パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

文字の大きさ
上 下
78 / 328
第五章 アクスウィル魔法学校編

第74話 アクスウィル魔法学校

しおりを挟む
「アクスウィル魔法学校って知ってるかい?」

 アルノ兄さんとギルドで会ってから数日後、師匠が突然俺に訊いてくる。その一言だけでなんとなく分かってしまった。

 このパターンはダンジョンのときと同じだ。あのときは何気ない「ダンジョンって知ってる?」から話が始まって、最終的に「明日からダンジョン行こう」となった。

 つまり、今回も「明日からアクスウィル魔法学校に行こう」ということなんだろう。これだけでは材料が少なすぎる気もするが、師匠が妙にルンルンと浮かれていることが信憑性をグンと増している。

 でも単なる勘違いという可能性もある。とりあえず話を聞いてみよう。

「……名前だけしか」
「アクスウィル魔法学校はその名の通りアクスウィルにある魔法学校で、歴史のある由緒正しい魔法学校なんだ。毎年、僕はこの時期に特別講師として呼ばれているんだけど──」

 どうやら俺の早とちりではなかったようだ。もう「魔法学校に行こう」ルートへまっしぐらだ。

「コルネくんも来るかい? 同年代の生徒はいい刺激になると思う──」
「もちろん行きます。出発は明日ですか?」

 少し食い気味に答えてしまった。やはりどこかへ出掛けるのは楽しい。きっとアクスウィルにもまだ俺の見たことがないものがたくさんあるし、魔法学校──どんなところなんだろう。

 ルカくんが毒魔法を使っていたように色んな魔法を使う人がいるのだろうか。俺の知らない魔法の使い手もたくさんいるだろう。会うのが楽しみだ。

 そうと決まれば急いで荷物を詰めなければ。今回は人と会うのだから、替えの服も何着か持って行った方がいいか。

 それとお金も──討伐クエストで稼いだからそれなりにはある。こういうときこそパーッと使うべきだろう。

 ちなみにあのダンジョン産の魔力結晶はまだ売っていない。次いつ採れるかも分からないし、綺麗だからもったいないと思ってしまって。

 あとは冒険者証か。魔法学校には実習も当然あるだろう。冒険者証がないとついていくことが出来ないので、これも要るな。いや、それ以前に身分証として持っていくべきだ。

 他には──

「え? もっと先の話だよ。まだ十日くらいあるから、ゆっくり準備しても間に合うよ」

 てっきり俺はダンジョンのときと同じとばかり……よく考えればそっちの方が異常なのだ。いきなり明日出掛けようなどと。

 そこで師匠がにやりと笑う。

「いきなり出発が明日か訊くなんて、よっぽど楽しみなんだね。コルネくん?」

 それはダンジョンのことがあったからで──いや、申請が受理されるのも時間がかかるだろうし、冷静になれば明日のはずがないことくらい分かったはずだ。

 もしかして俺は……相当浮かれてる?
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

剣しか取り柄がないという事で追放された元冒険者、辺境の村で魔物を討伐すると弟子志願者が続々訪れ剣技道場を開く

burazu
ファンタジー
剣の得意冒険者リッキーはある日剣技だけが取り柄しかないという理由でパーティーから追放される。その後誰も自分を知らない村へと移住し、気ままな生活をするつもりが村を襲う魔物を倒した事で弓の得意エルフ、槍の得意元傭兵、魔法の得意踊り子、投擲の得意演奏者と様々な者たちが押しかけ弟子入りを志願する。 そんな彼らに剣技の修行をつけながらも冒険者時代にはない充実感を得ていくリッキーだったのだ。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

処理中です...