パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

文字の大きさ
上 下
74 / 328
第四章 初めての単独討伐クエスト編

第70話 兄さんとの再会

しおりを挟む
 Bランクに上がってからもギルドに足を運んでいたのだが、ある日受付嬢にこう告げられてしまう。クエストを受ける頻度を落としてもらえませんか、と。

 聞けば、冒険者は通常、毎日は討伐クエストを受けないらしいのだ。割とショックだった。

 昔、四人パーティでクエストを受けていたときは、討伐以外がほとんどだったから、正直討伐クエストに関しては疎いのだ。てっきり自分たち以外は討伐クエストをたくさん受けているのだと思っていた。

 今まで気付かなかったのは、他の冒険者とあまり話さなかったというのもあるだろう。いつもなるべく早く帰るために、報酬を受け取ったらすぐにギルドを出ていたから、片手で数えられるほどしか話した記憶がない。

 今思えば、「頑張るねぇ」だとか「すごい体力だ」だとか言われていたのはこのことも含まれていたのかもしれない。てっきり一人でモンスターを運んでいるからだと思っていた。

 俺が毎日討伐クエストを受けたことで何が起こったかというと、クエストが減ってしまったせいでこの村を離れる冒険者が出てきたらしい。

 冒険者パーティにもいろいろある。大物を狩るのが得意なパーティや、小さいモンスターをたくさん狩るのが得意なパーティ──それに、討伐が得意ではないパーティ。最後のタイプは討伐クエストが多いこの村にはほとんどいないが。

 クエストの数が減れば、種類も減る。俺は討伐数が少なめのものを好んで受けていたので、おそらく村を離れたパーティというのは大物を狩っていたところだろう。

 ギルドとしてはクエストが達成されればいいらしいのだが、村から冒険者が離れてしまうと、村に落ちるお金が減ってしまうのだ。

 言われるまで気付かなかった自分を浅慮だったと思うし、村の人にも申し訳なく思う。

 その日を境に何日かに一回にペースを落とすと、それから日に日に人が増えていっているような気がして本当に悪いことをしたと改めて思った。



 スローペースになってからしばらく経ったある日、ギルドに入るとそこには懐かしい顔がぽつんと座っていた。

「久しぶり、コルネ」

 そう言って、白い歯を見せ笑うアルノ兄さんは変わっていなかった。アルノ兄さんはBランクパーティ「教会の烏エグリス・クロウ」のメンバーであり、俺の面倒をよく見てくれた兄のような存在だ。

 時間のあるときに剣の稽古をつけてもらっていたのだが、一年ほど前からミャクー村には戻ってきておらず、それっきりだ。

 Bランクパーティだから危険なクエストを受けているのかもしれないと思い、以前から心配していたのだ。まさかこんなところで会えるとは思っていなかった。

「兄さんも久しぶり……元気そうだね」
「ああ、コルネも元気そうだな。身長も伸びたようだし」

 あまり自分では分からないが、一年前に比べれば伸びているのだろう。

「それで、兄さんはなぜこのヴィレアに?」
「流れてきた冒険者から聞いたんだ。ヴィレアに討伐クエストを毎日やるイカ──すごい冒険者がいるって。名前が一緒だったから、もしやと思ったけど本当だったとはね」

 兄さんが今「イカれた冒険者」と言いかけた気がしたが、気のせいだと思いたい。俺も最近自覚したのだから、もうそんな噂は立たないだろう。

 そういえば、他のパーティメンバーはここにはいないのだろうか。

「兄さん、他のパーティメンバーはここにはいないの?」

 「パーティメンバー」という言葉を聞いた兄さんの顔にサッと翳が差す。触れてはいけないことに触れてしまったという気がしたが、もう遅かった。

 兄さんは俯きながら、口を開く。

「実は──」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。 しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。 探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。 だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。 ――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。 Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。 Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。 それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。 失意の内に意識を失った一馬の脳裏に ――チュートリアルが完了しました。 と、いうシステムメッセージが流れる。 それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

無能扱いされた実は万能な武器職人、Sランクパーティーに招かれる~理不尽な理由でパーティーから追い出されましたが、恵まれた新天地で頑張ります~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
鍛冶職人が武器を作り、提供する……なんてことはもう古い時代。 現代のパーティーには武具生成を役目とするクリエイターという存在があった。 アレンはそんなクリエイターの一人であり、彼もまたとある零細パーティーに属していた。 しかしアレンはパーティーリーダーのテリーに理不尽なまでの要望を突きつけられる日常を送っていた。 本当は彼の適性に合った武器を提供していたというのに…… そんな中、アレンの元に二人の少女が歩み寄ってくる。アレンは少女たちにパーティーへのスカウトを受けることになるが、後にその二人がとんでもない存在だったということを知る。 後日、アレンはテリーの裁量でパーティーから追い出されてしまう。 だが彼はクビを宣告されても何とも思わなかった。 むしろ、彼にとってはこの上なく嬉しいことだった。 これは万能クリエイター(本人は自覚無し)が最高の仲間たちと紡ぐ冒険の物語である。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...