の魔法は基本的に地面を操作するため、地面が凸凹になる。ここはよく手入れがされているようで、稽古の邪魔にならないように、土が均されている。
それを崩してしまうのは忍びないと思い、訊いてみたが駄目だった。土壁なんて出された日には、土を均すのが大変だからな。
魔法学校のときは、均すのが少々雑でも他の人は動かずに魔法を撃っていたから問題なかった。そもそも魔法の撃ちあいで距離を開けるための空間だったので、そんなに気にすることはなかった。
しかし、ここでそれをしてしまうと、稽古のときにちょっとした凹みで足を挫いたり、土が柔らかくて踏ん張れなくなったりと、稽古に支障をきたしそうだ。
事前に訊いて正解だったようだ。
「では炎の魔法は──」
「それも…………ちと困るのじゃ」
しばしの沈黙が訪れ、レオンさんが口を開く。
「……戻るかのう」
0
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~
さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。
全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。
ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。
これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる