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第五章 アクスウィル魔法学校編
第78話 アクスウィル魔法学校 其の五
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一限目の授業が終わって、そそくさと教室を後にする。そのまま教室にいれば、きっとまた話しかけられていただろう。
授業の内容を聞けば先程の質問の意味も理解できるかと思ったが、授業もなんとなくしか分からなかった。かなり発展的な内容だったのに、基礎も分かっていないのだから当たり前か。
授業の名前が面白そうだという理由で決めていたが、次からはだいたいのレベルも見た方がいいな。
階段を駆け足で下りて、屋外の訓練場へと向かう。二限目に参加する予定の、実技の授業がそこであるのだ。
こちらは、俺と同じくらいの年齢の生徒と書かれていたので、内容が高度すぎるということはない──そう思いたい。
昨日選んだときは大丈夫だろうと思っていたが、一限目を受けて一気に不安になる。考えれば、俺は同年代が魔法を使うところはアドレアとマリー、そしてルカくんしか見たことがない。
アドレアの魔法は周りからも評判だったけど、それはあくまでミャクー村での話だ。この魔法学校だとどのくらいのレベルなのかが分からない。
マリーの使っていた回復魔法は俺が使えないので、比較できない。ルカくんは毒魔法しか見ていないから、他の魔法がどうなのか分からない。
毒魔法を実際に何かに向けて放ったわけじゃないから、どれほどの効果なのかも分からず、推測も難しい。
つまり三人とも比較対象にはならず、もしかしたら俺より小さい子どもがドッカンドッカンと威力の高い魔法を連発している可能性もあるわけだ。
俺は魔法剣士であって魔法使いではないから、競い合うべきではないのだが……それでもそんな光景を見てしまったら自信を失くしてしまう気がする。
戦々恐々としながら訓練場に着くと、授業が始まる。
「今日の授業は炎系統の魔法<フレア>を練習します。フレアは中威力の魔法で、威力と汎用性の両方を備えています」
フレアはアドレアがよく使っていた。ぼうっと燃えるのが派手なんだよな。
俺は威力の高い魔法が使えないが、このくらいならなんとか出せるだろう。
「──それでは、早速やっていきましょう」
どうやら訓練場に等間隔に配置された的に向かって魔法を撃つようで、集まっていた生徒が散らばりだす。
俺もそれに倣い、空いている的の方に歩いていき、
「フレア」
詠唱を終えた途端、円形の的を包むようにぼうっと炎が立ち上る。よかった、ちゃんと出せたようだ、と安堵する。
普段から使っている魔法は目くらましの「ブライト」くらいだし、フレアは久しぶりに使ったので、成功するかは分からなかったのだ。
ふぅ、と息を吐きだし、隣の的を見ると、勢いよく的が燃えていた。的の直径の五倍ほどの高さまで炎が上がっている。
これが魔法学校の生徒の実力か……さすがに魔法を専門に学んでいるだけある。周りを見渡すと、他の生徒も差はあれど、一番小さい炎でも俺よりは大きかった。
俺は魔法が専門ではないのだから、彼らより劣るのは当たり前だと頭では分かっているのだが、少しショックだった。
授業の内容を聞けば先程の質問の意味も理解できるかと思ったが、授業もなんとなくしか分からなかった。かなり発展的な内容だったのに、基礎も分かっていないのだから当たり前か。
授業の名前が面白そうだという理由で決めていたが、次からはだいたいのレベルも見た方がいいな。
階段を駆け足で下りて、屋外の訓練場へと向かう。二限目に参加する予定の、実技の授業がそこであるのだ。
こちらは、俺と同じくらいの年齢の生徒と書かれていたので、内容が高度すぎるということはない──そう思いたい。
昨日選んだときは大丈夫だろうと思っていたが、一限目を受けて一気に不安になる。考えれば、俺は同年代が魔法を使うところはアドレアとマリー、そしてルカくんしか見たことがない。
アドレアの魔法は周りからも評判だったけど、それはあくまでミャクー村での話だ。この魔法学校だとどのくらいのレベルなのかが分からない。
マリーの使っていた回復魔法は俺が使えないので、比較できない。ルカくんは毒魔法しか見ていないから、他の魔法がどうなのか分からない。
毒魔法を実際に何かに向けて放ったわけじゃないから、どれほどの効果なのかも分からず、推測も難しい。
つまり三人とも比較対象にはならず、もしかしたら俺より小さい子どもがドッカンドッカンと威力の高い魔法を連発している可能性もあるわけだ。
俺は魔法剣士であって魔法使いではないから、競い合うべきではないのだが……それでもそんな光景を見てしまったら自信を失くしてしまう気がする。
戦々恐々としながら訓練場に着くと、授業が始まる。
「今日の授業は炎系統の魔法<フレア>を練習します。フレアは中威力の魔法で、威力と汎用性の両方を備えています」
フレアはアドレアがよく使っていた。ぼうっと燃えるのが派手なんだよな。
俺は威力の高い魔法が使えないが、このくらいならなんとか出せるだろう。
「──それでは、早速やっていきましょう」
どうやら訓練場に等間隔に配置された的に向かって魔法を撃つようで、集まっていた生徒が散らばりだす。
俺もそれに倣い、空いている的の方に歩いていき、
「フレア」
詠唱を終えた途端、円形の的を包むようにぼうっと炎が立ち上る。よかった、ちゃんと出せたようだ、と安堵する。
普段から使っている魔法は目くらましの「ブライト」くらいだし、フレアは久しぶりに使ったので、成功するかは分からなかったのだ。
ふぅ、と息を吐きだし、隣の的を見ると、勢いよく的が燃えていた。的の直径の五倍ほどの高さまで炎が上がっている。
これが魔法学校の生徒の実力か……さすがに魔法を専門に学んでいるだけある。周りを見渡すと、他の生徒も差はあれど、一番小さい炎でも俺よりは大きかった。
俺は魔法が専門ではないのだから、彼らより劣るのは当たり前だと頭では分かっているのだが、少しショックだった。
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